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165.甘い余韻

「ぁ、あぁ……ん…っ……はぁ」 テオドールがゆっくりと自身を引き抜くと、一緒にゴポリと飲み込みきれなかった白濁が流れ出てくる。汗で張り付いた髪を片手で適当に流すと、レイヴンの髪の毛も整えて額に唇を落とす。 「良さそうだったじゃねぇか。ま、俺もゆっくりと愉しんだからいいか」 「……も、終わった……?」 「何だよ、足りねぇならお替りするか?俺は一晩中でも構わねぇが」 ニィと笑みを貼り付けてテオドールがレイヴンにキスをすると、レイヴンが嫌そうに頭を振った。 「も、いい……」 「そんなに遠慮しなくてもいいのによ」 「も、やだ……」 快楽が抜けきらない赤く染まった顔で涙目で訴えるレイヴンに、思わず喉が鳴ってまた蹂躙したくなるが、この感じは無理やりやると暫く触れることすら許さないだろうと思ったテオドールが仕方なく身を引いて、レイヴンの隣で身体を横たえた。 また同じ様に身体を清め、熱だけはそのままにレイヴンを優しく抱き寄せる。 「あのなぁ、そういう顔でこういうことを言うのは、否定じゃなくてお強請りだからな。俺以外に絶対に言うんじゃねぇぞ」 「そういう、こういう……知らないし。テオ以外とこんなこと……しないし」 「全く。可愛い子にお強請りされたら続きをしたくなるんだっての。まぁ、今日はこのくらいで勘弁してやるから」 わしわしと頭を撫で回すと、一瞬嫌そうにするがすぐに甘えるように瞳を閉じて受け入れるレイヴンに、何とか欲望を飼いならしながら唇だけを優しく触れさせていく。 「ん……擽ったい」 「あー……明日起きられないくらいに抱き潰してぇなー……」 「テオ……声、漏れてる。まんま、漏れてる」 「仕方ねぇだろ。レイが煽ってくるから」 「……煽って、ないし。も、今日はしません。だけど……側にいて欲しい……です」 可愛いお強請りに、仕方ねぇなぁとテオドールも優しく笑うと。そのままレイヴンを腕の中に閉じ込めて、瞳を閉じた。 +++ 夜中にふと目を覚ましたレイヴンは自分を抱きしめたまま眠るテオドールに安心して息を吐く。勝手に決めて、勝手に進んで。それでも、信じているのだが……。 「信じているけど、テオが無茶をしすぎないかとか、何かあったらと思うと……不安で。俺がもっとテオのように強ければいいのに……」 テオドールに抱きついてギュッと目を瞑る。自分は精霊魔法が使えるという利点はあっても、まだ使いこなせていない。魔法は必死に努力しているが、それでもテオドールと比べれば劣ってしまうことは分かりきっている。 「本当は……ずっとテオの腕の中にいたい。何も考えずに、テオを感じていたい。俺の側に……」 そこまで呟くと、急に力強く抱きしめられた。痛いくらいに強く抱きしめられて驚いていると、顔を持ち上げられて唇を奪われる。 「んんっ、ぁ、……テオ?」 「真夜中に、なぁに不安がってんだよ。お前は自己評価が低すぎる。俺の隣に立てるのはお前だけだって。いい加減分かれって何度も言ってるのになぁ?」 「……ごめんなさい、俺……」 「謝るのも禁止だ。弱気になるのはまぁ、分かるけどよ。俺も引き受けてはみたが、まぁなんとかなるだろ、くらいだしなぁ」 テオドールの言い分に文句を言いたくなるが、優しく微笑まれて頭を撫でられると言葉は出て来ない。 「……その顔は反則」 「んー?俺だって弱ってるレイに意地悪はしねぇよ。でもなぁ、口説き文句のように呟かれると身体は正直だからなァ」 テオドールは立ち上がりだした自身をレイヴンの腹へとピタリと当てる。驚いたレイヴンだったが、自身の発言を思い返して顔を熱くする。 「ひ、独り言聞いて……」 「情熱的に求められたら答えねぇと。なぁ?」 「ぁ……ぁ、ぁう…うぅぅ……」 羞恥心で恥ずかしがっているが、テオドールの戯れにレイヴンもまた熱を帯びてきてしまったことに気付く。 「聞いてないと思ったのに……でも、嘘じゃないから。俺も、もっと……」 レイヴンが言い終える前に、また唇が重なり合う。重なり合いが深くなり、レイヴンがまた求めれば互いに熱を分け合って、不安が熱で掻き消えるまで甘い時間が流れていった。

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