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118.調べ物をしていたはずが
とりあえず手当たり次第に手に取った本を読んでみる。この本は魔法の大まかな種類について書かれていたのだが、基礎的なことが主で魔法の歴史はあまり載っていなかった。
「勉強にはなりますが、知りたいこととは違いますよね」
「この本は違うよなぁ。普通に読む分には構わねぇけどな」
テオドールも横から覗くが、極普通の内容だと分かるとすぐに違う本に手を伸ばす。
タイトルからも推測はするが、なかなか求める本には当たらない。飽きてきたテオドールがレイヴンを引き寄せて膝の上に載せる。
「テオ……やる気あります?」
「なかったら来てねぇよ。これでも読書は嫌いじゃねぇ方だしな」
「絵本の読み聞かせの体勢ですけどね、今」
「レイちゃんと一緒って感じでいいだろ」
腕でさらにレイヴンを抱き込んだので、うっ、とお腹を押さえる羽目になる。ケホ、と軽く咳き込んでから無視をして別の本を手に取ろうと腕を伸ばす。
「……テオ、邪魔」
「ひでぇなぁー?じゃあ、代わりに俺が取ってやるからよ。次はコレな」
悪びれずにケラリと笑い、テオドールはレイヴンに1冊の本を押し付けてくる。レイヴンはため息交じりに受け取り、読んでいた本を逆にテオドールへと押し付けた。
「テオは真剣さが足りないから勘違いされるんですよ。俺はこれでも一応分かってますけど、じゃなきゃ魔塔主なんて名乗れませんし」
「なんだ、急に。俺のことを持ち上げたりして」
「別に、何となくです」
「そうか。レイが褒めてくれりゃ、後はどうでもいいけどな」
片手で本に目を通しながら自然とそんなことを口走られると、レイヴンの方が逆に恥ずかしくなって本で顔を隠してしまう。不自然な体勢に気づいたテオドールが、クックッと声を立てて笑い始めた。
「……なんですか。ホント、趣味悪いですね。俺が褒めたらおかしいですか?」
「いや?もっと褒めてくれよ。な?」
「えぇ……」
「そこで引くなよ。ホント気まぐれなにゃんこだな」
いつものやり取りはするが、目線は一応本に戻して黙々と読み進める。
普段のやかましさがなくなり途端に静寂が空間を支配すると、茶一色の本棚の空間の中にローブを纏った2人が溶け込んで、時間が静かに流れていく。
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「やっぱり禁書じゃないと求めるものはないのかもしれませんね」
「あー……面倒だな。そっちは結界外すの面倒くせぇヤツな」
「やめてくださいね?無許可は。さすがに禁書は申請して許可を取らないと……」
「大体読んだら陛下のところに乗り込むか。それが1番早いだろ」
テオドールは読んでいた本をテーブルへと追いやり、本を読んでいるレイヴンをまた抱き直すと、首筋に顔を埋めて鼻をヒクヒクと動かして香りを吸い込んだ。
「ちょ、何して……も、真面目に…っ…」
「ちょっと休憩?」
「だからって、何で匂い嗅ぐんですか……こ、こんなところで何を……」
レイヴンがジタバタとしていると、入り口の扉がゆっくりと開いていく。テオドールを思い切り引き剥がして何とか隣の位置まで戻ったところで、人影が遠目に視界に入ってきた。
「んだよ……あ、ちょうどいいヤツが来たな」
「あれは……」
図書館に入ってきたのは宰相のアスシオだった。テオドールとレイヴンに気づくとテオドールに対してはいつもの冷たい視線を向け、レイヴンが立ち上がり挨拶をすると丁寧に挨拶を返す。普段通りの業務的な態度をお互い牽制しながら、テオドールが先に口を開く。
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