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192.最後の仕上げ
ディートリッヒとやり合ってから、テオドールの頭の中は少しスッキリした。
ディートリッヒに感謝したくはないが、たまには役に立つらしいと口元だけで笑む。
風呂に入って汗を流してからもう一度机へ向かうと、テオドールも落ち着いて考えられるようになった。
頭の中で様々な角度から魔法を構築して、魔力 の流れをまとめあげていく。
魔法は感覚的な部分もあるしあらゆる知識を組み合わせて答えを導く場合もあるが、それを全て人に説明するのは面倒なものだ。
テオドール自身魔法の真理を追及していくことは嫌いじゃないが、人様に教えるのは向いてないと自覚している。
だがレイヴンは、テオドールと魔法の感覚が似ているところがある。
そうじゃなければ、テオドールの弟子なんてやっていられないだろう。
テオドールが説明したことを、嫌そうな顔をしながら最終的に理解するからこそ優秀な弟子なのだろう。
レイヴンのためにも、テオドールは魔族を圧倒するような強い力を追い求める必要があると考えていた。
「対魔族用ってんだから、単純な火力だけって訳にもいかねぇからな」
魔族に付き合うには、攻撃と防御の両方を考えなければならない。
本当は大火力を放出して一撃必殺ができればいいのだが、そう易々とはいかないだろう。
魔族がどういう手段で来るのか、予想しきれないからこその準備だ。
「これが終わったら、そろそろレイちゃんを迎えにいかねぇとな」
テオドールはレイヴンがどれだけ成長しているのか、楽しみに思っていた。
師匠らしいところを見せてやれば、久しぶりに会ったテオドールへ自らご奉仕してくれるかもしれない。
いい加減、何とは言わないがたまってしまって困っていたところだったのだ。
会ったらまず何をしてやろうか? と、自然とニヤける。
「まあ、コッチへ帰ってきてからだな。さすがにクレインの前でヤる訳にいかねぇか」
テオドールもそこまで鬼畜ではない。
レイヴンはテオドールのことを全く信用していないが、クレインの前で息子の痴態を見せつけたいなんて性癖はさすがに持ち合わせていない。
正直、テオドールのたまった鬱憤はレイヴンを愛でることで解消させたいところだったのだが……レイヴンを含めて、周りの後始末が面倒臭いのが目に見えていた。
あのディートリッヒもギャンギャンと吠えてうるさいだろう。
「今日中に片づけちまって、明日迎えに行くか」
そうと決まれば、面倒ごとは素早くやっつけるに限る。
一旦レイヴンへの欲望は心の奥底へ沈めて、目の前のことに集中していく。
テオドールは時々煙草もふかしながら、書き出した資料を一つの形へ纏めていく。
最後の仕上げを本に書き出していくと、漸くテオドールのやりたい形になってきた。
これなら新しい魔法も完成しそうだ。
この魔法は制御が難しくなるだろうが、うまくいけばレイヴンにもいつか伝授できるだろう。
ただ、使い方によっては危険を伴う魔法もある。
危険な方はまだテオドールの中だけに留めておいた方がいいだろう。
レイヴンには精霊魔法という強みがあるし、レイヴンのことは精霊も守ってくれるはずだとテオドールも思っていた。
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