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167.協力要請
謁見室を出たその足で、騎士団の訓練所へと向かう。
足を踏み入れると、訓練時間だったらしいディーとウルガーもいるのが見えた。
テオドールは気にせず敷地の奥へ進み、二人へ近づいていく。
「邪魔するぜ」
「お前は……本当に邪魔をしにきたのか? 全く」
「すみません、ディートリッヒ様。突然乱入するような形で……」
魔法使い二人の姿を見たウルガーが、他の騎士たちに自主訓練を命じて二人に歩み寄ってくる。
「テオドール様とレイヴン、お二人でいらっしゃったということは何か重要なお話が?」
「相変わらず勘がいいじゃねぇか。お前にも関係あることだから、そうだな……ちょっと耳を貸せ。アイツらには聞かせないほうが良い話だ。今言うのは動揺があるかも知れねぇからな」
テオドールの目配せの合図と言葉を聞いて、ディートリッヒが騎士たちが一時休憩の時に使うらしい木の長椅子がある場所へ移動するように促してきた。
椅子にレイヴンとウルガーを座らせて、テオドールが防音結界を展開する。
ディートリッヒがテオドールの真横で両腕を組んで、堂々と立つ形になった。
「結界までか。で、何だ。俺たちはまだテオとレイヴンがエルフの里から帰ってきてからの話は聞いていない。先に陛下へと報告したのだろう?」
「ああ。これから話すことは先に陛下から勅命は出てるんでな。これは確定事項だ。文句は受け付けねぇ」
「……俺、聞きたくないなー。テオドール様の話とか、嫌な予感しかしない……」
「ウルガー……気持ちは分かる。けど……俺も今、緊張しているところだから……」
ウルガーはレイヴンの表情で覚悟がいる話だと悟ったらしい。
腹を括ったのか、溜め息を吐き出した。
「拝聴いたします」
と、テオドールを見上げながら姿勢を正した。
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テオドールは陛下の前でした話と同様にディートリッヒとウルガーにも包み隠さず全て伝え、最後に手の甲を見せて事実だと念押しする。
「……という訳だ。お前たちにも参加してもらう」
ディートリッヒは話を聞きながら拳を震わせていたが、全てを聞くと額に手を当てて唸り始めた。
「団長、皆が動揺しますから動きは最小限でお願いします」
「分かっている。分かっているが……テオの話は突拍子もなくてな」
「別に簡単なことだろ。全てぶっ倒せばいい話だ」
「そう簡単に言いますけど、万が一のことがあれば大変なことになりますからね。ディートリッヒ様の反応が普通です。俺は……信じていますけど」
言いながらどうしても不安げな表情になるレイヴンの頭を撫でて、テオドールが笑いかける。
ディートリッヒは唸ったままだったが、テオドールが目を向けると今度は強い視線で訴えてくる。
どうやら、騎士団長やる気満々の様子だ。
魔塔主もニヤリと笑って、頷き返した。
「確定事項なのだから、異論はない。挑むしかないということだ。ウルガー、暫く訓練の量は二倍、いや、三倍に……」
「勘弁してくださいよ! 大事な戦いの前に身体がボロボロになりますって! 焦ったところでどうにもなりませんよ。何とか死なないように立ち回る方法を考えるだけです」
「ハハ! 副団長は小賢しいよなァ? 猪突猛進バカとは違うな」
「師匠! それは師匠もそうなんですからね? 後先考えないで……」
説教が続く前にウルガーが立ち上がって話を切るように腕を上下に振る。
その仕草に口を開きかけたディートリッヒとレイヴンが仕方なく言葉を飲み込んで、息を吐いた。
話は終いだと言わんばかりに、テオドールが結界を解除しレイヴンの肩を腕で抱き込んで自分に引き寄せた。
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