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180.可愛い弟子に抱かれて

   テオドールがニヤニヤしながらレイヴンを見上げると、上からため息が降ってくる。 「もう……絶対眠らないだろうし、うずうずしてるの丸分かりですから。分かりました。テオのことは責任もって寝かしつけます。ベッドに上がっていいですよ」 「可愛いレイちゃんの傍にいるからなぁ? そうか、それはじっくりと寝かせてもらわねぇとな」  レイヴンは苦笑しながらテオドールの頭をポンポンと宥めるように撫でてくる。  テオドールが大人しく言うことを聞いてやらないと、レイヴンはムッとするだろう。  場面が容易に想像がつき、テオドールは顔を隠したまま口端で笑む。  テオドールはレイヴンに言われた通り、ゆっくりと身体を起こす。  一旦レイヴンから離れ、遠慮なくさっさとベッドへ寝転がる。 「許可した途端に図々しい……さすがテオ。でも、一緒に寝るだけですよ? 何もしないですからね」 「わぁったよ。レイちゃんだってもっとイチャイチャしたいの我慢してるんだから、俺も合わせないと失礼だからな」 「俺は別に……」  レイヴンはぶつぶつ言いながら、テオドールの隣に寝転んでくる。  素直で可愛いなと、テオドールも視線で様子を見守る。  普段はテオドールの方から抱き込むことが多いが、レイヴンの中ではテオドールが甘える設定なのだろう。  好きにさせてやろうと、テオドールから手を出さずに目線だけ動かす。  そのままちらっとレイヴンを見ると、恥ずかしそうな顔をしながら両手を広げてくる。 「ほら、早く。いつもしてもらってますし、今日は俺が抱きしめてあげます」 「頼んだ。優しく寝かしつけてくれよ」  テオドールがレイヴンの胸元に顔を寄せると、遠慮がちにテオドールの背中に両腕が回される。  胸元でスンと息を吸い込むと、何故か甘い香りがする。  レイヴンは相変わらず高めの体温で、テオドールにとっても心地いい。 「これで満足ですか?」 「ん? まぁな。レイちゃんに包まれてるってのも悪くねぇ」 「いちいち言い方が気持ち悪いのなんとかなりません?」 「過敏に反応しすぎだろ。褒めてんのによ」  テオドールが呼気で笑うと、レイヴンは両腕に思い切り力を込めてくる。  ちょっと息苦しくなるが、テオドールもくっついているのは嫌いじゃなかった。  褒めてやるつもりでテオドールから口を開く。   「レイちゃんったら、大胆ー」 「何がですか! もう、大人しく寝てくださいよ」 「んなこと言われても、ドキドキしてんのが丸分かりだしな」 「ホント、ああいえばこういうんですから。諦めてますけど、どうしても言い返したくなるんですよね」  レイヴンはクスクスと笑いながら、テオドールの髪を優しく撫でてくる。  テオドールも欲望を刺激しない程度に、レイヴンの身体に腕を回す。 「なんかしがみつかれてるみたいで変な感じですね」 「体格差はどうしようもねぇからな。俺は気にしねぇが」 「ですよね。じゃあこのままで」  テオドールは元々ヤる気満々だったが、静かに可愛がられるのも落ち着くなと身体を委ねる。  レイヴンにされるがまま寝るのも悪くないなと思い、大人しく目を瞑り呼吸を整えて寝る準備を始める。 「テオ……? え、ホントに寝ちゃうんですか」 「寝たらマズイのか? なんだ、俺とヤる気に……」 「そんなことないです! 寝ましょう。俺も眠くなりました」  レイヴンがテオドールの頭をぎゅうぎゅうと締め付けてくるのが面白くて、テオドールは声をあげて笑ってしまう。  ひとしきり笑うと、心地よい眠気に誘われてきた。  このままだと、レイヴンより先に寝そうな予感がする。 「俺もテオのために成長しますから、今は一緒に」 「あぁ。いつも一緒だ」  テオドールは面倒ごとを全て片付けて、いつもの通り一緒に仲良く過ごしたいものだと切に願う。  今だけは迫っている戦いを忘れて、可愛い弟子に抱かれて眠ろうと身を任せた。

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