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22.師匠の部屋で※

テオドールの魔法で、レイヴンもテオドールの自室のテラスへと移動させられてしまい、腕を掴まれたまま部屋の中へと引っ張られ、ベッドへと座らされた。 「ここ、師匠の部屋じゃないですか!執務室じゃないんですか?それに何でベッドに……」 「どこだろうと一緒だろ?ほら、討伐の経緯を説明しろ。お前が倒れてたから、俺は詳細を何も聞いてないんだからよ」 「それはそうですけど……って。そんなにジロジロ見ないでもらっていいですか?」 「いいから、早く話せ」 隣に座らされ、この場から逃げ出せない雰囲気に仕方なくこの場で報告を始める。 「……以上の事から、裏に何者かの介入の可能性がありそれが魔物使いであることが推測されますが、師匠はどうお考えですか?」 「犬笛ねぇ……。まぁ、魔物使いなら指示出しに使いそうだよなァ。それで、飼いならされた魔物だっていうことか。しかし、わざわざご丁寧に牙に毒を仕込んだってのがな」 テオドールは煙草を手に取ると、慣れた手付きで火を付ける。 レイヴンは嫌そうに顔を顰めているが、無視して吸い始めた。 「あの場で魔物の牙が触れたのは俺だけですし、しかもその場で発症するタイプではなく、遅効性だったということですよね?そもそも1日魔力(マナ)の回復の為に休んでましたし」 「まぁ……回復(ヒール)のせいで毒の成分が身体中に早く回っちまった可能性もあるがな。本来はもう暫く普通に過ごしていて、怪我したことを忘れた頃に突然発症するタイプかも知れねぇし」 「それは、魔獣討伐に選ばれた人間を狙ってということでしょうか?」 「どうだろうな?だが、魔物使いが誰かに雇われてやってたんだって言うなら、辻褄が合うかもな」 煙が天井に昇り、煙草の香りが部屋に満ちていく。 レイヴンは手で煙を払いながら、報告を続ける。 「誰かに雇われてというと?」 「外部の人間か、あるいは討伐のことを知っている内部の人間か。どっちにしても、前回負傷したヤツが無事だったのは運が良かったのか?ブラックウルフに毒性があるんなら、前回の時にも仕込まれてそうだがな」 「前回の負傷者は帰還してすぐに神殿に運ばれたので、聖女様が治療にあたられてます。ですので……」 「ババアの神聖力なら、お前の時と一緒で助かったのかもしれねぇな」 吸い殻を灰皿へ押し付け火を消すと、テオドールはレイヴンの頭に手を置いて、クシャクシャとかき混ぜる。 「ちょっと、子ども扱いしないでくださいよ!さっきから近いし……大体報告は終了しましたので、これで失礼しま……」 「待てって。まだ、俺への礼が済んでねぇよな?」 立ち上がろうとするレイヴンの腕を引いて、無理矢理に座らせる。 憮然とした表情のレイヴンを嗜めるように、テオドールはニヤニヤと愉しげにその様子を眺める。 「お礼?言ったじゃないですか」 「あの程度でか?俺がいなかったら……」 「……分かりましたよ。それで、師匠は何をお望みなんでしょうか?」 「聞き分けの良い弟子はいい弟子だよなァ。そうだな……ご奉仕でもしてもらうかな」 「ご奉仕って……日々そのものがご奉仕なんですけど」 「分かってねぇなー?ご奉仕と言えばコレだろ、コレ」 テオドールはニヤニヤと下半身を指差す。 レイヴンはその意図が分かり、呆れ顔を返した。 「……自分でやればいいじゃないですか。俺、都合の良い処理係じゃないですし」 「俺もお前をオカズにしてやればいいのか?風呂場で?」 「~~っっ!!……あぁもう!ホントに良い性格してますね!?」 「だろ?」 「褒めてない!」 レイヴンが逡巡している様子を楽しんでいるテオドールに、何度吐いたか分からない溜息が漏れる。 「……で。本気でやらせようとしているなら、ご指導頂きたいのですが」 「んなもん大体分かるだろうが」 指で座れと指図されると、やりたくないですという気持ちを身体中で体現しながら、レイヴンが渋々、テオドールの足元へと跪く。 「……イイ眺め」 「……黙っててください」 レイヴンは無心を貫こうと決意して、静かにテオドールの下半身へと手を伸ばす。 嫌そうな表情は崩さずに、まずはやんわりと服の上から触れてみた。 何となく熱を持っているような気がするが、軽いタッチだけではよく分からない。 「随分とお優しい手つきだな?そんなんじゃいつまでたっても終わらないぞ」 「強制されてるのに、そんなに積極的に取り組むわけないでしょうが」 「久々のご対面なんだからよ。盛り上げてもらわねぇとな?実は会いたかったんじゃねぇの?」 「……うるさいな、もう。あぁ……無理!ご奉仕とか無理!」 レイヴンが諦めて手を下ろそうとすると、仕方ねぇな……と呟いたテオドールがその手を引っ張り、バランスを崩したレイヴンを片腕で引き寄せると、開いている手で顎を掬い上げて口づける。

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