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第13話

黒髪に染めていたヘアスプレーを落としていたから、思ったよりも時間がかかってしまった。 どうせ脱ぐし全裸でいいかと思ったが、相手はノンケ。 いつどのタイミングで萎えるか分からないから、慎重にならざるをえない。 ―――あー、マジで面倒だわ。 風呂から出ると、待ちきれなかった様子の進藤に勢いよくハグされる。 火照った背中を忙しなくペタペタと撫でると、額に触れるだけのキスをされた。 「キスいい?」 もっとすごいことを提案してきたくせに、しっかりと確認をとるところがこいつらしい。 「この前清水としたから、口直しにちょうどいい。」 「いや、リアルでしてるやん。なんで清水チョイス?」 「ただの嫌がらせ。」 「胡蝶がしたら嫌がらせにならんでしょ?」 「普通にキレてたよ?」 「今野が怖いのめっちゃわかるわ。」 「はあ?」 啄むようなキスをされて、くすぐったくて下唇を引っ張る。 「舌だせよ。ヤる気あんの?」 俺の言葉に僅かに笑うと、薄めの舌を遠慮がちに絡めてきた。 上顎をなぞると、舌先を噛まれて優しく吸われる。 歯裏をなぞられ、俺と同じように上顎を執拗に攻めてくる。 女子にするような優しいキスと酸欠で、膝が震えた。 「脱がしていい?」 ベッドに腰かける進藤の膝を跨ぐと、羞恥心を煽るようにゆっくりと脱がされる。 上半身を全部剥がされたところで、胸の飾りの感触を確かめるように指先で縁どられる。 「てか、お前は脱がないの?」 「あー、こっちの方が犯してる感あって興奮するから。」 「マジで変態じゃん。」 俺のドン引きに軽く笑うと、指で弾いていた乳首を甘噛みされる。 舌で転がされて、歯をたてて軽く吸われる。 甘い疼きに柔らかかったそこが小さく尖り、息を吹きかけながら舌先でまた転がされる。 「きもちい?」 「んな大事に抱かなくていいよ。」 「かわいい。」 すぐに突っ込まれるとか、もっと乱暴に扱われることを予想していたのに……。 恋人にするような甘く溶かすような声を耳元で囁きながら、丹念に撫でまわす。 耳たぶを唇で引っ張りながら、濡れた下着も脱がされた。 目の前に俺の屹立したモノを見ても、進藤は先ほどよりも甘いキスをくれる。 「きもちい。」 俺の独り言に微笑みながら、顔中に優しいキスを落とす。 零れた先端を指ですくい、根元からゆっくりと擦りあげる。 溢れる敏感な先端を親指で虐められて、息と一緒に声が漏れた。 「俺も触っていい?」 俺の言葉に思い出したように、自らベルトを緩めてチャックを下ろす。 俺に見られていても、俺のを触っていても、進藤の股間は萎える様子がないことに安堵した。 しっかり熱くなっているそこを軽く扱くと、半開きの唇のまま噛みつかれる。 ノンケでも、ちゃんと興奮してる。 それがなんだか不思議で進藤を見つめると、照れくさそうに笑われた。 「わり。男としたことない。」 「ゴムとローション持ってきたから。」 「胡蝶もつける?」 「汚しそうだし。」 「マーキングしてくれていいのに。」 「マジでキモい。」 恥ずかしさを隠すように冗談を挟みながら、2人でゴムをつけ合う。 「ヤバ。胡蝶が生々しい。」 「ん……っはぁ。」 「やらしい顔。」 「うる、せ。」 いつもカップラーメンの待ち時間よりも短い愛撫しか、経験がない。 だからなのか、身体の奥の奥が砂風呂に浸かっているかのように、じんわり熱い。 肩で息をしながら逞しい首に腕を回しキスを強請ると、進藤は欲しいだけくれる。 甘やかされているようで、全身がくすぐったい。 「後ろどうすんの?」 「え?あ……ローション仕込んできた。」 「すげえエッチじゃん。」 「指でナカぐりぐりして。」 「了解。痛くない?」 久しぶりに使うそこをゆっくりと丁寧に解す指に堪らなくなって、頭にしがみつく。 痛くないか何度も聞きながら、ゆっくりと指先がナカを往復する。 ―――ヤバい。俺の方が慣れてるはずなのに……。 優しすぎる指先に、進藤の腹に自分のモノを擦り付ける。 服が汚れることなんてお構いなしに腰を押し付けると、咎めるように扱かれた。 自分から進藤の唇を覆うと、舌を根元まで吸われる。 これがどこから湧きたつ快感なのか、頭ではもう追いつかない。 「もういいから、早く。」 「でも、まだ狭くね?」 「大丈夫。」 膝立ちになり、進藤に身体を支えられながらゆっくりと腰を下ろす。 いつもはジンジンと痛むだけのソコが、進藤のモノをぱっくりと銜えこむ。 ―――なんか、身体が変だ。 「萎えてない?」 「胡蝶の裸見てんだから、ずっと完勃ちよ。」 「くくっ。変態でよかったわ。」 「笑うなって。振動でイきそう。ケツ圧すげぇわ。きもちい。」 「早漏笑うわ。」 額に張り付いた髪をかきあげられて、顔を覗き込まれる。 「なあ、動いていい?」 「あっ!あっ…ぅん!!あ!」 ―――やば、すぐイきそ。 そう思った瞬間にはもう果てていて、いつもよりも長い射精間に身体が震える。 「イき顔やば。かわいい。」 「ちょ、進藤イってるから!やっ……だ!あ、うごかないでぇ!!」 「俺まだイってない。」 「んっ……!ふ、あぁっ!!んあぁ!」 いつの間にかベッドに転がされて、肩を押さえつけられ奥まで貫かれる。 頬に進藤の汗が垂れてきて、今まで見たことのないような欲に満ちた顔の進藤に微笑まれる。 「太もも痙攣するのエロいな。バックでもう一回しよ?」 挿れたままうつ伏せに転がすと、隙間なく抱きしめられた。 息苦しさはなく、満ち足りた不思議な感覚に、耳が熱くなる。 耳元で感じる息の荒さに、興奮していたのは俺だけではないことに安堵して。 一度も抜かれることなくムクムクと熱を取り戻す進藤のモノに、全身が粟立つ。 あまりにも気持ちよすぎて、憎まれ口でも言ってないと嬌声ばかり漏れてしまう。 「元気すぎ。」 「胡蝶がエロいのが悪い。」 *** 「きもちかった。」 「最後ぶっかけやがって、背中ドロドロじゃん。ゴムの意味ねえ。」 「ごめんて。綺麗過ぎて汚したくなった。てか胡蝶の精液もたっぷり。」 使用済みのゴムを指で突っつくと、愛おしそうにキスをした。 「げ。マジで捨てろ。」 「まじかわいかったわ。もう結婚しよ?」 「謹んでお断りします。」 終わった後の気まずさと気恥しさを隠すように、秒で服を整える。 進藤は俺のことをちらりと見ると、最初と同じように額にキスしてきた。 「順番狂ったけど、真面目に付き合わね?」 「え?」 「ダメ?」 ―――真面目に……とは? 今まで不真面目なセックスしか経験がなく、付き合うというワードに違和感しかない。 性経験しかなく、恋愛ド素人の俺に真面目なお付き合いは敷居が高い。 「セックスはいいけど。」 「デートも楽しくさせるよ?」 「いや、咲との時間なくなるじゃん。ただでさえクラス違うのに。」 「まーた今野かよ。あれのどこがいいの?」 「強いて言うなら存在?」 「全肯定ウケる。セックスはいいの?」 「お前うまいし、過去1だったわ。」 「それすげえ嬉しい。」 いつもの媚びた笑顔ではなく、少年のような笑みで苦しいくらいに抱き付かれた。 トクトクと鳴る進藤の心臓の熱が、俺に伝染する。 ―――いつもこういう顔してればいいのに……。 「うち母親常にいるから、進藤の家でなら。」 「オケ。連絡先交換しよ。」 「てかいいの?」 「何が?」 「あんたモテるじゃん。わざわざ俺じゃなくてよくない?」 「全然伝わってない感じ?」 「なにが?」 「いや、もうわかったわ。」 「そういえば、新宿で何してたの?」 「あー、靴買いに行ったの忘れてた。胡蝶とセックスできると思ったら、それどころじゃなくね?」 「頭のストレージ無駄なこと溜めすぎ。」 「マジでめっちゃかわいかった。」 「知ってる。」 「なー、もう1回したい。今ならすぐ挿るだろ?」 ズボンの隙間から手を滑らせると、先ほどまで濡れていたそこに中指を突っ込んできた。 「無理だって!うち小学生並に厳しいのよ。」 「送ってくわ。家どこだっけ?」 「いらない。咲に会うと困る。」 「でも声かけとかウザいっしょ?」 「じゃあ駅まで。」 「おけ。」 手早く身支度を整える進藤を見ながら、今までの経験が嘘のように心が痺れる。 ケツの中に違和感はあっても、不快感は残らない。 ただ満たされた心に、違和感は残った。 ―――こいつ、マジで巧いわ。

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