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54.控室で※

テオドールは噛みつくようにキスをして、抗議をしようとするレイヴンを力で制して黙らせる。そのまま数秒動かずに熱を伝え、啄んでから一旦少しだけ唇を離してやる。 「……っ!?なぁ、っ……」 「いいから、大人しくしてろよ?」 「ココ、控室……っ」 「あぁ。そうだな」 短いやり取りだけで、またキスを繰り返す。啄んではキツく吸い、じわじわと気力を奪うように何度も何度も繰り返す。 「認識、妨害…って…ぇ、あの、神殿内全域……に?」 「全域じゃなくてもお前だけに絞れば別に、難しくねぇよ。逆に、良く見えないから神々しい天使ちゃんだっただろうな」 「何、それ……っふ、ぁ……」 抵抗が弱まってきたところで、手首を掴む力を少し弱める。それでも扉に張り付けられているのでレイヴンは身動きが取れない。ブロンドの髪がふわりと揺れて、テオドールの鼻先を擽った。 「何か大罪を犯している気分だな。だが、こういうのも悪くねぇか」 「馬鹿なこと言ってないで、離してくださ……ぁっ!?」 悪魔の魔法使いに囚えられた天使は、涙目で許しを乞うが逆に興奮してきた悪魔に首筋も舐められる。晒した肌を舌でなぞられると、ぞわりとした感覚に苛まれていく。 「ほら、このままだと悪魔に蹂躙されちまうぞ?」 テオドールは暫くレイヴンの反応を愉しんでいたが、なかなか出てこないレイヴンに気づいたらしい神官が部屋の前まで歩いてきた気配に気付く。 「……誰か来たみたいだな」 「……え?ちょっと、離してくださ……」 話しているうちに、神官がレイヴンの背中越しの扉を叩く。その音に驚いて返事をしようとしたところで、テオドールに晒している足を撫でられる。 「……ふぁっ!?」 「……レイヴン様?大丈夫ですか?あの、お着替えは滞りなく……」 驚いて妙な声をあげてしまいテオドールを睨みつけるが、開放してくれる様子はない。攻撃に我慢しながら、扉越しに返答しようと口を開く。 「すみません、ちょっと羽に擽られてくしゃみが出そうに……んっ」 「そうですか……手伝いが必要でしょうか?」 テオドールはレイヴンが話している間も、素肌に手を滑らせて優しく撫でている。その手は無遠慮で少しずつ衣装を乱すように大胆な動きに変わっていく。 「…っ、だ、大丈夫です。その……師匠と、今から連絡を取ろうと思っているので、もう少し……部屋、お借りしても……っ、いいでしょうか……ぁ…」 「はい、それは構いませんが……もしかして、くしゃみを我慢されて……」 「……んん、…え、ええ……すみません、お気遣いなく……」 神官の親切心を苦しい言い訳でやり過ごそうとするレイヴンだったが、その間も攻め続けられている。テオドールは敏感なところだけワザと避けるように触れては吸いついて、その跡を宥めるように優しく舐める。 「その……魔法を展開します、ので……っ、す…少し、集中、します……」 「分かりました。そのように伝えてきますのでご安心ください」 「……ありがとう、ございます……っ、ぁ、――あぁっっ!」 堪えきれなくなった喘ぎ声が漏れる前に、テオドールが防音結界を張って音を遮断する。突起を口から出したテオドールが意地悪げに笑いかけて、揺らいだ身体を腕で受け止める。 「ホント、信じられない…っ!」 「怒るなよ。ちゃぁんと結界張ったし?」 「そういう問題じゃなく、って……んぁぁ…」 「何?」 手首を離したことにも気づかずに、テオドールの腕に抱きとめられたまま、またも身体を舐められるレイヴンは、無意識なのかテオドールのローブをギュウっと握りしめる。 「そこで…喋らない、で……お願い……」 「ソコって……どこだ?」 「胸の……ッ――!?」 テオドールに突起を噛まれ、痛さに声が詰まる。が、すぐさま優しく何度も舐められ、痛いのか、気持ちが良いのか区別がつかなくなってくる。プクリと色づく頃には着ていた服が肩から落ちて、羽がもがれたように垂れ下がっていた。 「こりゃあ、天使は堕天使になっちまったなァ」 「何、言って……」 「折角だから、ちょっとやっとくか?」 「……これ以上、したら。本当に、怒りますから……」 息も絶え絶えだが、残る理性でテオドールを睨みつける。そんなレイヴンの抗議にテオドールも諦めたのか、レイヴンを開放して手を離す。ヘナヘナと力が抜けて床に座り込んでしまった様子をテオドールが頭上からケラケラと笑って見下ろした。 「その服に何かあっても面倒だし、続きは夜にな?」 「……しません!」 「ハハハ!元気なことで?」 「他人事だと思って……も、着替えるから……」 テオドールは全く悪びれていない笑顔を浮かべたままで、ポンポンとレイヴンの頭を撫でている。はぐらかされているのは分かるのだが、妙に落ち着いてしまうのがまた腹が立って仕方がない。 「……まだここにいるつもりですか?」 「今、堂々と出ていってもいいが。お前が吐いた嘘がバレるな。連絡取ってるはずだもんなァ?俺と」 テオドールの言い分に、咄嗟にそんなことを言ってしまったと額に手を当てる。が、未だにこちらをジロジロと見ているテオドールに気づくと、指を突きつけて宣言する。 「……もう、触らないでください。見るのも禁止!堪能したでしょう?天使な俺!」 「いやぁ……足りてねぇけど仕方ねぇな。今度、堕天使ちゃんもやろうぜ?お前って意外と色んな服似合うんだなぁ」 「知りませんよ、そんなこと。何が堕天使ちゃんですか……師匠は魔王様でもやるおつもりで?さぞかし似合うんでしょうね」 「そりゃあ、そうだろうなぁ。何、そういう服着てヤるか?」 「だから、しません!」 何とか立ち上がるが、刺激され続けた胸はジンと痺れて熱を持ち、赤く尖りきってしまっている。テオドールを部屋の隅へと追いやると、なるべく触れないようにゆっくりと着替えを済ませていった。

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