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94.エルフの里

レクシェルとハーリオン、そしてエルフ達は周囲の驚異がとりあえずなくなったことを報告するために、結界の中へと入り里へと報告に行ってしまった。 「しっかしこんだけ奉仕してやったんだから、それ相応の対応してもらわねぇとな。これでレイヴンのこととやかく言ってくるヤツがいたら、合成獣(キメラ)と同じような目に合わせてやるが」 「師匠……最初から喧嘩腰でいかないでください。俺、慣れてますから大丈夫です。師匠も、ディートリッヒ様も、ウルガーも。別に俺の髪なんて気にせずにいてくれてますから。初めて会った人…エルフにどんな対応されたって気にしませんよ」 「だが、誠意を示した相手に対してそういう対応をするということは、こちらも国としてどう対応するかを考える、ということだからな。そこは俺も強調しておかねばなるまい」 「……全く、レイヴンのこと好きすぎるでしょう、この人たちは。いや、俺も友人として好きだけどさ。この人たちが暴れると苦労するのコッチなんだよなぁ……」 手持ち無沙汰の言いたい放題で待っていた4人だったが、暫くするとレクシェルが結界から姿を現した。 「すみません、お待たせしました。里長自らお礼が言いたいとのことですので、今日はこちらにお泊りください。その、レイヴンさんのことをとやかく言いそうな者たちは。今、ハーリオンが説得して回ってますので。それでも根付いた習慣があなたを傷つけることがあるかもしれませんが……私も黙ってはおりませんので、どうか、お許しください」 レクシェルが丁寧に頭を下げたので、レイヴンが大丈夫ですよ、と笑いかける。 「私のことを敵視していたハーリオンさんまで動いて下さっているし、自国にも色々な人がいますから、エルフも人間も関係ありません。そのお気持ちだけで充分です」 「そう言って頂けると助かります。では、ご案内します」 レクシェルが結界に手を触れると、結界が揺らぎ皆が通れるようになる。中へと入るとまた結界が閉じてしまった。 「許可制の結界か。何重にもなってて面倒なヤツだな。許可した者と一緒だと通れるのはいいよな。全部外さないと通れないのは貼り直すのが面倒臭ぇんだよな」 「その通りです。これらは里長が全て管理して下さっていますので、私たちは森の奥で安心して暮らすことができるのです。まずは奥の建物へご案内しますね」 レクシェルの案内で里の中を進んでいく。木造の温かみのある家が多く立ち並び、大体の家はツリーハウスと呼ばれるような形態で、森と共に生きているという表現がよく分かる。 エルフの子どもたちが時々皆を指さして。興味津々に近寄ろうとすると、大人たちが止めて遠目に見ている、という状況だ。 「里には訪問者が来ることが滅多にないものですから、怖いもの見たさで……申し訳ありませんが、もう少しの辛抱ですので」 「そんなに見られてもなぁ。俺が格好良いから見惚れるっていうなら仕方ねぇが?」 テオドールが顎に手を当てて擦り、格好付けたと思われる仕草をするのを見ると、他の3人が一斉に返答する。 「いや、それはないです」 「ないな」 「ですよねー。諦めましょう、テオドール様」 一斉攻撃に、何だよ……とやや不服そうなテオドールを見て、レクシェルですら思わず笑ってしまった。 「そうそう、折角綺麗な顔してんだからよ。笑ってないと勿体ねぇ」 「確かに。いいこと言いますね、テオドール様。それに下心がなければもっといいと思いますけど」 「お前なぁ。余計なこと言うと、コイツが……」 「……何で俺の方を見るんです?師匠のいつもの悪い癖ですから気にしてません。それに、レクシェルさんに冗談を言いたかったんですよ。ね?」 レイヴンは笑っているが、少しだけ怒っているような気もして。テオドールは平静を装いながら、視線を前に戻す。レクシェルはそういうやり取りを見ていて、不思議と笑顔になれる自分に内心驚いていた。 「すまない、悪気はないのだが。いつもこんな感じでな。厳かな雰囲気からは程遠い連中でな。レイヴンはそれでも1人ならば静かだと思うのだが……」 「いえ、私たちはこういう接し方をあまり知らないので。新鮮だなと思いまして。……そろそろ着きます。この建物が里長のいる建物です」 ディートリッヒにも微笑を向けたあと、レクシェルが建物を指し示す。この建物は石で出来ているようで、他の住居などとは一風変わった建物だった。どちらかと言えば神殿といった方が分かりやすいだろう。 「何か妙に堅苦しい感じの建物だな。ババアのいる神殿みたいな」 「だから、ババアって言わないでください。聖女様です。里長さんはここにお住まいに?」 「はい、そうです。精霊との対話もこちらで行いますので、寝泊まりはここで」 「でも確かに厳かな雰囲気がありますね。テオドール様は精霊にも嫌われそうだから、居心地悪いかもしれませんけど」 ウルガーの小さな反撃にテオドールも文句を言いながら、案内されるままに建物の中へと進んでいく。白い石で作られている建物は、単純な作りながら、澄んだ空気の満ちた建物で、精霊がいるかもしれないと言われれば何となく納得してしまう雰囲気があった。

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