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161.緊張感の後の戯れ

「んむぅ!……ぅ…」 歯列をなぞり、しつこく舌を動かして嫌がる舌を捉えて重ね合わせる。 「ふ、ぁ……ぅん…っ……」 必死に身体をバタつかせて抵抗していたレイヴンだったが、何度も絡み合う舌に身体の力が抜けてきてしまう。必死に手だけはテオドールの両腕を掴んではいるものの、時間の問題だ。 「は、……うぅ、んぁ、ぁ…っふ」 テオドールは久しぶりのキスをしっかりと堪能すると、ちゅぷり、という水音を残して唇を少し離す。 「……なんだ。結構、良さそうじゃねぇか」 「……っみ、わかんな……ぁ……」 抗議しようとした口をもう一度塞ぎ、唇を吸い上げてから漸く顔を離してレイヴンを開放する。性急なキスにレイヴンの足元がふら、と、ぐらつくと、片手で支えてニヤリと笑う。 「……んと、何、考えて……」 「ぁー……疲れたから、補給?」 「ほ、補給……俺は、回復薬じゃ、ないんですけどっ!」 赤く染まった頬は怒りか、キスの名残なのか。 どちらにしてもテオドールにしては可愛いものでしかなく、ニヤニヤと笑うばかりだ。 「俺にとっちゃ似たようなもんだしなぁー?で、コイツは別に痛くもねぇから安心しろって」 テオドールは先程も手の甲を見せると、安心させるように今度は普通に笑ってレイヴンを宥めるように指先を髪に絡めながら、何度も撫でる。 「……なら、いいですけど。色々、勝手に決めるし。何か大変なことになりましたし。俺、全くついていけていないのに。ふざけてばっかりだから……」 「ちょ、また泣くなって!いや、アレだ……最近シてなかったから、我慢できなくなったというか、なんというか……」 涙目で訴えるレイヴンに今頃になって罪悪感が湧いたのか、少しだけ困ったように言い訳を始める。レイヴンもその様子に一応は涙を引っ込めて、長い溜め息を吐く。 「俺を精神を安定させるように使わないでください。俺も不安ですが、テオだから大丈夫だって、思っている訳ですし。だから、その……」 「ん?」 「だから!ここでは嫌です!」 レイヴンが意外なことを言うので、テオドールが珍しく驚いたような顔をした。 「ここでは?」 「繰り返さないでくださいよ、もう。なんでこんな変な洞窟でしようとするのか……。どうしてもと言うのならば、安心できるところで……」 「……そうかそうか。レイちゃんもお年頃だし、たまには出さないと……」 「口に出さなくていい!どっちにしても報告しなくちゃいけませんし、帰りますよ!」 怒ったり涙目になったり、コロコロと表情を変えるレイヴンを見ながら機嫌を良くしたテオドールは、逃さないと言わんばかりにレイヴンの身体をひょいと持ち上げて、姫抱きにする。 「ちょっと、テオ!今度は何して……」 「姫の気持ちが変わらないうちに帰ろうぜ?俺もキスだけじゃ足りねぇ」 「別に俺は足りてないとかそういうことじゃなくて!」 「……心配な時は、くっついていたいんだろう?大変な思いもしたしな。大丈夫、側にいてやるから。な?」 テオドールが珍しく優しく語りかけるので、レイヴンはそれ以上は抵抗せずに素直に頷いた。この状態のまま洞窟の外に出ると、念のためこの場所を記憶へと留めてから詠唱を始める。 「でも、ここから魔塔へと戻るのってかなりの距離が……」 レイヴンの心配をよそに、テオドールはニィと笑んで詠唱を終える。 身体が持ち上がる浮遊感がしたかと思うと、あっと言う間に景色は魔塔のテオドールの自室のテラスへと移り変わった。

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