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255.耐えられなくて※

   レイヴンは毛布の中に顔を埋めながら、手で自身を取り出して必死に慰めはじめる。  テオドールがレイヴンに触れていたやり方を思い出しながら、最初は優しく撫でるように触れてその後に少しずつ刺激を強くしていく。 「んんっ……あ……ふ……」  必死にテオドールの顔と声を思い出す。からかうような声色にいつもレイヴンへの愛しさが混じっていた。  いつも腹が立つと思っていても、テオドールがレイヴンを呼んでくれる声が好きだった。  はあはあと荒い息が薄暗い部屋で漏れる。とても恥ずかしいことをしている自覚はあるのに、色々な感情が入り混じって自分を止められない。  くちゅくちゅと粘着質な音が聞こえ始めたところで、欲望の先をぐりっといじる。  身体は自然と跳ねて、軽く達したことが分かった。 「ん……これじゃ、足りない……」  レイヴンはぼんやりとする頭で下着を下ろしていき、後ろにも手を回す。  今度は自身をいじりながら、後孔にも指をつぷりと挿入する。 「んぁっ!」  自分の甘い声が聞こえ、嫌悪感と恍惚感の合間で揺れ動く。  レイヴンがいくら反応したところで、側にいるはずの人はいないのに……手の動きは止まってくれない。  必死に香りだけを頼りに、前と後ろの両方を弄っていく。  いつからこんな(みだ)らな身体になってしまったのか……全てテオドールのせいなのに、今は文句を言っても返ってこない。 「んんっ、ぁ……ひぅんっ!」  自分が感じるところに指が(かす)めると、またビクビクと身体が跳ねた。  ただ、レイヴンの手と指では一番イイところに触れることはできない。  テオドールの大きな手じゃないと、満足できないことが分かってしまった。 「うぅ……っ……ぁう……」  切なさと熱さが入り混じり、涙が流れてきた。  自分を必死で慰めている姿が情けなくて、心の中がぐちゃぐちゃなのに……テオドールに会いたくてたまらない。  どうして、側にいないんだろう?  どうして、どうして―― 「テオ……テオ……」  何度も名前を呼んでも、テオドールはレイヴンの目の前に現れてはくれない。  レイヴンは悲しさを紛らわせるように必死になって手と指を動かし、自分を追い込んでいく。   「ぁ……っくう……っ!」  力を込めて自身を握りしめ、後ろから同時に刺激を加えることで何とかもう一度達することができた。  少しの間は解放感とふわふわとした高揚感に包まれていたが、ふと我に返る。  べっとりとした自分の手を眺めると、レイヴンは嫌悪感と罪悪感で心の中がいっぱいになってきてどんどんと気分が落ちてしまう。 「何、してんだろ……」  ベッドの上でごろりと転がり天井をぼんやりと眺めた。  テオドールだったら、すぐに身体もキレイにしてくれたのだろうが……今はそんな気にもなれなかった。  +++  暫くの間呆けてから、さすがにこのままでいる訳にもいかないので必死に片づける。  テオドールの部屋のシャワーを浴びてから、適当に服も借りてしまおうと引き出しから白のシャツを引っ張りだした。 「あ……」  服にも残り香が残っているせいで、また自分の身体が反応しそうになる。  今度は欲望を振り払い、自慰の始末をして整えたベッドへ改めて転がった。 「どれもこれも全部……テオのせいだから。俺のことをこんな風にした責任とれっての。このバカ師匠っ!」  今度はテオドールに対しての怒りがこみあげてくる。  ガバリと起き上がり、ベッドの上の枕をひっつかんで部屋の床へ叩きつけた。  自分でも情緒不安定なことは理解しているが、テオドールのせいにでもしておかないと気が済まない。 「え……何、これ……」  床に落ちた枕を拾い上げて元に戻そうとすると、枕の置いてあった場所に封筒が置いてあることに気づいた。  なんでこんなところに手紙が? 「しかも、俺宛て?」  相変わらずの癖字だが、これも間違いなくテオドールの字だ。レイヴンへと書かれている。  レイヴンはベッドの上に座り込むと、封筒を丁寧に開けて手紙を取り出した。

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