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235.衝撃の事実?
ここまできたらもう開き直ったもん勝ちだろうと、テオドールは腹を括 ってニヤリと笑んで見せた。
「クレインにも言ったが、テオドールとレイヴンは正式にお付き合いしてる仲だからな。夜も仲睦まじいって訳よ」
「あぁぁ……テオはっ! なんでそういうこと平気で言っちゃうんですか! ホント最低っ」
「……色々と確認したいことはありますが、先ほども言ったようにレイヴンはテオドールに心を許しているのは分かります。ですから、これ以上私からは何も言いません」
「お、じゃあ認めてくれるのか?」
「認めるも何も……今更私が何を言ったところで、あなたたちの関係性が変わる訳ではないでしょう? 私だってある意味、禁断の恋をして結ばれた訳ですから」
見た目の色味は変わらないが、ウンディーネも照れているみたいだ。
こういうところは人間っぽさが残っていて、テオドールから見てもかわいらしく映る。
「ってか、母ちゃんは何歳で亡くなってるんだ? 見た感じ若そうに見えるが」
「私ですか? 二十八の時ですね。テオドールは今……」
「三十。なんだ、母ちゃんも余裕でいけちまうなァ?」
「何を言ってんの? この人は……っ……! ありがとうって思ったのがバカみたい。こんの……変態〇×野郎!」
「口悪っ! お前なぁ、俺なりに場を和ましてやってんのが分かんねぇのかァ? ただの軽口だ。このド真面目弟子さんは嫉妬深くて困っちまう」
「はぁ? 人の母親捕まえて、何がいけちまうなァ? だよ! 落ちるとこまで落ちてるだろ! 今、真剣な話をしているのが分かりませんか? バッカじゃないの?」
テオドールたちがギャンギャンと騒ぎ始めてしまったせいで、ウンディーネが困り始めた。
だが、テオドールがウンディーネを横目で見る限り楽しそうにしているように見えたのでおそらく大丈夫そうだ。
テオドールは湿っぽい話は苦手であり、さっさと流してしまった方がいいと思っていた。
「これ以上ウンディーネ様を……お母さんを変な意味で見たら……」
「おいおい……魔法をぶっ放そうとするんじゃねぇよ! この結界は外から丸見えなんだぞ? 俺が何したってんだよ。いい加減落ち着けって」
「うるさいっ! あぁもうっ。お母さんこんな最悪な人ですみません。俺が絶対に真人間の道へ戻してみせます!」
「なんだか私も気が抜けてしまったわ。テオドール、あなたの人柄は分かりました。これで私も心置きなくクレインにも伝えられそうね」
今、テオドールの耳にさらっと重要なことが聞こえた気がした。
もしかして、クレインはウンディーネのことを知らないってことだろうか?
レイヴンも魔法の代わりにテオドールをポカポカと殴りつけてきていたが、ウンディーネの言葉にピタリと動きを止める。
「そういえば、シルフィード様が前に仰っていたことって……お母さんのことだったんでしょうか?」
「たぶんそうね。精霊王同士は仲良く話す時もあるから。私が元人間だということも、精霊王は知っているの。でも……この姿でクレインの前へ現れる勇気がなくて」
困ったように微笑むウンディーネを見て、レイヴンが逆に微笑み返す。
「大丈夫ですよ。きっとお父さんも喜びます。全て終わったら、一緒に会いに行きましょう」
「そうね。ありがとう、レイヴン。では名残惜しいけれど……皆様をこれ以上待たせる訳にはいかないわ」
ウンディーネの言葉を聞いて、テオドールはもう一度パチンと指を鳴らす。
すると、結界が外れて外の声が聞こえるようになった。
「テオ、お前また何かやらかしただろう? レイヴンが怒っているように見えたぞ」
「いきなり説教してくるんじゃねぇよ。相変わらず騎士団長サマはいちいちうるせぇな」
「無音で見守ってましたけど、色々と状況が変化していたじゃないですか。それを見た団長が騒いでバタバタしてたんですよ。落ち着きがなくて参りました」
「そうね。テオドールが何かやらかしているのは理解できたけれど。ウンディーネ様も晴れやかな表情になられたし大丈夫ということかしら?」
外にいた面々も、話は聞こえなくてもそれぞれ色々と考えていたようだ。
レイヴンにとってはありがたいことだろうと、テオドールもしてやったり顔をしてレイヴンを煽る。
当の本人は今更恥ずかしくなったようで顔を隠したのだが、もう今更だろうとテオドールも口元で笑んだ。
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