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148.洞窟のさらに奥へ

「微量だがまだこちらの方が役に立つ。一番は魔法使いに取り付いて吸えれば回収もできるが……もう少し改良が必要なのだろう。すまないがお前たち、この場は任せたぞ」 影は言い残し踵を返す。後を追おうとするディートリッヒの動きを読むように、一斉にコウモリが目の前に向かって進路を塞ぐ。ディートリッヒもあまり大ぶりで振ってしまえば、洞窟が崩れる危険性があることは分かっており、思い切った攻撃ができない。 影を追えずに舌打ちするテオドールも、自分たちを庇っているせいで動けないのだと理解そしたレイヴンはどうしたら良いのか、必死に思案する。 「また召喚陣があるのだとしたら、一気に動きを止める必要がある。それならば……」 レイヴンは手のひらを翳して目を閉じる。集中力を高め、ゆっくりと目を開くと檻の隙間から魔法を放つ。 「――風の波(ウィンドウェイブ)」 目には見えない微細な風の波が洞窟内を駆け巡る。するとコウモリたちの動きがバラバラになり、お互いに叩きあって地へと次々に落下していく。 「師匠!今のうちに召喚陣を!」 「やるじゃねぇか。コッチは任せとけ。お前らは今のうちに子どもを。さっきのヤツはまだ遠くに行ってないかもしれねぇ。後をつけられるか?」 「分かった。ウルガー、追跡は?」 「外の騎士に先程連絡を入れておきました。黒いローブの男らしき不審人物を見たと言うので追跡するよう伝えてあります。後は賊の処理とこのコウモリの処理ですね」 素早い連携で騎士たちが動き出すと、同時にテオドールもコウモリが湧いて出てきた奥へと姿を消す。動き出してしまえば皆も俊敏で、賊を縛り上げると入ってきた騎士たちに引き渡し、檻から子どもたちも連れ出して外へと避難させていく。レイヴンも一緒に出ると、奥へと向かったテオドールの向かった方向に足を踏み出す。 「奥からまたコウモリが出てくるかもしれません!」 「出てきた時はその時だ!子どもたちがいなければ多少の荒業でも何とかなる」 「団長!洞窟だけは壊さないでくださいよ!」 騎士たちに指示を与えていたウルガーがツッコミを忘れずに入れながら、レイヴンの背中を見送ると、レイヴンも苦笑してから表情を戻して駆け出していく。 +++ 洞窟内を先に進んだテオドールは、レイヴンと同じ魔法でコウモリを沈静化させながら不穏な気配の方へと向かっていた。途中、二股に別れていた道で外へ出る道とさらに奥へと進む道があることが分かり、探知(ディテクション)で引っかかる方へと進んでいく。 灯火(ライト)の明かりを頼りに湿った空気の流れる洞窟内をひたすら歩いていくと、漸く発生源と見られる召喚陣前へと辿り着く。 「ったく、どこまで歩かせるんだよ面倒臭ぇな。しかも何か蒸し暑いし、こんなもん早く終わらせて……」 雑に足に魔力(マナ)を込めて消そうとしたその時―― テオドールの右肩を何かが掠める。 「……チッ。タダではやらせねぇって?いらねぇんだよな、そういうプレゼントは」 いるのは分かっていたが、液体を飛ばしてくることに少々対応が遅れてしまい、ローブが少し焦げて穴が開く。酸性の液を吐き出した魔物は不快な音を出して、バサバサと翼のようなものを羽ばたかせる。

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