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81.師匠と弟子で一息

騎士たちを見送り、魔道具で戦闘後の様子を記録していく。レイヴンとテオドールとで手分けをし、氷漬けにしたオーガをもう一度確認してから、人目につかないように認識妨害をかけて、何も知らない者が触れぬように結界を張っておく。魔法使いであれば解けるものだが、魔塔の魔法使いでないと解けない結界なので、悪意あるものが悪用することも防ぐことが可能だ。作業が終わったレイヴンが辟易とした表情で、見えなくなったオーガに視線を流す。 「ホント悪趣味すぎる……」 「これでも試作品なんだろ。氷漬けで死ぬくらいなんだからよ。後は魔道具をアイツに運ばせたいところだが……ま、開けた場所に出てからだな」 「いつもの鷲ですか?」 「アイツはいつもタダ飯食ってやがるから、呼びつけてやるんだよ。今晩は俺もかったるいから明日とかでいいだろ」 フワァと盛大に欠伸をするテオドールの横で、ほぼ魔力(マナ)を使い切ったレイヴンが気が抜けたのかテオドールに寄り掛かる。 「さすがのレイちゃんも疲れたのか?」 「師匠と違って、莫大な魔力(マナ)の量なんて持ち合わせてませんから。アイツを固めるのに放出し続けていたのが思ったより多かったみたいです」 「威力の問題じゃねぇからな。にしても、よく頑張ったな。さすがは俺の弟子」 ポンと頭を撫でてから、優しく髪に唇を落とす。疲労でぼんやりしていたレイヴンが自分の状態に気づいて慌てて身体を放す。 「……ありがとうございます。もうすぐディートリッヒ様とウルガーも戻ってくるんじゃないでしょうか」 「だなぁ。レイちゃんはいいのか?水浴びしなくても」 「今はいいです。というか、何で水浴び……」 「いや、お前シャワーとか好きだろ」 それは誰のせいでそうなってるんだ!という言葉を飲み込んで、大人しく2人で先に結界の中へと戻ることにした。 +++ 火の前で休んでいると、程なくしてディートリッヒとウルガーが戻ってきた。 「ただいま戻りました。もしかしてレイヴン……」 「また煩そうだから眠らせておいた。自分が番をするって聞かなかったからなぁ。起きてたところで魔力(マナ)不足だって言ってるのによ。魔力(マナ)回復薬を持っているだろうって聞かなくってな」 「だからといって、無理矢理眠らせてしまうとは……レイヴンにとっては良いことなのかもしれないが、お前のやり方はどうかと思うぞ」 騎士たちの視界に入ったのはテオドールに寄りかかったまま寝息を立てているレイヴンだった。会話を聞かずともどういうやり取りをしていたのか想像できたウルガーは、苦笑するしかなかった。 「優しさというかなんというか……とりあえず、団長も少しは寝てきてください。団長が倒れたら誰も運べませんから」 「そうだな。では、少し眠らせてもらうとするか。今晩はもう何事もないとは思うが」 「俺も眠くなったらテオドール様にお任せして眠るので、お先にどうぞ」 「しょうがねぇな。まぁ俺は可愛いレイちゃんと、もうしばらく火に当たってるから好きにしろ」 テオドールの言葉にディートリッヒはこの場を任せると、背を向けてテントへと休みに行った。残るウルガーも暫くはテオドールと他愛のない話をしていたが、眠気を催すと素直に残るテントへと休みに行ってしまった。 「眠ってると静かで余計に可愛いんだけどなァ?」 眠り(スリープ)をまたかけられてしまったレイヴンは、静かな呼吸を繰り返しながらテオドールに身を預けている。テオドールはレイヴンの髪の毛を梳いて額に口付け、瞼にも口付けていく。 「……ん…、…」 小さな声を漏らしたが簡単には起きることはなさそうで、すぐに規則正しい寝息に変わる。 暫くはレイヴンを起こさないギリギリ程度の戯れを続けていたが、これ以上意図を持って触れていると、テオドールの方が我慢できなくなりそうなのでレイヴンを腕の中に閉じ込めてしまい、自分もゆっくりと目を閉じた。

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