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220.言葉の意図は?
対峙している二人は一度剣を押し込みあってから、また少し距離を取る。
そしてまた真っ向から刃と刃をぶつけ合って、ギリギリと押し付け合う。
とにかく真正面からぶつかり合うのが続いてるせいで、油断をすれば剣が弾かれて終わりだろう。
「どうやら打ち合いが好みなようだな。まだまだ体力は有り余っている。しばらく付き合ってもいいが……あまり長引かせると外野が煩そうだ」
「ガイヤトハ……オマエヲミテイルモノタチカ?」
「ああ。俺の戦いを見守ってくれている者たち。つまり仲間だな」
「ナカマ……ナカマノナカニ、アイスルモノガイルトイウコトカ」
ゼパルは、また妙な問いかけをしてきた。
やたらと愛だのとのたまっている。
恋愛という意味ならば、ディートリッヒは一番かけ離れた位置にいるから無駄な質問だ。
テオドールは腹も立つし、もうしゃべらずにとっとと黙ってほしいと思っていた。
「お前の言う愛がどの愛を指すのかによるが、友として仲間としての愛は友愛とも言うのではないか?」
「ホウ?」
激しく剣を交えながらする会話とは思えないが、これが遊戯ってヤツなら従うしかないのだろうか。
これはある意味拷問に近い。寒気とイラつきに耐え続けろって言うのがテオドールにとっては辛いことだ。
「アイハトウトイモノダトモキイタ。ソレナラバミマモリツヅケルカ」
「見守るだと? 一体何の意図が……」
ディートリッヒが何度目か分からない刃を交えたところで、急に矛先が変わりテオドールたちのいる方へ赤い甲冑が勢いよく向かってくる。
「え……テオドール様! なんかコッチに突撃してくるんですけど!」
「チッ! 一体何がしたいんだよコイツは。おい、ディー!」
ディートリッヒはテオドールが声をかける前にテオドールたちの前へすっ飛んできて、ゼパルが放ってきた剣をがっちり受ける。
勢いを受け流しきれずに、ディートリッヒが押されて後ずさりしてきた。
「ちゃんと愛する者を守ってくれよ? ……自分で言っても寒気がするな」
「師匠! 余計なことを言ってないで守りを固めてください」
真面目なレイヴンは念のために光の盾 を展開しているが、ディートリッヒならこれくらいはどうってことないのだろう。
それより、ゼパルの目的をはっきりさせとない時間の無駄になってしまう。
「ディー、さっさと終わらせろ」
「無茶ばかり言ってないで、お前も策を考えろ! 愛を語るなど、俺にはできんぞ」
「力は拮抗 していますもんね。早く問いかけの正解を導かないと……しかし団長じゃ答えを導けませんよ?」
ウルガーは相変わらずサラッと本心を混ぜてきたようだ。
間違ってないからこそ会話を拾ってる訳だが。
こうなったら適当にこの中の誰かが愛する者だって言えばいいだろうか?
見守りたいだとかぬかしてる訳だから、逆に見せつけたら納得するかもしれない。
テオドールとレイヴンを除くなら、ウルガーか聖女の二択だ。
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