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179.自由にやらせたい師匠と攻める弟子

   テオドールが軽く目を閉じると、連続で瞼に唇が落ちてきた。  遠慮がちだが、テオドールの真似をするようにレイヴンがキスをしている。  テオドールは擽ったさと共にレイヴンの唇を感じていた。 「随分甘やかしてくれるじゃねぇか」 「言い方が上から目線なのが気になりますけど……素直なテオも気持ち悪いし」 「ホント言い方優しくねぇなぁ」 「優しく言いますか? じゃあ……テオ、好き」  レイヴンの優し気な声が降ってくる。  好きと言われるのは嘘だろうがいいものだと、テオドールは満足気に笑む。  レイヴンが照れながら言った好きのついでなのか、テオドールの唇がやんわりと塞がれた。 「ん……」 「なぁ、もっとしてくれよ」 「欲しがりさんですね」  薄目を開くと、テオドールの顔を覗き込んで笑っているレイヴンが見えた。  手を伸ばしてレイヴンの頭を撫でると、ゆっくりと顔が下りてきてまた唇を塞がれる。  ちゅっちゅと何度も遠慮がちに唇に触れてくる仕草が可愛らしくて、自然とテオドールの口角が上がる。 「んっ……っふ」 「フ――随分とお優しいじゃねぇか」 「ぅ……じゃあ、唇開いて? って、こういう時だけ素直すぎる」  テオドールが素直に舌を差し込めるように唇を薄く開くと、レイヴンはじぃっとテオドールの顔を近くで覗き込んだまま固まってしまった。  テオドールとしては大胆に口付けて欲しいのだが、いちゃついているのも悪くないとニヤリと笑う。  レイヴンがあたふたしてる様を見上げてるのは楽しいからだ。  レイヴンはちょんとテオドールの舌を突いてこようとする。  テオドールは大人しく待ち構えているのに、なかなか絡ませてこない。  ここは少し助けてやった方がいいだろうと判断し、少しだけ攻めに転じる。 「んんっ!?」  逆にテオドールの舌を擦りつけてやると、レイヴンが驚いたように声をあげる。  それでもレイヴンは気を取り直したのか、必死に舌を絡ませてきた。  少しずつ舌が絡み合っていくと、二人の間から零れる吐息も熱くなってくる。 「んぁ…ぁ」 「ン――いい感じだ」 「そう、ですか? でも……ゆっくりとキスだけするのもいいですね」  レイヴンは口を少しだけ離し、呼気だけで笑いかけてきた。  表情がなかなか色っぽく見えて、テオドールもフッと笑う。 「じわじわ焦らされるってのも、たまにはいいかもな」 「焦らしてるつもりは、ないんですけど……」  テオドールがちょっかいをかけるまえに、レイヴンに両頬を手のひらで包まれてしまった。  レイヴンのぴたりと吸い付くような手のひらの感触も悪くないので、テオドールも大人しくする。 「相変わらずちくちくするし。ちゃんとお手入れしないから」 「髭なんて放っておいても生えてくるんだしよ。別に気にしなくていいだろ」  レイヴンは不満そうにテオドールの頬を撫でながら、もう一度ちゅっとキスをしてきた。  離れていく顔をテオドールがじっと見つめると、レイヴンの頬が赤くなってくる。 「なんですか? 人のことじっと見て」 「あぁ、もうおしまいかと思ってな」  テオドールがニヤリと煽るように笑ってやると、レイヴンは恥ずかしそうな顔をしながらテオドールの頬をむぎゅっと押し込んできた。

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