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第8話
「ごめんな、遥。体調悪いのに無理やり配信出させちゃって。」
「……」
俺が謝っても遥は何も言わなかった。俺自身も正直謝っただけで遥が許してくれるとは思っていない。おそらく遥が不満に思っていることはそれとは別なんだろう。
「柚葵。なんで俺が普段から配信に出てんないってゆうてると思う?」
やっと口を開いたと思ったら遥が急に自分が出たくない理由について聞いて来た。俺が思い当たる節としては顔出ししたくないとかコミュ障だからとかしか出てこなかった。
「え、顔を出したくないから?」
「違う。俺が配信に出たくない理由としてはな、柚葵が女性っぽいコメントにいちいち反応して俺にかまってくれんくなるからや。」
「は?」
「なに言うてんのって顔やな。」
「うん。解説を、お願いします。」
どうして遥が俺の読むコメントに嫉妬しているかわからないから本人に聞くしかなかった。
「だって柚葵は俗にいうノンケやろ?せやさかい、男の俺より可愛いええ匂いした女の方が好きなんやって俺が勝手に思い込んでまうからや。そんな思考はいけへんってわかっとるんやけどなぁ」
言い終わった後に苦笑して切なそうに瞳を伏せた。俺は遥にそんな顔してほしいんじゃない。
「引いたか?」
「引いたというか……ちょっとびっくりしてる。」
「やっぱりなぁ。めんどくさい思うたやろ。『なんでお前に指図されなあかんの』って」
「いや、そんな意味じゃ」
「柚葵は優しいから気づいてないふりしてくれたんやろ?」
違う。本当は優しくない。ただ、自分がやりたいことやって勝手に人困らせてその後処理を遥にやらせているだけだ。その後処理を進んでやってくれてる遥の方が優しいって俺は知ってる。
「……そんなことない。」
「嘘はつかんでええで。ホントのこと話してや」
いつもはきつく聞こえる関西弁も今日ばかりは優しく聞こえた。どうしてこんなダメな人間に優しくしてくれるんだろう。
「本当は……」
「なんも気にせんでええ。心行くまで話したってや」
なだめるように話しかけてくれるが言葉が思うようにのどから出ようとしない。きっと遥にしかこの感情の起伏は起こらないんだろうな。
「本当は、遥の事、最初は守ってやろうとしてた。」
「……そうやったんか。でも、しゃあないか。だって俺、コミュ障やし、関西弁きつい方やし。」
「でも、話していくうちに『ああ、この子はきっと大丈夫だ。俺がいなくても平気な子なんだな』って変な感じで思考がひねくれていったんだよ。」
「なにゆうてるん?柚葵がおらんかったら俺、多分今頃死んどるよ?」
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