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第7話

「遥?」 「なぁ柚葵。今日の配信はここまでにせぇへん?俺、なんか今日、ちょっと気分悪いんやわぁ。」 俺に縋るように寄りかかってくる遥はいつもより弱々しく見えた。その心に冷水を注ぐほど俺は鬼じゃない。 「ごめんな。遥、気づけてなくて。今日はもうここまでにするから休んでもいいぞ。」 「ほんまに堪忍な。ちょっと奥で横になっとくわぁ。リスナーさんにゆうといてや。よろしゅう頼んますって」 最後の最後まで気づかいができるのは褒めたいんだが今は感心しないな。早く休めと言ってやりたい。 「じゃあ、休んでな。俺は配信切り上げてくるから。」 「うん。わかった」 遥が奥に行ったことを確認して配信画面をオンにする。その瞬間ありえない速度でコメントが流れてきたのは恐怖だったな。 「配信画面切っててごめんね。今画面映るようにしたから。」 『おかえり。画面は切れてたけど音声は入ってたよ。』 「あ、マジ?じゃあ、俺の本名ばれちゃうな……。まぁ、いいや。ちょっと遥が体調崩しかけてるから今日の配信終っていい?」 『あ、ホントだ。ハル君いない。お大事に!』 『ハル君によろしく』 「じゃあ、今回の配信はこれにて終了!またご縁があったらお会いしましょう!ばいばーい」 半ば強制的に配信を終了して画面とマイクの接続と電源を切る。あーあ。さっき画面オフにしてた時に俺の名前の音声入っちゃってるかなぁ。あとで再編集したときにピー音入れとこ。 配信が終了して使うことのなかったたこ焼きセット達を片付けに家中を回った。なんで必要物資を俺たちは一か所にまとめようとしないんだ。 ―遥の部屋にて 「遥~?生きてるかぁ?」 「柚葵!われ、どんくさいんか?!」 「はへ?」 遥がいる部屋に入った瞬間、遥に罵倒されたんだが。一体何があったんだ?俺ってばいつもみたいに無自覚でなんかやらかした?! 「なんでお前の大事な人が気分悪い時に放っておくん?!」 片付けをしていただけなのになぜが怒られているんだが。理不尽じゃないか?でも、すぐに行ってやれなくて悪かったとは思ってる。←自覚はある 「いや、片付けしてたんです。好きで遅れたわけじゃないです。」 「じゃあ、柚葵は……っ俺よりたこ焼きプレートの方が大事やゆうんやな!呆れたわ!」 弁解しようとして話した内容が逆に誤解を招いてしまった気がする。どうしていつもこうなるんだ。 「なんも言わんってことは図星ゆうことやろ?」 「違う。ホントに遥の方が大事だって思ってる。」 「じゃあ、なんでもっと早く来てくれんかったん!?俺頑張ったんよ?4時間ぶっ続けでゲームして、リスナーさんに悪く思われへんように必死に笑って。さすがにもう疲れたわ。」 知らなかった。遥が俺の無茶ぶりに体を張って答えていることに。何も気づいてやれなかった。

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