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279.聞き込み開始
レイヴンはウルガーと一緒に街の出入り口に立っている兵士の側へ近づく。
すると、兵士がレイヴンたちを見て話しかけてきた。
ウルガーは旅の剣士風の上下軽装の服、レイヴンはフード付きの旅人用フードだけ身につけた同じく軽装だ。
二人ともシャツとパンツとブーツ姿は共通している。
ベルトにレイヴンは薬類とドワーフの隠れ里でもらったナイフを、ウルガーは腰に同じくドワーフの隠れ里でもらった剣をぶら下げている。
ウルガーが元々持っていた剣は、ウルガーが肩に背負っている大きな布袋の中に鎧と共に入れた。
「旅人か? 許可証の提示を」
「はい、こちらです」
ウルガーと一緒に許可証を見せる。陛下が用意したものなので何の問題もなく町の中へ入ることができた。
町の中は様々な人が行き交う、活気のある港町だ。
白を基調としたレンガ造りの建物が目立つ。海が近いせいか、潮の香りが鼻をくすぐる。
「海は初めてみたけど、書物で読んだ潮の香りも体験できて嬉しいよ」
「アレーシュは内陸にあるから、川はあっても海はないもんな。俺も海は初めてだ」
二人で早速海を見ようと、港を高台から見下ろしてみる。
船が何隻も停泊していて、船員たちが積み荷を載せながら忙しなく動いている。
「ここまではいいんだけど、ここからギルディアまでの行き方がなー。船に乗るのは確定で、日数も大体分かってる。ただ、直接ギルディアまで行ける船があるのかは分からないんだよな」
「ここから行けるのは間違いないけど、必ず直行する船があるとは限らないってこと?」
「ああ。どこかを経由して目指す可能性もあるんだよな。直行してくれれば楽なんだけど……」
「それは聞いてみるしかなさそうだ。そうと決まれば、明るいうちに行こう」
レイヴンが進みだすと、ウルガーも荷物を背負い直して了解と言いながらついてきてくれた。
+++
港で聞き込みを行った結果、今はギルディアに直行する船がないらしい。
元々数が少ないし、暫く待たないと船が戻ってこないと言われてしまった。
「急いでるんなら、多少危険はあるがナクティサへ行くといい。ナクティサならギルディアへ向かう船がいくつもあるはずだ」
「ナクティサ……そこはどんなところなんです?」
「娯楽と夜の街ナクティサ。一攫千金を狙う金持ちや、海賊もいるって噂だ。治安が良くないのが難点だが、その分船乗りが多いから多少の無茶もできるってもんだ」
「ナクティサか……急ぐ身としてはありがたいけど……ウルガー、どうする?」
親切な船乗りからの情報だし、間違いはなさそうだが……色々と巻き込まれる可能性もある。
レイヴンがウルガーと一緒に悩んでいると、船乗りがカラカラと笑い飛ばす。
「ま、腕に自信があるのなら問題ないさ。女子供にゃ勧めないが、あんたら旅人と言っても訳アリみたいだしな。急ぐなら、ここで待つよりナクティサへ行くのを勧めるね」
「なるほど。面倒ごとに巻き込まれても返り討ちにできればいいってことだろ。じゃあ、ナクティサを目指しますか」
「だね。一番は巻き込まれないように対処するってことだけど」
「お、屈強な感じはしないが度胸はあるみたいだな。だったら、あっちの船に乗るといい。明日には出ちまうから行くなら急いだほうがいいぜ」
船乗りが指さした方向には、白い帆の張られた船が停泊していた。
そこそこの大きさはあるので、二十人くらいは余裕で乗れそうだ。
「じゃあ、食料を買い足して宿へ泊まったら朝一で乗るとするか」
「だね。まずはあの船に乗れるかどうか聞いてこないと」
方針は無事に決まった。船乗りにお礼を言って別れ、教えてもらった船へ向かい定員は埋まっていないか聞いてみるとまだ空きはあるから大丈夫だと言われた。
ただ、ナクティサで降りると告げると身の安全は保障しないと返されてしまった。
正直、人間相手だったらレイヴンとウルガーで大抵は何とかなるだろう。
自分たちは魔族とだって渡り合えたんだから、多少は自信を持ってもいいはずだとレイヴンもウルガーと顔見合わせ頷いた。
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