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223.因縁の対決

   ディートリッヒまで終わって、宝石は三つ。  一体いくつ集めればいいのかも分からず、テオドールはイライラしていた。  テオドールたちの話が聞こえたかどうかは分からないが、訓練所の奥の扉が開く。 「ったく、今度はどこへご招待を受けたんだ? いつまで続くんだこの戯れは」 「腹立たしいけれど、相手の気が済むまででしょうね。最初は一番落ち着いていた癖にすぐイライラするのよね? 本当に子どもより酷いわ」  テオドールの側でワザとらしいため息を吐く聖女を無視して扉をくぐる。  潜った先は訓練所より更に開けた空間だ。  真ん中には石で作られた舞台のようなものがあり、最奥には鉄格子も見える。  あの奥から何か出てきそうな雰囲気がするな。 「これは……闘技場か? ここでまた何かと戦わされるというのか」 「さあ? どうせまた変な人が出てくるんじゃ……」  ディートリッヒとウルガーが会話をしていると、最奥の鉄格子がガラガラと音を立てて上へあがっていく。  遠目で見なくても分かる。この気配には覚えがあった。 「……なるほどな。ここで出てきやがったか」 「師匠……あの人たちは、洞窟の……」  テオドールは散々焦らしやがってと毒づく。  テオドールの予想通り、洞窟で出会った白髪の男と魔物使いだ。  魔物使いは相変わらず不愛想だが、白髪の男はニヤニヤしていて見ていて胸糞が悪い。  テオドールとしては有無を言わさずにぶっとばしたいが、宝石を手に入れるっていう厄介な縛りがあるせいですぐに終わらせることもできない。 「やっと対峙できるな。お前のせいで研究が止まってしまったが……以前集めたものだけでも成果は見せられそうだ。なあ?」 「お前は口を閉じてろ、馬鹿主。コイツらの力を削いだあとに雇い主の元へ突き出さないと目的は果たせない。戦うのは魔法使い二人だ」  魔物使いと白髪の男もテオドールたちを何とかしないと研究は続けられないようだ。  そんなことさせねぇとテオドールは自然と前方を(にら)みつける。  しかしレイヴンもヤツらからご指名が入るならば、今度こそレイヴンを側で守ってやろうと固く誓う。 「で、テオドールはお前らをぶっとばせばいいだけか?」 「ちょっと、テオドール。あなた……」  聖女はテオドールを(なだ)めようとしたみたいだが、今はそれどころじゃない。  目の前の二人はテオドールの可愛いレイヴンを仮死状態に追い込む原因を作ったヤツらだ。  ただ宝石を出したらおしまいって訳にはいかない。   「何か言いたいことがあるか?」 「……貴方の表情を見たら分かるわ。ただし、私たちの目的も忘れないで。目標はあくまで今もどこかでほくそ笑んでいる魔族よ」 「分かったなら、異論ねぇな?」  テオドールが言い切ると、聖女も納得せざるを得なかったらしいな。  何か言いたげなディートリッヒを納得させるように首を振り、聖女様は邪魔にならないようにと騎士たちと共に闘技場の端へ離れていく。 「レイヴン、お前も十分に注意しろよ」 「テオ……俺は何年あなたの弟子をやっていると思っているんですか。注意しなければ俺はもうここにはいませんよ」 「そうだったな。信じてるぜ?」  テオドールは愛おしくて可愛い弟子の髪に唇を落とす。  レイヴンはすぐに気づいて文句を言いかけたが、大人しく黙って前を見据える。  いい加減これくらい慣れてくれてもいいのだが、いつまでも反応が初々しいところも気に入っていた。  おかげで少しだけテオドールの心のざわつきが治まった。

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