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193.師匠と弟子の久しぶりの再会

   次の日、テオドールは早朝に起きてから適当に身支度を整えて一服していた。  レイヴンを迎えに行く日くらいは早めに行かないと、後で文句を言われそうだからだ。  テオドールはレイヴンが真剣に強くなろうと特訓をして頑張っているのだろう予想し、少しは優しくしてやろうと思っていた。  煙草を灰皿へ押し付けてから、精神を集中させる。  わざわざ集中するのは眠気のせいもあるが、ここからエルフの里までは少々距離がある。  座標がズレるのも面倒臭いし、エルフの里ではレイヴンに付けている目印も結界で分かりづらくなってしまう。  本来はレイヴンのことを思い浮かべることが一番手っ取り早いが、できないものは仕方ない。 「さてと、お迎えに行くとするか」  テオドールは頭の中で座標をしっかりと思い浮かべ、魔法を発動させた。  +++  テオドールは計算通りにエルフの里の結界前に降り立った。  来訪者に気づくかどうか、結界にちょっかいでもかけてみようと呪文を紡ぐ。 「石の雨(ストーンレイン)」  手を振り上げ、結界めがけて小さな石の雨を降らせる。  手加減しているので結界には影響もないはずだが、エルフの里の皆が気づくかどうかだ。  腕組みして少し待っていると、スッと結界が解かれる。  目の前に焦った顔をしたレイヴンと、苦笑しているクレインが立っていた。 「テオ! 結界に攻撃を仕掛けるだなんて、何を考えているんですか!」 「攻撃だなんてそんな大層なもんじゃねぇだろうが。大げさだな」 「レイヴンの言いたいことも分かるが、テオドールは我々が敵の侵入に迅速に気づくかどうかを試してくれたのだろう?」  クレインは予想通りの反応を返してきた。  テオドールの意図にも気づけないようじゃ里長なんて務まらないだろう。  それでもレイヴンは全てを理解した上で怒っているみたいだった。 「迎えは助かりますけど、やり方がいつも乱暴なんですよ。どうしていつも強引に……」 「ったく、久しぶりに会ったってのにまた説教か? お前のせいでディーにも絡まれたってのによ」  ディートリッヒの名前を出すと、レイヴンの動きがピタリと止まる。  じぃっとテオドールを睨むように見上げてきた。 「テオ……まさか、暴れたんですか?」 「お前なぁ……」  テオドールとレイヴンのやり取りを見ていたクレインが、こほんとわざとらしい咳払いをする。  レイヴンはハッとしたような顔をしてから、恥ずかしそうに少し頬を赤らめた。 「……続きは戻ってから話しましょう。ここだと、お父さんたちに迷惑がかかりますから」 「迷惑はかからないが、ここで立ち話というのもどうかと思ってな」 「まあ、結界を開けたままってのは良くねぇよな。あんたの気遣いに感謝でもしとくか」  クレインは気が利くお父様というところだろう。  レイヴンは妙にそわそわしていたが、テオドールは問答無用で腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。 「テ、テオ!」 「ご迷惑をおかけしないうちに、退散しちまうか。クレイン、里のことはあんたに任せた」 「テオドールらしいな。では、レイヴンのことを頼んだぞ」  テオドールがニッと笑って見せると、クレインも似たような顔で笑い返してくる。  察してるぞという意味だろう。  エルフの里長様は、伊達に年を重ねている訳ではないということだ。

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