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翌日、どうやら夕飯で起こされたことすら気づかず朝まで睡眠を貪ってしまった俺は、朝風呂に入り、時雨とどんな顔して会えばいいかわからず重い足取りで学校へと向かった。 学校に着いたが、隣の席はまだきていなかった、時雨はいつも遅刻ギリギリだ。予鈴と同時に入ってくる。 時雨がきたら、なんて声をかけようか考えながら席についた。 しかし、今日は予鈴がなっても時雨はやってこなかった。 担任が入ってきて、出席を取り始めたが、「阿保は休みか?お前なんか聞いてないか?」と俺に振ってきたくらいなので、どうやら学校側にもなんの連絡もないらしい。 …帰りは元気そうだったが、家に帰ってから体調崩しでもしたのだろうか。 スマホはよくわからねーと日頃から言っており、メッセージなど送っても返ってくることの方が少ないが、念のため送ってみた。 しかし、放課後まで返事どころか、既読もつかなかったため、担任から今日配布されたプリントを届けるという大義名分のもと、何度か訪れたことのある時雨の家へと向かった。 時雨の家は古いアパートの二階にある。両親は中学生の頃に離婚をしており、母親と二人暮らしをしているらしい。その母親も時雨を食わせてやるために朝から夜まで働いていると前に聞いたことがあった。 ギコギコと今にも壊れそうな階段を上り1番奥にある部屋のインターホンを押した。カメラもついてなければスピーカーもついていない本当にボタンだけの簡単なものだ。 ビーーーと音が鳴り響くのが聞こえたが、中からはなんの反応もない。もう一度鳴らしてみたが結果は同じだった。 仕方なく、ドンドンと扉をたたき、時雨の名前を呼んでみたが返事は返ってこない。 「留守か…?」 学校にも来ねえのにどこ行ったんだと考えつつ、最後にと電話を鳴らした。すると、中から着信音が聞こえた来た。どうやら家に居るらしい。何度かコールが鳴ったあと、やっと、その主は電話に出た。 『あい、もしもし…』 寝ていたのかくぐもった声が聞こえたきた。 「時雨か?俺だけど、今お前んちの目の前なんだけど、出てこれるか?」 『あー?ミリぃ?んー…ちっと待ってて』 いつも以上にやる気のない間延びした喋り方のあと、電話が切られ、パタパタと音がしガチャリと玄関が開いた。 「はよ…なんかあった??」 ボサボサの髪の毛に、スエット姿の時雨が中から出てきて、首を傾げている。そういえば昨日は髪の毛も乾かさないで、帰っていった気がする。 「はよ…って、もう夕方だけどな…なんか、つか、学校にもこねえし、メッセージもかえてこねえし、既読もつかねえから、なんかあったのかと…」 「心配になっちゃった感じぃ?」 「そりゃ、昨日あんなことしちまったあとだし、心配にもなるだろうが…」 昨日のことはあまり話題にしたくなかったため、目を逸らしながら小声で言ったせいか、時雨には聞こえてなそうだった。ヘラヘラとこちらをみている…。 「おい、お前、顔赤くないか?」 「んー…?今日鏡見てねえから知らねー…言われてみたらダリィ気もすっけど、寝過ぎたせいじゃね?」 最初は寝起きでポヤポヤしてるのかと思ったが、よくよく見てみると顔全体が赤く、目がとろんとしている…。 「熱とかあるんじゃねーか?とりあえず中入れ、俺も入っていいか?」 もしこれで熱があったらやはり昨日の俺の行いのせいだろうと、俺は焦った。 「へーきだと思うけどな…まぁ、散らかってるけどどーぞ」 ボリボリと腹をかきながら中へ引っ込んでいく、その後ろを追うようにして、時雨の家へと入った。 追うようにしてと言ってもそんなに広い家ではないのですぐに時雨の部屋へと入り、引き戸を閉めた。四畳くらいしかない狭い部屋にベッドが置かれており、時雨はそこに腰を下ろした。 「体温計とかあるか?」 「えー…しらねー、見たことないかも、寝てりゃ治るっしょ」 身体がだるいのか言いながらベッドに横になった。 「なんか、辛いとことかねえ?」 「んー…んー…………」 枕に顔をうずめた時雨がチラリとこちらに目をやり何か言いたげにしている。 「頭いてえとか?それとも腹か?あんまひどいようなら救急車呼ぶけど…」 「ビョーインなんかムリ……」 病院嫌いなのか?と思ったところで、続けて時雨が告げてきた。 「ミリがぁ、昨日ぶっ刺したとこぉ…ヒリヒリする…」 それだけ言うとプイとまた枕へ顔をうずめてしまった。 俺はというとベットサイドにしゃがみ込み、様子を窺っていたが思わず固まってしまった。いや、そのせいかもと思いながら来たし、ある程度予想もしていたが…。 確かに、同級生に無理矢理突っ込まれてケツが痛いとはいくら時雨でも病院では言いたくないのだろう。 「……本当悪い…、一応軟膏とか、熱にも効くらしい薬とか買ってきたけど…」 「んー…」 時雨がどんどん気怠げになっていき、声をかけても反応が鈍い。熱が上がってきたか…? 「俺が塗ってやっても、いいけど、お前触られたくないだろ?」 「…わかんない…なんでもいー…」 なんでもよくないだろ…と思ったが病人相手に張り合うのも大人気ないとその言葉は飲み込んだ。 「あとで正気に戻って怒ったりすんなよな…」 「あーい…」

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