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241.それぞれの戦い
追加の小隕石群がハーゲンティを目指して飛んでいき、身体にぶつかっていく。
どうやら追加のおかげで見えない盾を破ることができたらしい。
何個かはハーゲンティの服を切り裂いていき、叩き落とされたものはパラパラと粉になって消えていった。
「この程度の岩が? 我の結界を通り抜けたのか」
「立たせてやっただろうが。楽しんでるか?」
ウルガーに視線を流すと、テオドールの攻撃の合間にウルガーも地を蹴ってハーゲンティの真上から剣を振り下ろす。
ハーゲンティが片手を上げて剣を防いだ隙を狙って、テオドールも追加の魔法を放つ。
「雷の槍 」
手のひらの上に具現化させた雷の槍を更に放り投げると、バチバチという音を立てながら空間を引き裂いていく。
「今度は槍ですか!」
ウルガーも音に反応して、ハーゲンティから飛びのいて距離を取る。
ハーゲンティーが槍を握りつぶそうとしたところで、パチンと指を弾く。
「巨大化せよ 」
テオドールが紡いだ言葉と共に、槍はハーゲンティの前で突然大きさを変える。
天井に突き刺さりそうなほどに急な巨大化を遂げて、雷が身体へとめり込んでいく。
「グっ――」
「ちょっ! 巻き込まれるって!」
ウルガーが慌ただしくテオドールの方へ走ってきて文句を言っているが、そのうち声も聞こえなくなってくる。
バリバリという轟音と共に槍は膨れ上がり、眩 い光と弾けるような音で包まれていく。
魔法を撃ちこんでいる間に、辺りの様子を探って視線を巡らせる。
「ちょっと、室内でやる? 美しくないわ」
「テオドールが紳士的な戦いをするわけないでしょう? 貴方もさっさと退きなさい。神の雷 !」
聖女も攻撃魔法を使用しているが、神サマの力を借りたということなのだろう。
テオドールの発動に合わせて、フールフールへ白く輝く雷を落とし続ける。
ド派手に輝く雷も悪くないと、テオドールは口元を緩める。
「こちらも行くぞ。――昇天の閃き !」
「え、うわぁぁぁぁ!」
ディートリッヒは両手で大剣の柄をグッと握ると剣気を纏 わせ、小突き合っていたウァラクを天へ舞い上げる。
が、ゼパルが代わりにレイヴンへ突進するのが視界に入る。
「レイヴン!」
「――土の波 !」
テオドールの声より早く、レイヴンは予想していた動きに合わせるように床へ手をついて波打つ土を生み出しゼパルの足を絡めとる。
「ヌゥ」
ゼパルがバランスを崩したところで、レイヴンが大剣を振り上げていたディートリッヒへ風を飛ばし更に剣へ纏わせる。
ウァラクはバランスを崩したまま、計算されたようにゼパルの近くへ落ちてくる。
「なんて乱暴なんだっ! このっ」
ウァラクは反撃で乗っている竜に炎を吐かせるが、それより早くディートリッヒが大剣を斜めに振るって炎を逆流させる。
「あちちっ!」
「グヌ」
バタバタしている合間にゼパルが体勢を立て直すが……遅い。
ディートリッヒは戦闘中に限り、動きが洗練されているのだ。
敵の隙は見逃さず、トドメを刺しに行く。
「疾風 !」
ディートリッヒが素早く大剣を縦と横に振るい、ウァラクとゼパルを風の刃で切り裂く。
ウァラクの身体は切り裂かれ落下し、ゼパルは片膝をつき鎧にヒビが入っていく。
「――放電 !」
「ッ!」
レイヴンがゼパルのヒビを狙うように、ゼパルの鎧へ雷を這 わせる。
感電するのかは分からないが、小刻みに震えているようだ。
「師匠!」
「さて、コッチはどんな具合だ?」
辺りを照らしていた雷の槍が少しずつ収縮して消えていく。
中には槍を受け止めようとしたハーゲンティがパリパリという電撃の名残と共に立ち尽くしていた。
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