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14.悩む弟子※
自室に戻ったレイヴンは、残っていた材料で簡単な食事を取った後、何だか精神的に疲れてしまったので、
さっさと風呂に入って休むことにした。
この国は生活水準も他国に比べて高く、シャワーも完備されているところが多くある。
町民になると少々難しくはあるが、大衆浴場もあるので、風呂にもそこまで困らない。
「…最近の師匠、おかしくないか?何かやたらとベタベタ触ってくるし。今までもちょっかいはかけてきてたけど…
スキンシップ、なのか?」
シャワーで髪を流しながら、気付くと自分の唇に手が触れていた。
今日も何度も口付けされて、飴まで食べさせられて。
まだ……口の中が甘い気がする。
「跡付けるなって言ったのに、跡付けるし。何だよ、マーキングって」
首筋にも手を触れる。
撫でると熱を持っているような気がして、ギュッと目を瞑り吐息を逃す。
師匠に触られるのは前から良くあったはずだが、ヨウアルの前で関係を見せつけるような真似をするし、
まるで、自分のモノだとアピールしているようだ。
自分は、弟子であって。別に特別な存在という訳でもないはずなのに。
唯一の弟子という意味では特別なのかもしれないが、あくまでそれだけの関係なはずで。
恋焦がれるとか、そういう関係では、決してない、はずだ。
「……師匠…」
シャワーの水音が響く中で、自分の唇を撫でながら。
気付くと下半身に手が伸びていた。
「……んっ…俺、何して……ぁっ…」
指先を軽く喰み、声が漏れないようにするが、自身を触る手が一向に止まらない。
壁にもたれ掛かり、何度も、何度も、擦りあげていく。
シャワーの音に紛れて、クチュクチュと粘着質な音が混ざり、流れていく。
目を瞑っているのに、浮かぶのは師匠の憎たらしい顔ばかりで。
――――本当に、嫌になる。
「んぁっ……っふ…も、全部…あの人の、せいで……っ…あぁぁっ!!」
ビクっと身体を震わせて達すると、ハァハァと肩を揺らして呼吸を整える。
嫌な感触だけ残る手を、目を開けてぼんやりと眺めながら。
今日1番の盛大な溜息を漏らす。
「あぁ~~~……もう、何やってんだよ……最悪」
しゃがみ込んで、暫く考え込んでから、ノロノロと立ち上がり。
慌てて身綺麗にして、のぼせる前に風呂から上がる。
身体を冷まそうと、ガウンだけ羽織りテラスへと続く窓を開ける。
魔塔は魔塔主の自室が最上階、補佐官の自室は1つ下の階で、2人の部屋だけテラスがある。
そんなに広いテラスではないが、緊急時には2人が親密に連絡が取れるようにと、
お互いの顔が確認できる位置にテラスが設置されている。
「……涼しい」
夜風に当たって身体の火照りを冷ましていると、上の階から煙りを燻らす人影が見えた。
言うまでもなく、テオドールであることが分かったレイヴンは、慌てて部屋へと引き返そうとするが、
気配でバレバレだったため、愉しげなテオドールにあっさり見つかってしまう。
「何、逃げようとしてんだよ。レイちゃん」
「別に、逃げようとした訳じゃ……」
「そうかぁ?怪しいな?俺に隠れて何やってんだよ。まさか1人で……」
「はぁっ!?何もしてません!」
レイヴンは顔を背けて思い切り否定するが、遠目で見ても首筋が赤く染まっているのがテオドールにも確認できた。
怪しいと思ったテオドールは、ちょっと待ってろ。と一言言うと何やら呪文を展開し始める。
「ちょ、ちょっと師匠?何して……うわっ!?」
淡い光が弾けた瞬間、テオドールはレイヴンの目の前に現れる。
「よっ…と。危ねぇなぁ。何って、ちょっと干渉して魔法を書き換えただけだ。
階段降りるの面倒臭ぇし。この距離を飛んで何かしようと企むヤツがいても俺がいればどうとでもなるだろ」
「あ、あんたは…わざわざ俺の側に来るために。魔塔にかかってる魔法を書き換えたって言うんですか……
この短い時間で?あいっかわらず、無茶苦茶すぎる……」
「レイちゃんが何か隠し事してるからよ、気になってな。って、さっきから何で微妙に視線をズラしてんだよ、
怪しいな」
「隠し事って、何も。ありませんよ?」
「お前なぁ……嘘つくの下手すぎ。さっきから、耳と首筋が赤いんだよなァ」
テオドールがレイヴンに手を伸ばそうとすると、ジリと一歩下がって逃れようとする。
首を傾げたテオドールがもう一度同じ動作をしようとすると、さらに下がろうとする。
が、自分で逃げ場のないテラスの端へと来てしまう。
「何で避けてんだよ。そんなに俺に触られるの嫌か?」
「嫌って言うか、何と言うか……いいじゃないですか、別に。避けても」
「……お前、風呂入ってたんだろ?イイ香りがする」
自分に鼻を近づけて匂いを嗅いでくるテオドールに、レイヴンは両肩を揺らして過敏に反応してしまう。
こんな反応はおかしいと心では思っているのに、何故かドキドキする。
心の中で、乙女か!とツッコミを入れても身体が強張って動かない。
「……なぁ、レイヴン。風呂で何してた?」
「何って……シャワーを浴びてただけ、ですけど…」
「そうかあ?ソイツはおかしいなァ?石鹸の香りと混ざって、違う香りが……」
「…え!?嘘、ちゃんと洗ったはずなの……に……」
ニィっと笑みを深めるテオドールに一杯食わされたことに気付いたが、すでに遅く。
気づけば両腕で囲われて逃げ場は完全に防がれてしまった。
魔法で逃げたいところだが、無茶苦茶な芸当を軽くやってのける師匠に敵わないことは思い知っているので、
目線を合わさないくらいの小さな抵抗しかできない。
「ほう?ナニをちゃんと洗ったって?」
「……師匠には関係ないでしょう。いいから、離れてくださいって」
「関係なくないだろ?そんなに真っ赤になって否定されてもなぁ。俺にされてる時でも思いだして、
風呂で1人でシてたとか?」
「は、はぁっ!?何言い出すんだよ!何で、俺が、あんたで……」
「…クッ……自白すんのが早すぎるんだよ、お前は。そっかそっか。
さっきキスでやめちまったから身体が疼いちゃったか?それは悪かったなぁ」
終始愉しげなテオドールに、レイヴンも不愉快極まりないといった表情を向けるが、赤い顔では全く説得力もなく、
レイヴンは居心地悪そうにして押し黙ってしまう。
「悪ぃ悪ぃ。揶揄うのはこれくらいにして、続きしてやるよ。な?」
テオドールの声が耳元で聞こえると、レイヴンは本当に動けなくなってしまい。
呼気で笑うテオドールが目の前にいるのが分かると、抵抗できずに目を閉じる。
耳を喰まれ、ペロと舐められると熱い吐息が漏れる。
「ふ……」
「ん?そんなに触って欲しかったか?」
「……分からない…けど、俺……」
師匠に触れられたせいで何か変なんですけど!と声を大にして言いたいレイヴンだったが。
何と説明していいか分からずに、テオドールを見上げる。
心のどこかで触って欲しい、と思っている自分もいて、続きを懇願するような表情をしてしまう。
テオドールも自分を求めるレイヴンを見ていると悪い気はせず、好都合とばかりに笑いかける。
「そんな顔で言われてもなぁ?まぁ、手出しちまったし。後は何回ヤっても一緒だろ?」
「なんですか、それ。師匠はいいですよね、悩みがなくて。俺1人だけ悩んでるみたいで、何か不公平だし」
ツッコミたいことだらけなのに、しょうもない悪態しか付けない自分にレイヴンも苦笑する。
さして気にもしていないテオドールはさっさと事を進めてしまおうと、額に軽く唇で触れ、ニヤリと笑う。
「俺をなんだと思ってるんだよ。悩みっつーか、厄介事っつーか。それくらい誰だってあるだろうが。
ほら、お前が待ちきれないみてぇだし。とりあえず、テラスに手をついて、コッチにケツ向けろ」
「……は?いや、それこそ何言って……ぁっ!?」
つい先程まで自分で弄っていたところをいきなり握り込まれて、レイヴンは反射的に声を上げてしまう。
そのままゆるゆると動かされると、先程の快感が思い出されてしまい、背中がゾクゾクとしてきた。
羽織っていただけのガウンを下へと落とされてしまうと、月光の中で白い肌がテオドールの前に晒される。
喉を鳴らして数秒見入ったテオドールは、先程より甘い声色で。
イイコだから、言う通りにしろよ?と囁いた。その囁き声もレイヴンにとっては甘くて蕩けてしまいそうで。
ほぅっと吐息を逃して、潤む瞳をテオドールへと向けると、従順にコクンと小さく頷いた。
指示通りにゆっくりと自分で身体を反転させると、両手でテラスの縁を掴み、
テオドールに背を向けて尻を突き出すように上半身を倒していく。
その間も自身を触られているせいで、身体は小刻みに震えているが、
決して強い刺激を与えないためか、もどかしい熱がじわじわと自身の身体を支配していく。
「やぁっ…も、ソコばっか……ぁ…ん」
「そう、ちゃんと縁、掴んでおけよ?っつーか、お前ホントに風呂場でヤってたのか。そりゃ感じるのも早い訳だわ。で、弄ってたのはコッチだけで、後ろは…っと…」
テオドールが同時に後孔を指先で撫でると、ビクっとレイヴンの背中がしなる。
「ふぁっ!…っ…ぁ…あぁ…そっち、は…してな……」
「そりゃそうか。今度、同時に弄ってみ?どっちでもイケるようになるだろうよ」
「……しま、せん……っくぅ…」
溢れてきた露を後孔へと塗り込めて、指をじっくりと沈めて動かしていくと、
レイヴンが無意識に腰を上げて視覚的にテオドールを煽っていく。
ゆらゆらと蠢く様子は、薄暗い中でも妙に艶かしく見え、静寂のテラスに熱い息遣いと水音が少しずつ響き始める。
時折背中と首筋に吸い付いて、跡を残してやると、レイヴンがその度に小さく声を上げて反応を返してくる。
白かった肌が全体的にほんのりと色づいてくると、テオドールも自分のガウンを寛げて、自身を取り出した。
「も、ココでする…んですよね……?」
「気にしなくても、誰も気づかねぇよ。お前のそんな姿、他のヤツに見せてたまるか。お前は俺のだからな」
「……師匠、の?」
レイブンが顔だけで振り返り、どこか不安そうな表情でテオドールを見つめた。
その顔を見ると、テオドールも少しだけ戸惑ったような顔をするが、すぐにいつものふてぶてしい表情へと戻すと、
指をレイヴンの中から引き抜いた。
「んんっ!…ン……はぁ…」
「お前は、俺のモノだから。誰にも、そんな顔見せんじゃねぇぞ?」
「そう、言われても…自分の、顔見えないし……ん、ふ…」
レイヴンに顔を寄せて口付けてから、テオドールも屹立をレイヴンの中へと突き立てていく。
挿入ってきた圧迫感に、レイヴンは背中を反らして震えるが、
律儀にテラスの縁へ捕まって必死に崩れ落ちそうになる身体を支えようとする。
「…ふぁっ…ぁっ…この体勢…前と、ちが……あぁぁぁっ!」
「…ック、やっぱ、キチィ……おま、締めすぎ……」
レイヴンの身体が、求める気持ちと拒絶する気持ちとがせめぎあっているのも相まって、
ギュウとテオドールを締め付ける。
「師匠が…ぁ…おっきい、から…ぁ……」
「それは光栄だな。って、言ってる場合か。レイヴン、深呼吸しろ。深呼吸」
「はぁ……ふぅ……んー……ふぁぁ……」
言い付け通りにレイヴンが呼吸を繰り返すと、強ばっていた身体から力が抜けていく。
テオドールがレイヴンの身体を両手で抱え直し、グッと自身を沈めていく。
「っし。これで、もうちょい進める…か?」
「あぅ……くる、しい……ぁ…テオ…っ……んぁぁっ!」
「あぁ、イイコだな。仕方ねぇから、優しくシテやるよ」
言葉通り、テオドールはゆっくりと良い場所を探るようにレイヴンの中で動く。
時折レイヴンが声を漏らして、背中を弓なりに反らす。
「ふぁ…っ…ぁ…ソコ…こす、れて…っ…ビリって…」
「ココか?」
「ぁんっ!や、やぁっ…」
「良く締まる、なァ?力、入れすぎんなよ?」
テオドールが小気味良く律動を刻んでいくと、クチュ、クチュと中から音が漏れる。
それに合わせてレイヴンもポタポタと白濁を垂らして、されるがままに身を委ねていく。
「も……力、入らな……」
「へばるの早ぇな。そんなに動かしてねぇんだけど…っ」
テオドールが最奥をノックすると、レイヴンが分かりやすく身体を跳ねさせて、ガクガクと身体を震わせる。
「あぁぁぁっっ!奥…っ…!やぁ…っ…深い、の。ダメ、感じすぎ…て…」
「……奥がイイのか?じゃあ、もう少しサービスしてやるよ」
「いらな…っ!?ふぁっ!ぁ、あぁぁっ!!や、やめ…ァ…んぁっ!!」
一際甲高い声をあげると、レイヴンが先に果ててしまう。迸る白濁が足元を汚していくのをぼんやりと眺めていたが、
止まらない律動にガクンと身体が落ちかけてしまい、テオドールが力強い腕でレイヴンを受け止める。
「まぁた余計なこと、考えてただろ?…はっ…どうせ、テラス汚しちゃったどうしよう、とかな?無駄なことばっかり、最中に考えるんじゃねぇよ…っ」
「っぁ!…んっ、だって、ココ、外……」
「今は、俺のことだけ考えてろ。…っく、そろそろ…」
「……ん…っ…分かった、からぁ…も、テオも、イって……あぁぁっ!」
ズンと最奥を突いたところで、テオドールもレイヴンの中に欲望を吐き出していく。
ドクドクと奥壁に叩きつけられる熱い奔流は、レイヴンの意識を苛み、弛緩させていく。
荒い呼吸だけで何とか意識を繋ぎ止めていると、テオドールに向かい合わせに抱え上げられて、
まだ自身の中で質量を保っている杭をもう一度打ち込まれた。
レイヴンの中に留まりきらなかった白濁液が、ゴポリと滴り落ちていく。
「んぁぁっ!……まだ、おっきい…し…嘘、でしょ……?」
「お前がイイコだから、おかわりだ。おっさんの体力、舐めんなよ?ほら、掴まっとけ」
レイヴンの両手を自分の首元に巻き付かせて、やや乱暴にキスをする。
意識は朦朧としているが、レイヴンも口を開いてふわ、と口づけて。
舌を伸ばしてテオドールを求め、そろりと動かしていく。
「ん?あぁ…コッチだ」
「ぁふ……ん……」
レイヴンの遠慮がちな舌を招き入れると、テオドールが舌を重ねて絡ませる。
安心したようにレイヴンも舌を追いかけて、与えられる優しい愛撫にますます表情が蕩けていく。
「んむぅ……っくぅ…ぁ…んぁぁっ」
「…コッチが持っていかれる、っての……お前…快楽に、従順すぎるだろ…っ」
「……ぁっ!?……ふ…ぁ……」
自分だけを求めてくるレイヴンに絆されてしまったテオドールは、自身が持っていかれる前に落としてやろうと、
何度か強く腰を打ち付けて、2度めの精を解き放つ。
行為の間、何度達したか分からないレイヴンは。同時に自身も解き放って、テオドールにギュウとしがみつく。
「……早く出過ぎじゃねぇ?あぁ…クソ。お前、何でヤってる時はめちゃくちゃ甘えてくんだよ」
「……だって、テオだけ、だから……今……」
へにゃと笑うと、ふわふわとしたまま、レイヴンがテオドールに身を寄せて、頬を擦り寄せる。
その様は気まぐれな猫のようで、主人に撫でて欲しいと言わんばかりだ。
「正気じゃねぇな、コレは。でもまぁ…コレはコレでいいか。よしよし、良く頑張ったな?レイ。イイコだ」
「んっ……撫でられるの、好き……」
大きな手で撫でられる感触に甘えながら、レイヴンはテオドールに身体を預けたまま、スッと意識を手放した。
すぅ…という規則正しい寝息までたてている。
「寝落ちるのも早ぇ!まぁ…何か勢いで食っちまった気がするが。お誘いにのってやらねぇとな?
ぁー……さすがに俺も疲れたわ。コッチ系の回復はめんどいから、後で魔法薬でも飲んどくか。
買い置きあっただろ、確か」
テオドールは大きな独り言を言いながら、レイヴンの頭に優しくキスを落とし、
そっと自身を引き抜いてから、レイヴンを前抱きにしたままベッドへと運ぶ。
後のことは仮眠してから考えようと決めて、レイヴンをベッドへと寝かしつけると、フッとその場から姿を消した。
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