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27.付かず離れず※
「しまった…煽られて思わず出しちまった……」
「……これ、で1回……です…よね?」
「仕方ねぇ……お前もまぁ…良かったみたいだし?」
テオドールが少しだけ身体を離すと、自分が放った後がありありと見えてしまい。
レイヴンはパッと顔を背けた。
「……なかったことに……」
「ならねぇよなァ?俺が、欲しかったんだろ?」
「ぅ……それは、その……流れ的に……んっ」
今更照れて耳まで赤くしているレイヴンが可笑しくて、耳を喰む。
「これ以上は、ダメ……です…っ…って。まだ、中にいるまま……っぁ!」
「終わりにしてやるから。今日はこのまま寝ようぜ?」
「え…冗談です、よね……?」
「レイちゃんが可愛いから、抱き枕ってことで」
腹の辺りの残滓だけ適当に拭き取るとそのまま横向きに寝転び、レイヴンから抜かずに抱き込んでしまう。
「んっ……や、離してくださ……ぁ、動かないで…っ」
「ビクビクして、あぁ…暖かくてイイわコレ」
「こんなの、眠れる訳ない…でしょう?信じらんな……」
文句を言っていたものの、テオドールに抱き込まれてしまうと身動きが取れず。
しかも情事の後だと言うのに、体温と側にいることで安心してしまう自分もいて。
レイヴンは混乱しながらも、胸元に顔を寄せることくらいしかできない。
「ふぁぁぁ……あー眠ぃ。先に寝そうだわ」
そう言ってレイヴンの額に唇を落として、おやすみ、と言い残した後に寝落ちてしまった。
「……嘘……この人、本当に寝てるし……」
モソモソと動いて少し顔を出す。無防備に寝顔を晒している師匠を見ると、信用されているんだと思えて少し安心する。
「この体勢はとても不安が残りますけど、これ以上抜け出せないし……諦めます。眠れるか分かりませんけど……おやすみなさい、テオ」
お返しのようにテオドールの頬に唇を落として、ゆっくりと目を閉じる。
暫くは色々気になっていて眠れなかったのだが、結局疲れていたようで気付いた時にはレイヴンも抱きしめられたまま眠ってしまった。
+++
――――どれくらい時間が経っただろうか?
まだ夜が開けてない時分、テオドールがふと目を開けると顔を側に寄せて静かに眠っているレイヴンが視界に入り、自然と表情が和らぐ。
少しだけ自身の顔を起こすと愛おしげに頬をひと撫でする。
「俺の方が確実に、コイツにヤラれてるのは気のせい…じゃねぇ気がしてきた。いくら顔が好みで、俺のモノだとは言っても…ガッツキすぎはマズイか?でもなぁ…外で発散するなとか言うのは、コイツだしなぁ……」
ふにふにと頬を緩く摘むが、熟睡しているのか一向に起きる気配はない。
「まぁ……いいか。レイヴンの方からも寄ってきてるし、まんざらでもなさそうだしな。このまま可愛がってやれば、もう少し素直になるだろ」
布団を掛け直してやるともう一度やんわりとレイヴンを抱き直し、朝までは寝てしまおうと目を閉じた。
+++
――――漸く日の差す時間帯に。
先に目を覚ましたのはレイヴンだった。昨日のことを忘れかけていたが、目の前にテオドールが眠っているのを見て、声を上げそうになったのを必死に抑えた。
「……本当に、あの後このまま眠ったのか。今なら抜け出せ……ないし。今日の予定は、確か……でも、俺はまだ療養中だからいいのか。師匠は……王宮に行くのでは?」
チラリと見るが起きる気配がない。差し込む光の感じでは、まだ早い時間なので余裕はあるはずなのだが、このままという訳にもいかないので、少しの間思案する。
「……師匠、そろそろ起きないと。というか、俺を開放してくれませんか?…って、まさかまだアレもあのまま……」
そっと下半身を確認しようとすると、モゾと動いたテオドールがギュウとレイヴンを羽交い締めのように抱きしめてきた。
「ちょ…っと、苦しい……って!ぁ…朝だから、大きくして……ぬ、抜けてな…い…っ!?」
「……」
「や、寝ぼけて…ないで、離して……ぁっ!」
「……朝から、イイ声出してんなぁ……?」
大あくびと共に、グイと腰を押し進めてレイヴンを刺激すると。驚きながら口元を手で抑えて声を出さないように抵抗する。
「朝からも、悪くないだろ?」
「……師匠、予定あるんだから、いい加減にしないと……」
「ケチくせぇなー。別にイイだろ」
「どれだけ、ヤリたいんですか……アンタは、発情期の魔物か!!」
レイヴンの手が凶器になりそうなものを探しているのに気がつくと、名残惜しそうに漸く自身を抜き去る。コポと中にいたものが流れる感触がしたが、レイヴンもなんとかやり過ごすと、思い切り溜息を吐いた。
「おはよう、ございます?師匠。起きましたか?起きましたよね…?」
「ぁー……朝から煩いな。お前が誘うのが悪い」
「人のせいにしないで下さい。というか、いつまで抱きしめてるんですか!」
「んぁ?まだ朝早いじゃねぇか……もう少しダラダラしてればいいじゃねぇか」
レイヴンの言葉もお構いなしに、チュッと額に口付ける。
あのねぇ……と呆れ声だったが、視線はやや和らいでいるのが分かり、テオドールはしてやったり顔でニヤリとする。
「なぁ、優しく起こしてくれたら起きる気がするわ。弟子なら、出来るだろ?」
「はぁ?何でそんなことを……こういう時だけ弟子を強調しないでくださいよ……」
「じゃないと、このままサボるわ。レイちゃん可愛がる方が面白ぇし」
「面倒くさ……サボったら魔塔の評判に関わるので、仕方ないから付き合ってあげます。その代わり、ちゃんと起きてくださいね」
レイヴンは目を瞑り、瞑想のように静かにしていたが。そのうちにゆっくりと目を開けて、ふわりと微笑んだ。
「……テオ?ねぇ、テオ?朝ですよ。起きて?一緒に起きようって約束したでしょう。ね?一緒に朝ごはん食べ……んむぅ!?」
レイヴンの表情も声色も、ただの演技なのだが。素の状態での優しい雰囲気はテオドールの前で見せることが少ないせいか、テオドールを刺激するには十分だった。
最後まで聞く前に、朝ごはんと言う名のレイヴンを頂こうと口を塞ぐ。
「……ったく、お前そういうのどこで習ってきてんだ?本気で食わせる気か?」
「……はぁっ…ち、違うから!俺を食べろって意味じゃないから!」
「そうかァ?育て方を間違えたか?俺としては美味しく頂けるから構わねぇけど」
「……もう嫌だ、この人。こうなれば、意地でも魔法で……」
レイヴンが指を突きつけて詠唱しそうになったので、分かった分かった!と指を握り込んで静かに下へおろす。もうひと欠伸してから、ダラダラと身体を起こした。
「はぁ……何でこんなに朝から苦労しなくちゃいけないんだよ……俺、部屋に戻りますから。師匠はちゃんと王宮に行ってくださいね」
レイヴンも身体を起こすが、動こうとしたところで自分の中で残っていた余りが流れてきたことに気付き、顔を赤くする。
「どうした?」
「…っ!な、なんでもありません!シャワー借ります!!」
テオドールが返事をする前に、レイヴンは小走りで姿を消してしまった。
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