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34.補佐官と副団長の反省会
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「……ってなことがあってな。俺もまだまだだなと思ってさ。それなりに実力ついてきたと思ってたのにさ。まさか、あの傷が原因で……って。色々考えたって訳」
「いや、あれは俺も全て終わったと思って気を緩めた結果だ。実力不足と言うなら、むしろ俺の方だったから。自分でも軽く考えていたところがあったんだと思う」
「まぁ……流石にすぐにはテオドール様や団長みたいになれる訳ないよな。だから……次こそは。俺は、レイヴンに掠り傷1つ負わせないことを誓う」
少しだけ真剣な表情で言い、レイヴンの手を取ると誓いの口付けを落とす。
瞬きを何度も繰り返して暫く固まっていたレイヴンを見ていたウルガーが先に笑い出す。
「……なんてな。って、驚きすぎ。正式な誓いはこんなんじゃないって」
「……知ってるよ。というか、酒の席でされても困るし」
フイと顔を逸してビールをチビチビ飲んでいる様子を見る限り、どうやら照れているらしく。このくらいで?とウルガーはますます笑ってしまった。
「なんか腹立つ。笑いすぎ」
「ごめんって!でもさ。団長だったら確実に正式なヤツしそうだしなー」
「いやいやいや。それは俺などではなく、別の方にするべきものだから」
「だってさ、レイヴンの兄貴を自称するくらいだし。ほぼ保護者だし」
申し訳無さそうにしてるレイヴンを見ながら、グビグビとビールを飲んで笑う。
「まぁ、団長は暑苦しいかもしれないけどさ。レイヴンのことを大切に思ってるのは本当だから。重いかも知れないけど、それも1つの愛情みたいなものだと思えばそんなに気にしなくてもいいと俺は思うけどな。お前だって団長のことが嫌いじゃなさそうだし」
「それは勿論。いつも気にして下さるし、師匠と違って優しいし。だからこそ、何で俺なんかって思うというか……別に気持ちが重たいとかそういう訳じゃないけど」
うまく言えない。と曖昧に笑って、黙々とミートボールを口へと運ぶ。
美味しそうに食べている様子に、ウルガーも満足げにミートドリアに手を付ける。
「そんな深く考えずにさ、甘えればいいと思うけどね。団長にも、テオドール様にもさ。レイヴンは自分が思っている以上に周りの人に好かれてるし?羨ましいことで」
「それは皆が親切だからだと……師匠は除いて」
「テオドール様は団長とは全く違うタイプだから、違う意味でレイヴンのこと猫可愛がりしてるんだよな。まぁ……後はお前次第だろうけど」
「俺は猫じゃないから。あの人は俺の反応を見ていつもニヤニヤしてるし、そういう食えないところが腹が立つんだよ。俺のこと好きなのかも知れないけど、愛情ではなくて暇潰しみたいでさ」
イライラするのか、残っていたビールをグイっと煽ってブスっとした顔でウルガーを睨みつける。
「俺を睨んでもなー。お前がムキになって反応するから弄られるんだよ」
「そうだけど、話し掛けられて無視すると逆にしつこくて。適当に相手しているうちにペースに巻き込まれるから……どうしたらいいのか」
「思い切り巻き込まれて相手を翻弄するか、強い意思をもって距離をおくか。だけど、補佐官の時点で距離をおくのは不可能なんだから、優位に立ちたいなら前者だろ」
「もっと俺が強ければいいのに……何でこうなんだろう」
止める間もなく、料理を口に詰め込んでは飲み、詰め込んでは飲み、と。気がつけばマグは空になってしまっていた。
「あーあー……そのペースはマズイって。ホント、テオドール様のことになるといつもこうだよな。それこそ猫被れば、揶揄われる前に逆にペース握りそうなのに」
「……いつも握られっぱなしですけど、何か?」
「誘惑するくらいすれば、テオドール様ならすぐに餌に食いつく感じするけどな」
「誘惑って……俺が、師匠を?」
弱いのに一気に煽ったせいか、話しているとそのうちに目をトロンとさせて緩慢に首を傾げる。
「あー……そういう感じだと思いますけどー?レイヴン……酔いが回るの早すぎ……」
「このくらいで酔う訳ないから。俺のこと馬鹿にしてるでしょう?」
「してないしてない!あぁー……テオドール様に見つかりませんように……!」
この後はレイヴンの口にご飯を詰め込んで悪酔いさせないようにしてから、ウルガーも急いで駆け込むように残りの料理を平らげてしまい、お勘定を済ませて外へと出る。
酔いでフワフワしているレイヴンを仕方なく背中に背負い、帰り道を急ぐ。
「……もう少し話す予定だったのに。テオドール様の話をしたタイミング、マズったか?」
「…………俺が何だって?」
街を抜けて魔塔へと続く道を歩いていると、背後から聞きたくない声が聞こえて恐る恐る振り返る。
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