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125.いつもの魔塔主と補佐官
朝、目が覚めてからは何事もなかったかのようにやるべきことを順次こなしていた。
テオドールは昨夜の続きで魔法薬の調合のために個室に籠もり、代わりにレイヴンが魔塔の魔法使いたちの様子を見に魔塔内を巡回していた。
「補佐官様、お疲れ様です」
「お疲れ様。調子はどうだ?皆、少しずつ連携は取れてきているようだが」
「はい、第1陣と第2陣の切り替わりの練習もしたので、連続して攻撃魔法を打つことが可能になってきています」
「攻撃及び補助は連続して素早く唱えることが重要視されているからな。連携力を高めていくことは大切なことだ」
国に所属している魔法使いたちは個々の能力はそこまで高くないが、何人もが一斉に魔法を放つことに意味があるとされている。テオドールは魔法使いとしては異例であり、普通は団体で動くことを常としている。個人で動くのは冒険者と呼ばれる類の者たちくらいだ。
「補佐官様の得意な魔法はあるのですか?」
「得意?そうだな……属性であれば風魔法か?その辺りは好みもあるかもしれないな」
「成る程。魔塔主様もそういったものがあるのでしょうか?」
「あの方は……あまり参考にはできないな。生活に密着しているものは好まないだろうが、大抵何でもできるお方だから」
レイヴンは思案してみるものの、テオドールが苦手というか好まないものがこじんまりとした魔法というだけで、弱点をあげてみろと言われたとしても、ない?と答えるしかなさそうだった。
この後も1人1人の様子を見て指導と指示をした後に、自身の確認もしなくてはと久しぶりに自室へと戻ることにした。
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レイヴンは自室に戻ると、自身の魔法の精度を確かめるためにガラスのコップの中に凝縮した氷を幾つか生み出していく。その形と透明度をチェックして、どれくらいの精度なのかを覗き込んだ。
「……形は悪くないか。ただ、少し時間がかかりすぎるから魔力効率を考えないとダメか……」
カラン、カラン、と、室内に氷がグラスへと落ちる音が響く。
気づけば氷の入ったグラスは5つほど並んでおり、すぐにでも飲み物を飲めば冷たい飲み物が飲めるくらいの量になってしまった。
「……これはテオだったらすぐにお酒を飲みたいとか何とかいう展開な気が……」
独り言を聞かれたのか、気づけばテラスに噂をしていたテオドールがちょうど下りてきたところだった。
「よう。そろそろ戻るころじゃねぇかと思ってたが……何してんだ?あぁ、また何個も作ってんなー氷。俺に冷たいお飲み物でも出してくれるってか?」
「狙って現れたとしか思えない登場で若干引いてますけど、精度と詠唱時間の確認をしていたところです。氷はやりやすいので」
「まぁな。でもそんなに気にしなくてもレイちゃんなら余裕だろ。バッチリだしなぁ」
「テオは何でもできるからいいでしょうけど、俺はそこまでの自信はないですよ」
早速、飲むつもりで持ってきていた洋酒をグラスに注いでいく。氷は涼しげな音を立ててテオドールをさらに楽しませた。
「キツめの酒を持ってきたから、レイちゃんは飲むなよ?」
「テオが強いといったら相当じゃないですか。俺は結構です」
レイヴンも一息つこうとグラスに自家製のレモネードを注いでいく。レイヴンのグラスにも飲み物が満たされると、勝手に椅子を引いて座っていたテオドールがグラスをあげてレイヴンを待つ。
「ま、とりあえずは飲もうぜ。な?」
「いつも飲んでるじゃないですか……全く。まぁ、一息つこうかと思ってたので」
レイヴンも隣に座るとグラスを手に取り、お互いに軽く合わせて乾杯する。
お互いに口づけて、レイヴンは少しずつ、テオドールは一気に煽り、それぞれの楽しみ方で喉を潤していく。
「やっぱ、ひと仕事した後の酒はうめぇわ」
「でしょうね。俺もまぁ……飲み物は美味しくできているからいいんですけど」
暫くはお互いに報告をしていたが、テオドールがあからさまに酔ってきてレイヴンをペタペタと触り始めたので、レイヴンは椅子を離して距離を取る。
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