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66.優しい触れ合い

「あー……くっついてるとヤりたくなるなぁ。今日こそは耐えてやるって言ったから一応耐えてんだが」 「それ、口に出さないでくださいよ。そういうこと言うから警戒しちゃうんです。テオにくっつくと襲われると思って」 「まぁ、否定はできねぇな」 そういうものの、本当に耐えているのかこれ以上は何もしてこない。レイヴンも少しだけ警戒心を解いて、そっとテオドールを見上げて様子を伺う。 「俺はこれだけで十分ですよ?あの魔塔主の懐にいるのは俺だけだって思えるから。誰もが近寄りがたくて、恐れている魔塔主様に身体を預けている訳だし……」 「そりゃあ、側にいるヤツは選ぶだろうが。レイは手元に置いておきたいヤツなんだから当たり前だろ?」 「……」 あっさりと言い切られてしまうと逆に恥ずかしくなり、すぐに反応して顔を赤くする。初心な反応に気を良くするテオドールはいつもの癖でちょっかいをかけそうになるが、顔だけ近づけて目を細める。 「……何、照れてんだよ。事実だろう?」 「それは、そうなんですけど。改まって言われるとやっぱりまだ実感がなくて」 「前々からそんなに変わってねぇけどなぁ」 「俺が鈍感だってことは分かりましたから、その……」 何もしてこないことにも動揺しているのか、レイヴンは視線を彷徨わせる。演技ではなく素で照れて困っているレイヴンの様子がテオドールの心を擽り、さらに顔を近づけて唇が触れるか触れないかの位置で囁く。 「なぁ、やっぱりキスしてもいいか?演技じゃねぇレイを見てると、触れたくなる」 「ぅ……テオ、近い……」 返事を先延ばしにされると近距離のまま頬だけ優しく撫で、もっと優しく、甘い声色で強請るように言葉を紡ぐ。 「今日は大人気ないことしちまったし、お前が嫌ならこれ以上は本当にしない。だが、レイのそういう顔を見せられると、もっと可愛がりたくなるんだよ。可愛がって、閉じ込めたくなる」 「そういう台詞を、また……俺が流されると思って言ってるでしょう?テオだって、こういう時だけ、声が優しいし。いつも、適当な癖に」 「それは、悪かったなぁ?レイは大人の駆け引き、苦手だもんな」 テオドールが大人しく顔を離そうとすると、レイヴンがテオドールと繋いだままの手をさらに握り込む。その手は少しだけ緊張のせいなのか震えているのが分かる。 「強がるのもバカみたいだし、別に近い距離が嫌なんじゃないですから。され放題なのが嫌なだけで。だから……いいです、よ?」 耳まで真っ赤にすると、レイヴンが自分から目を閉じる。今はそれが精一杯なのか自分から動こうとはしない。テオドールは口元を緩めると、顎を掬い上げて優しく唇を落とす。 「今日は眠くなるまで、キスだけしてみるか?耐えられなくなった方からお強請りってことで?」 「……それだと、テオがすぐに我慢できなくなりそうですよ?」 「俺からは言わねぇよ?レイに素直になってもらいたいからな」 「今日はとことんそれなんですね。分かりました」 レイヴンも恥ずかしそうに笑うと、テオドールに優しく口付ける。そのうちにお互いに触れるだけのキスを何度も繰り返す。唇に、頬に、額に―― 「……んっ…凄く、擽ったいですね」 「擽ったいのもあるが、これはもどかしいもんだな。このままだと、負けちまいそうだ」 「ふふ……テオは魔獣だから、すぐ噛んだり吸ったり、したがりますもんね?」 「そういうレイヴンも、何かふわふわしてきてんじゃねぇか」 戯れるだけの触れ合いを繰り返していても、少しずつ体温はあがってくる。テオドールは深く繋がりたいもどかしさに耐え、レイヴンはテオドールに流されないように意識をしっかり持とうとする。それでも触れあっているのは楽しくもあり、時折笑い声が漏れる。 「これ、違う意味でぽかぽかしてきて……くっついて眠りたくなるかも……」 「この状況でか?まぁ……児戯みたいなもんだが、気分は悪くねぇ。盛り上がりにはかけるが、レイの体温が高くてイイかもな」 何度目か分からないキスを唇に落としながら、レイヴンを何度も撫でる。それに答えるようにレイヴンもキスを返して、甘えるように頬を擦り寄せる。その甘え方は猫のようだが、安心しきって主人に身体を委ねているのが分かり、テオドールも抱き込んでチュッとこめかみに唇を落とす。 「テオ……眠気に耐えられない……かも…。テオに包まれてるの、温かい……」 「このにゃんこは……別の意味で耐えられないってか。あ、マジでうとうとしてやがる。じゃあ、レイが耐えられないってことで、今度俺のお願い聞いてもらうか」 「えー……過激なのはダメです、よ?……んー……」 テオドールの頬に唇を触れさせると、瞼がトロンと落ちてきて目を閉じてしまう。レイヴンが本格的に眠ってしまう前に、抱き抱えてベッドへと運んで横たえるとテオドールも仕方なく諦めて横になり自身の腕に頭を乗せて、レイヴンを近くへと引き寄せる。 「今度はご主人さまを満足させてもらうとするかな?今日はこの辺で……な」 最後にレイヴンの額に唇を触れさせて、テオドールも温かい体温を感じながら目を閉じてそのうちに眠りに落ちていった。

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