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次の日、時雨はいつもどおり遅刻ギリギリ登校し、
出席を取られるや否や、寝始め、昼だけ起きて、その後はまた放課後まで寝ていた。どんだけ寝るんだ?とは思ったが、昼はたくさん食べて他の奴らとゲラゲラ笑いながらチャンバラをしていたので、どうやら全回復しているようだった。
帰りのHRが終わった後、時雨の肩をゆすって起こしてやり、学校を後にした。
「あー、つかれたなー」
学校に来てずっと寝ていたやつがなんか言っている。
お前がつかれてたら授業をまともに受けた俺はもっと疲れている。
「ミリ、今日バイト?」
「あー、そうだな、今日はこのままバ先行く予定、なんかあったか?」
「んや、なんもねえ。バ先あっちだっけ?」
「ああ、じゃ、ここで」
昨日もなんだかんだ時雨の尻を触ってしまったこともあり、今日も気まずい気持ちを抱えて登校したが、当の本人がいつも通りだったので、こちらも気まずさを態度に出さず、普段どおりに接することができた。
バイト先に向かうために別れをつげ、時雨に背を向けた。
少し行ったところで何気なく後ろを振り返ると、時雨がまだ手を振っていた。
なんだアイツ可愛いな…と浮かんだところでブンブンと頭を振った。勢い余ってセックスしてしまったが、俺の恋愛対象は女だ…。この前ヤッてしまったのはアイツのケツが歴代彼女よりエロかっただけで、男に欲情したわけではなかった…。そうだ、絶対そう。同性をかわいいと思うなんて何かの間違いだ。と誰に聞かれたわけでもないのに必死に言い訳を考え、時雨に軽く手を振り返してから、俺はさっき思い浮かんでしまったことをかき消そうと駆け足でバイト先へとむかった。
バイト先はそこそこ賑わっているカフェバーで、今日も客の出入りが激しかったため、その後は時雨のことを思い出すこともなく瞬く間に時間が過ぎた。
「お先失礼します」
バイト先の制服から学校の制服へと着替えをすませ、スタッフに声をかけてから裏口を開けると扉に何かが当たった。
誰かが扉の付近にビールのラックでも置いたのかと覗くと、そこには誰かがうずくまっていた。ここら辺は飲み屋が多いので酔っ払いがココで力尽きたのだろうか、ここで放置して翌日冷たくなっていた。なんて次の日ニュースになられたら夢見が悪い。
「あのー…、大丈夫すか?必要であれば水くらいなら持ってきますケド…」
絡んでくるタイプじゃないといいなと思いながら仕方なく声をかけるやいなや、ガバリと顔が上がった。
「え」
そこにはつい何時間まえかに別れたばかりのよく見知った金髪頭の友人の顔があった。
「ミリのせいで1人でイけなくなったぁぁぁ!!!」
そして俺と目が合うなりとんでもないことを叫ばれた。とっさに開けっぱなしにしていた裏口を閉め、時雨の口を手で塞いだ。
「ちょっ、まっ!お前何大声で変なこと言ってんだ!」
抑えてる間もむーむーと何か言っている。
「落ち着け、な?ちゃんと聞くから…ここでは頼むからやめて、わかったか??」
大きく頷いたので、手を離してやると、プハッと息を吐いた時雨はいきなり俺の手首を掴んで大股に歩き始めた。
「おい!どこ行くんだよっ!」
時雨は何も答えず、人の腕をすごい力で引っ張りながらズンズンと突き進んでいく、これは何を言っても無駄そうだとため息をつき、黙ってついていくことにした。
「おい、時雨ここって」
「ラブホ!エロいことすんならここなんだろ!」
「エロ…いや、そうなんだけど、なんで俺とお前で…」
あの日の出来事はなかったことにしなければと思っていたに、何を言い出すんだこいつは…。
「お前んせいでオナニーでイけなかったから責任取れって言ってんの!!」
「え、えぇ…」
情けない声が出てしまった。ケツがヒリヒリするだのなんだの言っていたばかりなのに…。
コイツは1人でするとき後ろをいじるのが当たり前だと思っていたようなやつだ、きっと今日も触ったに違いない。まだ、昨日見た腫れだってひいてるかどうかわかんないうちからヤるか普通……普通じゃなくて、アホの子だからか…?
「もー!早く!はいるぞ!」
困惑して固まっているとまた時雨に手を引っ張られた。
制服のままだった俺は慌ててネクタイを取って、鞄に仕舞い込んだ、それでも未成年にしか見えないとは思ったが、どこの学校かバレることくらいは防げるだろうと思っての咄嗟の行動だった。
連れられて中に入ると、幸か不幸か受付は無人のホテルだった。
時雨は初めてくる空間が珍しいのかキョロキョロとフロントを見回している。
「さっさと部屋決めてくれ…他に人きたら気まずいから」
ここまで来てしまったからには早く部屋に入りたい…。とりあえずゆっくり話をさせて欲しい。とせかしたが、色々な部屋が映し出されたパネルを今日興味津々に眺めていて、俺の声が耳に入っていないようだ。
思わずため息をついてしまったが、とりあえずこの場を離れようと、俺はろくに画面も見ずに部屋を選び、時雨の腕を引っ張り、目印がわりにランプが点灯しているであろう部屋を探した。
なぜ、フロントに入ってきた時と立場が逆転しているんだろうか、バイト終わりから全然休まる暇がなく、俺も多少パニックになっているのかもしれない。なぜ、部屋を選んでしまったのか、逆方向に引っ張れば外に出れたのに…なんてまとまらない頭で考えているうちに、ランプのついてる部屋の前へときてしまった。そこまで来ると腕を掴まれ後ろを大人しくついて来ていた時雨が俺の手を振り解き、「この部屋??」と声を弾ませながら扉を開け中へ入っていた。俺もその後に続き扉を閉めた。
「なァ…この部屋お前の趣味?」
さて、これからどうするべきなのかと俯きながら部屋の中進むと、時雨が信じられないと言外ににじませながら言ってきた。
顔を上げると、その部屋はどぎついピンクに壁に囲まれ、天蓋付きのデカイベッドに、そこら中にハートのクッションが置かていて、ファンシーな雰囲気なのに、よくよく見るとベッドには拘束具のようなものがついており、さらに壁にも人を張り付けられるような器具がついていた。天井は鏡ばりだ。天蓋ベッドなのに。
「いやいやいや、んなわけねえだろ!」
もとを辿れば、さっさと部屋を選ばなかったこいつが悪いのだ。
「ふーん…」
疑いの眼差しを向けられたが、時雨は秒でこの部屋についてはどうでも良くなったみたいだった。
「そんなことより!!俺の話だ!どーしてくれんだよ!」
バイト先で一回、ラブホの前で一回言っていたあの話へと話題は戻された。
「どーしろって言ったて……。お前はどうして欲しいわけ?また尻に指突っ込めばいいのか?それとももっと太いやつ?あんなに泣いてたのに?」
早口で捲し立てるように言ってしまった。もし、本当に1人でイけないのであれば、たしかに俺のせいなのかもしれないので、もっと冷静に話を聞いてやるべきと頭ではわかっていたが、学校にバイトにそしてこの怒涛の流れに疲れていたのか、そうはできなかった。
「そ、そんなん言われても俺だって、わかんないし!俺はとにかくまたイけるようになりてーの!どうするかはお前が考えんの!」
俺の剣幕がよっぽどだったのか、時雨は後退りながらわーわと喚いていた。本当にどうにかしろ思う一心できたようでノープランなことが伺えた。
「俺が考えていいなら、こないだみたいにするけど…。あとで絶対文句言うなよ?」
いくら反省していようと、思春期真っ盛りの高校だ、相手がいいと言うのなら、もう一度アソコに突っ込みたい。
「い、挿れんのはなし…アレ、怖えもん、手、手だけ!貸して!!」
「俺なんもいいことなくね?」
「ミリはこの前悪いことしたから良いことなんてあるわけないの!」
それを言われてしまうと弱い。仕方ない。俺は手だけで我慢しよう。…ってか、また男に触れるのはいいのか?変態カテキョがついていたせいでそこらへんは気にならないのだろうか。線引きがよくわかんねえな…。
「はぁ、わかった…。もう時間ももったいねえし、さっさとベッドに上がって下脱げ」
もうこれ以上何か言うのも疲れた俺は、さっさとこの時間を終わらせようと思った。
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