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73.1つのベッドで※
大人しくタオルを持って待っていたことを偉い偉いと適当に褒めるが、テオドールは気にした様子もなく楽しそうにレイヴンの身体をわしゃわしゃ拭き始める。
「も、もうちょっと丁寧に拭けませんか?髪の毛がまたグシャグシャになりそうで……」
「注文が細かいんだよなぁ。いいじゃねぇか、拭いてやってるんだし」
「自分で拭くつもりで取ってくださいとお願いしたんですよ!ほら、テオもびしょ濡れなんですから……」
テオドールの手からタオルを奪い、今度はレイヴンが身体を拭いていく。テオドールの方が背が高いので背伸びをして拭こうとすると、そのまま脇の下に手を入れられてヒョイと持ち上げられた。
「テオ!?いきなり持ち上げられたら驚くじゃないですか!っていうか、逆にやりづらいんですけど」
「ん?いや、高い高ーい?」
「……何してくれてんですかこの人は……」
「ザッとでいいだろ。また風呂入るかもしれねぇし」
「は?またって何を言って……まさか……テオ。明日、情報収集するって言いましたよね?俺たち何をしに来ましたか?それでなくても、何か付き合ってやらされて……」
テオドールは人の悪い笑みを浮かべると、手をパッと離す。そのままレイヴンの身体を抱きとめると、鼻歌混じりで抱えたままベッドの上へと転がした。
「俺があの程度で満足するとでも?甘いな……甘いなァ?レイちゃん。夜はこれからだ」
「いや、隣に2人、いるんですよ!?ただでさえ色々と疑われているのに、そんなことできるわけ……あぁぁ……結界を張り巡らせるのが早い……」
自分の上に覆いかぶさったテオドールの笑顔を見て、レイヴンは自然と顔が引きつる。テオドールは髪からポタポタと雫が垂れてこようがお構いなしで、自分しか見ていない。片手で防音結界を張り巡らせたことは理解したが、どう逃れようと必死で思考を巡らせる。
「せ、せめて髪の毛は乾かしたほうがいいのでは……?」
「確かに、コレは鬱陶しいか。じゃあ……コレで」
レイヴンの必死の言い訳を、テオドールはサラリと呪文を紡ぎ、凝縮させた温風魔法でお互いの身体をさっと乾かしてしまう。
「こんなところで魔法の便利づかいを……」
「これから後は、また後で考えるとして。そろそろ観念してもらおうか?」
テオドールの長い髪がレイヴンの身体を擽るくらいに距離が縮まる。普段はほぼ面倒臭がって髪を結んだままにするせいか、雰囲気も違って拒みにくい。荒々しい雰囲気だけでなく妙な威圧感も加わって、レイヴンは抵抗する言葉すら出てこない。
「どうした?いつもならこの辺りでギャンギャン言ってくるのに。しおらしいじゃねぇか」
「え?あ、ええと……そう、ですね。テオを止めたいのに、なんだか止められない……」
「そんなに見つめてくるとは、ますます珍しいな。いつもと違うことあったかぁ?」
「……俺から言ったりしませんよ?それにこの状況からひっくり返すには、俺も全力で魔法を叩き込まないと無理だろうし、そんなことしたら色々と迷惑ですから」
諦めたように苦笑するレイヴンの頬を撫で、テオドールもレイヴンがおとなしい理由を考えてみる。勿論、隣の奴らを気にしてということもあるし、先程から煩いほどに勅命だと言っているが。自分を見ている目つきが珍しいものを見ているような、そんな感じがした。
「気になるな……後はなんだ?」
レイヴンの視線の先を追うと、自身の髪に向いていることが分かる。いつもどうでもいいと思っていたので気にも留めていなかったのだが、レイヴンはやたらと髪を触ったりするのが好きそうだったことを思い出す。
「成程なぁ。そういやぁ普段あんま下ろしてねぇか。そんなに熱い視線を送ってくれんなら、ヤる時は下ろしておくか?俺としては動くのに邪魔なんだがなァ」
「……テオが余計なことを言わなければ、ですけど。テオの金色の髪は好きだから、雰囲気違うなって、見てただけです」
レイヴンが手を伸ばしてテオドールの髪を一房取る。吸い込まれるようにチュッと唇を軽く触れさせるが、無意識だったのでしてから自分で驚いて顔を赤くする。
「……そんなに気に入ってくれたのか。それはありがたいことで」
離そうとするレイヴンの手を逆に取って、今度はテオドールが手の甲に唇を落とす。普段なら文句を言うところなのだが、雰囲気に飲まれているレイヴンはどこか、ぽやっとしている。御伽噺のお姫様が王子様にキスをされた時のような、乙女のような反応だ。
「おぉ……これは、貴重すぎて我慢できねぇな。――早速、姫にご奉仕させて頂きます」
レイヴンがぼんやりしているうちにと、追い打ちのつもりなのか似合わない演技をしながら、もう一度今度は指先に唇を落とす。
「……ふぇ?あ、あれ?俺、今……え、え?待って、何言って……」
「……待たない」
そのまま指を絡ませて握り込み、動揺しているレイヴンの唇を塞いでしまう。油断しきっている唇を何度も啄んで、自然と開かせるとそのまま奥へと侵入していく。身体ごと伸し掛かり、逃さないように舌も啄んで絡め取り、緩急つけて愛撫していく。
「……ぁ、……っ…」
レイヴンだけが何度か呼吸を逃すが、テオドールは丁寧に舌を合わせ、チュウと音を立て舌を着実に捉えていく。
「んぁ……――」
「――イイ顔してる。姫は気持ち良いことがお好きなようで」
戯れを続けながら、最後に熱い吐息を逃して閉じない唇に触れ、そのまま舌で顎を撫でる。ツーと首筋のラインをなぞり、鎖骨を優しく啄んでから、また舌で身体をなぞり、今度は胸に触れる。
「ふ、……っ、ぁ、テオ……?」
「今日は紳士的に可愛がるから、安心しろ?……じゃなかった。してください?か」
無理矢理に演技を続行すると、唇で優しく突起を喰む。レイヴンが握り込まれていない手で止めようと伸ばすが、テオドールの髪の毛に触れるだけで辿り着かない。そのまま髪を梳くように何度も訴えるが、テオドールは愉しげに笑うだけで口を離そうとしない。
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