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第28話

望海 視線に気がついて顔を上げると、珍しい2人組が俺を見ていた。 始業式の日には取っ組み合いの喧嘩しそうな雰囲気だったのに、最近ちょこちょこ喋っている気がする。 最近の清水は憎まれ口もなければ、絡んでくることもない。 ただよく目が合うから、完全に飽きたわけではなさそうだ。 進藤が俺の視線に気がつくと、笑みを濃くしながら手で追い払われる。 それでも、俺のことを嫌っている清水絡みだから、無視するわけにはいかない。 進藤も推薦あるはずなのに…… どいつもこいつも手がかかって、腹が立つ。 「何してんの?」 俺が声をかけると驚くほど穏やかな雰囲気に、首を傾げた。 ―――喧嘩ではない感じ? 「恋バナ。」 つまんない嘘を真顔で捏造する進藤に、清水は嫌そうに顔を顰める。 「進藤呼ばれてた。チーム入らないからみんなキレてる。」 「人気者はつらいっさー。」 勝手にサボってたくせに、急ぐ気は全くないようだ。 「遅い」と声をかけるメンバーを片手でいなし、輪に入る。 バスケ部なだけあって、一人だけ段違いに動きがいい。 部活も真面目に参加すればいいのにと思いながら、清水の隣に腰をかけた。 「俺から進藤に乗り換えたん?ストライクゾーン広いんだね。」 「は?」 「俺には飽きちゃった?」 「最初から興味ねえ。」 「照れんなよ。熱いキス交わした仲じゃん。」 「お前が勝手に!」 そう言いながら、熱くなる清水の腕に肘が軽く触れる。 それだけで嘘のように縮こまる清水に、肩透かしをくらった。 「遊ぶなら俺にしときな?」 「はあ?」 「進藤は推薦組。俺は暇だからいつでも遊べるよ?」 「勉強しろよ。受験だろ?」 「咲も推薦組。邪魔したらマジで潰すから。」 「何もしねえよ。」 大人しすぎて、弄りがいもない。 もっといつもみたいに突っかかってくると思ったのに、あまりにも違い過ぎて反応に困る。 牽制をかけるつもりで来たのに、俺がただ虐めているだけの気がしてきた。 「最近いい子じゃね?ヨシヨシしたげようか?」 「キッショ。」 「勃ってたくせに?」 「捏造すんな。」 「気持ちよかった?」 俺がそういうと、狼狽したのか背中から思い切りずっこけた。 座りながらこけるなんて器用だなと思いながら、仕方なく清水の腕を引っ張る。 すると俺の腕を振り払い、ゴンという低い音を鳴らして床に頭をぶつけた。 「いやいや、マジで大丈夫?」 「何……言って?」 ―――こいつ、かわいいじゃん。今なら全然抱けるわ。 きょどりながら赤くなる清水に、もう敵意の感情はなさそうだ。 おかしくて笑いながら膝の上に乗っかると、驚きながら硬直する。 しかも、硬直したのは身体だけでない。 尻の間にあるモノが膨らんでいくことに気がついて、久しぶりのその感覚に脳が痺れる。 ―――このくらいで勃つの?マジでガキじゃん。 同年代の男なのにひどく幼く思えて、もっと揶揄いたくなる。 「忘れちゃったなら、もう一回する?今度は舌入れてあげよっか?」 「え。」 首に腕を巻きつけながら舌を見せると、俺たちがいる壁の傍にボールが思い切りぶつけられた。 「胡蝶くん、セクハラでーす!今野先生にチクるから~~~!」 振り返ると進藤が呆れた顔で見つめていて、仕方なく立ち上がった。 「えー、おこなん?」 「めっちゃおこ。」 「咲、怒ると怖いんだよ。」 「それはすげえわかる。」 「清水、反応薄くてつまんねえわ。振られた。」 「受験あるし、ギリギリなんじゃね?」 「頭悪いってかわいそーね。」 「お前はいい加減にしなさいよ。」 「最終学歴中卒はさすがにエグいから、牽制かけといた。感謝しな?」 「マジで俺らのこと舐めすぎな?」 進藤と並んで歩きながら振り返ると、清水が股間を抑えて蹲っている。 清水に向かってウインクをすると、転がっていたボールを投げ飛ばされた。 ―――照れちゃって、かっわいい。

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