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第33話

「めっちゃ狭かった。ほぼ電車の座席。」 「マジか。」 のぞがほかほかに火照った顔で、脱衣所から顔を出した。 ―――めっちゃめちゃかわちい。 俺もちゃっちゃと浴びようとテレビを消して、脱衣所に向かう。 すると、まだ着替えが済んでいなかったのぞに気がつき、思い切り身体を仰け反る。 「あー、わり。」 「何?大丈夫だよ。パンツはいてる。」 ―――いやいやいやいや、それ全然大丈夫じゃない。 「服、着て。」 「まだ暑いからドライヤーしてから。」 「着なさい。」 手に持っていたタオルで身体ごと覆い隠し、着替えを胸に押し付けた。 タオルの隙間からちらちら見える乳首やパンツに、目の行き場がない。 「え、照れてんの?かわいい。」 「かわいくないから。マジですぐに着て?誰か戻って来たら困るから。」 そもそも一番危険な俺がのぞの傍にいることも、絶対に忘れないでほしい。 完全に安牌扱いされていて、何をしてもこいつは大丈夫だろうと思われている節がある。 こっちはギリギリどころか、ちょいはみ出してさえいるのに。 「はいはい。心配しすぎで禿げたら困るもんな?」 「んじゃ俺も行ってくる。」 「俺も見張ってる。」 「いらんわ。てかちゃんと髪乾かせよ。風邪ひく。」 「ここで脱ぐ?」 「気にせんで。」 「わかった。」 のぞがようやくハーパンを身に着けたのを確認して、俺もシャツを脱いでベルトに手をかける。 すると、鏡越しに目が合った。 「え、ちょ脱ぐなら脱ぐって言えよ!!」 「なんで?」 「も~~~~!!」 そう言いながら、俺がいたテレビの場所まで逃げていく。 ―――いやいや、その格好で他の奴来たら無理過ぎる! 「いや、だから服着ろ!で、髪乾かせって!風邪ひくだろ?」 「だから後でやるって!」 そう言いながら、膝を立ててしゃがみ込む。 乱れた髪に隠れたのぞの横顔が、風呂あがりよりも染まっている。 「え?なんでのぞが照れてんの?」 「咲がえっちだから。」 「男はみんなえっちじゃん。」 「咲はえっちじゃない!」 ―――は? 「いや、俺も普通にエッチなんすけど?」 当たり前の返しをしたら、のぞが驚いたように俺を見つめる。 でも視線が合うと、すぐに逸らされてしまった。 頬骨から鎖骨辺りまで、ぶわっと熱を帯びていく。 白い肌がどこまで染まっていくのか辿ると、胸の飾りに再び目を奪われた。 ―――マジで、エロすぎる。 「もう、わかったって!風呂入れよ。」 「のぞもえっち?」 「え?はは。な、何……言って?」 「どうなの?」 俺の言葉に耳まで赤くなる初心な姿に、ムクムクと嗜虐心が芽生える。 ―――こいつ、めっちゃかわいいんだけど……。 「そんなの……えっちに決まってんじゃん。」 どんどん声がか細くなり、髪の毛でほとんど顔が見えない。 のぞの髪をかきあげると、困ったような泣きそうな顔で見つめていた。 緑色の瞳がうっすらぼやけて、宝石のように光を取り込み、ゆらゆら煌めいている。 興奮した俺の顔がのぞの瞳の中に映っているのを見つけると、独占欲が支配した。 ―――ずっと、この瞳で俺を見ていてほしい。 「へえ、えっちなんだ?」 「恥っず~~~~!咲から下ネタとか初めて聞いた。」 「のぞは何にムラるの?」 「え?もう……無理!無理っ!聞かない!!」 「何見て抜いてる?」 「は?ぬ、抜くとかいうなし!」 「クラスの奴らと話してんじゃん。」 「咲とはそんな話しない!したくない!!」 「たまにはいいかなって。」 「は……恥ずくて死にそうだから、勘弁して。」 目尻に溜まっていた涙が頬にこぼれ落ち、真っ赤な顔で睨まれた。 ―――マジで、かわいすぎるんだけど。 俺が笑うと、タオルで目を覆われる。 かわいすぎておかしくなりそうで、のぞの顔をタオルで隠した。 「ごめ。かわいすぎて虐めたくなったわ。」 「は?恥ずいことばっか言うな!!もう!!お前は咲じゃない!」 「咲だろ。」 「違う!」 「咲はそんなエッチなこと言わないから!バスケしか好きじゃないって虚無顔で答えるから!バーカ!!」 「はいはい。」 背中を拳で思い切り殴られながら、脱衣所に向かった。

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