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第2話

 手を引かれて連れてこられたのはクリスの私室だった。王子様の部屋だけあって、豪華で広い。 「まずはお風呂に入ろうね」  と、まっすぐ浴室へ連行された。牢屋の汚い地面の上をごろごろ転がって汚れているので体は洗いたいのだけど、当然のようにクリスも入ってくるのをすんなりと受け入れることはできない。  制服を脱がせようとするクリスの手を止める。 「あの、お風呂なら僕一人で入れるけど」 「もちろんわかってるよ。でも一緒に入ろうね」  有無を言わさず全裸にされて、同じように衣服を脱ぎ捨てたクリスに浴室に連れ込まれる。  ここでまた彼を殴って昏倒させたら逃げられるだろうか。そんな考えがふと頭を過ったが、城内には兵士が配置されているだろうし、見つからずに抜け出すのは無理だろう。さすがに二度も殴ったら、今度こそ問答無用で処刑されてしまうかもしれない。  叶愛は我慢してクリスに体を洗われた。  首から上だけをすげ替えられたような感覚だったけどもちろんそんなことはなくて、やはり体も前とは違う。美しさを保つ為に毎日手入れしていたときのような滑らかさがないし、前は陶器のように白かったのに今は少し日に焼けている。  あんなに頑張って美貌を磨いてきたのに、死んでしまえばこんなにあっさり失ってしまうのだ。  自分の体を見下ろしながらそんなことを考えていると、クリスがふと話しかけてきた。 「ところで、叶愛はどうしてうちの敷地の中で倒れてたの? どこから入ってきたんだ?」 「えっと……わかんない。気づいたらあそこにいた」  色々と端折ってはいるが、それが事実だ。  ものすごい雑な説明だが、クリスは納得してくれたようだ。 「そうか。もしかしたら、叶愛は神様から私への贈り物なのかもしれないね」  なんて勝手に都合よく解釈している。  もし本当にそうだとしたら、贈り物なんかにしてくれやがった神様を一生恨んでやると叶愛は心に誓う。  さっぱりして浴室を出ると、クリスが体をタオルで拭いてくれた。そしてタオルで包んで叶愛の体をベッドへ運ぶ。  ベッドに下ろされ、タオルを剥かれ、別に今更全裸を晒すことに抵抗はないので叶愛は大人しくしていた。 「はい、果実水だよ」  そう言ってクリスはグラスに注いだそれを差し出してくる。 「ありがと」  叶愛は受け取り、こくりと飲んだ。  こくこくと飲んでいる間に、クリスは小さな瓶を取り出し、その中身を叶愛の肌に塗り込める。 「なにそれ?」 「ボディクリームだよ」 「ふーん。いい匂いだね」 「ほんと? 気に入ってもらえたならよかった」  クリスはにこにこしながらクリームを叶愛の体に丁寧に塗っていく。  王子という立場にありながらクリスは当然のように叶愛の世話を焼き、そして甘やかされることに慣れきっている叶愛はそれを当然のように受け入れていた。  それが終わると、クリスは叶愛の手から空のグラスを取り上げ元の場所に戻す。そして叶愛に顔を向け、にっこりといい笑顔で微笑んだ。 「さあ、叶愛。私達の記念すべき初夜だよ」 「ええ!? まだ結婚してないよね!?」 「でもいずれ必ず結婚するんだから、初夜を先に済ませても問題はないよ」  笑顔は本当に王子様のようにキラキラ輝いているのに、その瞳にははっきりと情欲が宿っている。 (こんな平凡モブ顔に欲情するなんて……)  好みは人それぞれだけれど。もし美少年のまま生まれ変わっていたら、この変態に目をつけられることもなかったのだろう。そう思うと、この顔に生まれ変わらせた神様を心の底から呪いたくなる。 「叶愛……」  他のことを考えていた叶愛は、あっさりと唇を奪われた。  はむはむと唇を啄まれても、最初より抵抗感はなかった。どうせ一度キスされてしまったのだ。二度三度奪われたところでもうなにも変わらない。  もし、生前だったなら死に物狂いで抵抗しただろう。叶愛は自分の美しさを命よりも大事にしていた。それを他人にけがされるなんて絶対に許せなかった。相手を殺してでも自分を守った。  けれど、今は守るべき美貌もない。守ったところでなんの意味もない。下手に抵抗してクリスに怪我を負わせでもしたら、それこそ大変なことになってしまう。  だから、仕方ないか、という気持ちだった。いずれ逃げるチャンスが訪れるかもしれないが、とりあえず今を生き抜く為に体を差し出すくらい、耐えられないわけではない。  そんな風に考えて、叶愛はクリスのキスを受け入れた。  舌で唇を割られ、慣れていないからびくびくしてしまうけど、口内に舌を差し込まれても我慢した。 「んっ、ふぁっ、んっんっ……」  どうすればいいのかわからないから、叶愛はされるがままだ。  ぴちゃぴちゃと濡れた音が鳴って恥ずかしい。口の中をぬるぬると舐め回される感触に、嫌悪ではなく背筋がぞくぞくした。  クリスの舌は、まるで知り尽くさなければ気が済まないというかのように隅々まで叶愛の口内を探っていく。舌の裏側、頬の内側、歯の一本一本をねぶり、上顎を舌先でなぞる。 「はぁっんっ、ふっんっんっ」  上顎を舐められるとぶるっと震えが走り、じっとしていられず叶愛は身を捩った。するとそんな叶愛の反応をもっと引き出そうと、クリスは執拗に上顎を舌で擦る。 「んぁっ、んっんっんんっ」  体がどんどん火照ってきて、頭がぼうっとしてくる。  一度口を離してほしくてクリスの舌を舌で押し返そうとすれば、なにを勘違いしたのか今度は舌をべろべろに舐め回された。舐めしゃぶられて引き出されてぢゅるるっと卑猥な音を立てて吸われた。 「んっふぅっ、んんっ」  さすがに耐えきれなくなり、叶愛はクリスの肩を叩く。意図に気づいて、彼は漸く唇を離してくれた。  解放され、叶愛は荒い呼吸を繰り返す。 「はあっ、はーっ、はふっ……」 「ああ、ごめんね、苦しかった?」 「苦しいよ、少しは手加減して……っ」 「……叶愛、はじめてだったの?」 「そうだよ……」  叶愛は潤んだ瞳でクリスを睨んだ。 「はじめてなんだから、ちゃんと優しくして。僕、痛いのやだから、絶対絶対痛くしないでよ」  叶愛は自分が大好きだったから、恋愛などしたことはない。性的なことにも疎かったが、自主的に知識を得ようとしなくても情報は勝手に入ってくる。男同士で体を繋げる場合、どこを使うのかくらいは知っている。貞操を守るのは諦めたが、痛い思いはしたくないのだ。  強く念を押せば、クリスは息を呑み目を瞠る。そして、うっとりと微笑んだ。 「うん、もちろん。大切に抱くよ」  とりあえずその言葉を信じるしかない。叶愛は体から力を抜いた。自分の発言がこの行為を無駄に長引かせることになるとも知らず、目の前の男に身を委ねたのだ。  クリスの手が、するりと皮膚の上を滑る。ふにゃりと薄い胸を揉まれ、叶愛はぴくりと肩を震わせた。 「僕、女の子じゃないけど……」 「そうだね」  女ではないから胸を触っても楽しくないだろうと言いたかったのだが、クリスは表情いっぱいに愉悦を浮かべ叶愛の揉み心地のない胸を揉む。  痛みを感じない強さで、ふにふにと優しく揉み込まれ、なんとも言えない感覚に叶愛はもぞりと身動いだ。 「んっ、ふぅんんっ」  なんだかだんだん変な感じがしてきて、声が漏れそうになって慌てて唇を噛む。  するとクリスは顔を近づけて噛み締める唇を舐めた。ぬるぬると唇の上を舌が這い、思わず口を開けばすかさず舌を挿入される。 「んっはっ、ぁんっんっんぅっ」  舌に舌を絡めながら、クリスは叶愛の胸を揉む。  キスも、触れる手付きも甘くて、叶愛の思考は徐々に蕩けていく。  胸を揉んでいた指が、不意に小さな突起を摘まんだ。 「ひゃんっ」  軽い刺激だったのに、叶愛はびくんと反応して背中を浮かせる。 「ぁっ、んっ、はぁっんんっ、んんっ」  喘ぐ叶愛の口の中をねぶりながら、クリスの指は摘まんだ乳首をくり、くり、と捏ねる。  肌がぞくぞくと粟立って、びくびくと背筋が震える。きゅうっと乳首を押し潰され、びくんっと一際大きく体が跳ねた。 「んゃあっ、あっ、だめ、そこっ、弄んないでぇ……っ」 「んー? ダメなの? 気持ちよさそうなのに?」 「やぁんっ、きもち、よくなんて、ないぃっ」  かぶりを振って否定する叶愛に、クリスは目を細めて笑う。 「ふふ。嘘ばっかり。叶愛のここは、気持ちいいって言ってるよ?」 「ひゃあんっ」  クリスが手を伸ばした先には、叶愛のペニスがあった。そこはひくりと頭を擡げ、彼の言葉が正しいのだと如実に伝えていた。  クリスは勃ち上がったペニスを掌に包み込み、緩やかに上下に擦る。 「あんっ、だめぇっ、触らないでぇっ」 「触らなくていいの? とろとろって蜜が溢れてきたのに? このまま放っておいていいの?」 「あぅっ……」  クリスは優しく微笑みながら、ペニスを扱く手の動きを止める。  中途半端に刺激され、熱を吐き出せないもどかしさに叶愛の瞳にじわりと涙が浮かぶ。 「ひ、ぅっ……んっ……」  無意識に腰が揺れ、ペニスの先端からたらりと先走りが垂れる。  下腹部に蓄積した熱は、ぐるぐると渦巻き叶愛を苦しめた。この熱を解放したいのに、それができずにひくりと喉を震わせる。 「やっ、やぁ……っ」  顔を真っ赤にして悶える叶愛を見下ろすクリスの笑みは蕩けるほどに甘く、けれど嗜虐が見え隠れしていた。まるで弱る獲物を見て楽しんでいるかのように、舌舐めずりする。 「辛そうだね、叶愛? 本当におちんちん触らなくていいの?」 「っふ、うぅ……っ」 「私は叶愛を苦しめたいわけじゃないんだよ? ほら、どうしてほしいのか素直に言ってごらん?」 「うっ、うー……っ」  叶愛が恥辱にぽろぽろと涙を流せば、クリスの笑みはいっそう深くなる。そしてぺろぺろと流れる涙を舐め取った。 「ああ、そんな可愛い泣き顔を見せないで。興奮してしまうよ」 「ひぃっ……」  うっとりとした囁きに叶愛は肩を竦ませる。 「ごめんごめん、叶愛ははじめてだからまだ上手におねだりできないよね。これから少しずつ覚えていこうね」 「ぃ、んあぁっ」  嫌だ、と突っぱねる前にきゅっとペニスを擦られ、拒絶は言葉にできなかった。 「おちんちん、このまま擦ってほしい? 頷くだけでいいよ」 「っ、っ……」  ここで首を横に振れば、今度こそ本当に熱を吐き出せないまま放っておかれ、いじめ抜かれるかもしれない。一見穏やかで優しそうなこの変態王子には、そう思わせるSっ気をひしひしと感じる。  そこまで意地を張ることもできない叶愛は、こくりと小さく頷いた。  それを見て、クリスは艶然と微笑む。 「いいよ。おちんちん、気持ちよくしてあげるね」 「ふぁんっ」  ぺろりと乳首を舐めながら、クリスはペニスをくちゅくちゅと扱く。舌先で乳首をくにくにと転がし、ペニスの先端を指の腹でぬるぬると擦る。 「ひぁっあっ、そんな、一緒に弄っちゃ、あぁっあっあぁんっ」  胸からも下肢からも強い快感が走り抜け、叶愛は身悶えた。自分の口から漏れる甘ったるい喘ぎ声が恥ずかしいのに、それを抑える余裕もない。 「あんっあっあぁっ、い、いくっ、も、出ちゃうぅっ」  すぐに限界は訪れ、間近に迫る絶頂に内腿が痙攣する。  じゅぅっと強く乳首を吸われ、激しくペニスを刺激され、叶愛は呆気なく射精した。 「あっ、ああああぁっ」  びくんびくんっと腰が浮き、ペニスから体液が弾け飛んだ。  今まで味わったことのない強烈な快楽に、叶愛は放心したようにただ荒い呼吸を繰り返す。  呆ける叶愛を、クリスは情欲にまみれた瞳でねっとりと見つめた。 「蕩けた顔、可愛いね。ああ、叶愛のミルク、美味しそう……」  恍惚と呟き、クリスは叶愛の体に飛び散る精液を舐める。胸元から下腹部まで丁寧に舐め回し、それからとろりと残滓を垂らすペニスをパクリと口に咥えた。 「んひぃっ……!?」  射精したばかりで敏感になっているそこをぬめった粘膜に包まれ、痺れるような快感に叶愛の意識は呼び戻される。  クリスの口の中に自分の欲望が飲み込まれているのを見て、叶愛は激しく動揺した。 「ひっ、あっ、ばかぁっ、な、なにしてっ、あっやだぁっ、ぺろぺろしないでっ、あっあっ、だめぇっ」  ちゅうっと尿道に残る残滓を吸い上げ、ねっとりと糸を引きながらクリスの唇は離れていった。  満足そうな笑みを浮かべる彼を、叶愛は恨みがましげに見上げる。 「ひっく、うぅ……ばか、ばかっ、変なこと、しないでよ……っ」 「変なことじゃないよ。愛し合う二人が行う普通のことだよ」 「うそだもん、そんなの……」 「叶愛は子供だからまだ知らないんだね。これからたくさん覚えていこうね」 「やだよ……」  ふいっと顔を背けるのに、クリスは酷く楽しそうだ。 「楽しみだなぁ……。なにも知らなかった叶愛が、私の手で淫らに成長していくのか」  耳に届いた不穏な独り言に、叶愛は今すぐここから逃げ出したくなった。自分は選択を誤ったのかもしれない。もしかしたら、処刑を選ぶべきだったのかもしれない。この男に身を任せたら、とんでもないことになってしまうのかもしれない。  けれど、もう遅い。 「ひぅっ……」  ぬるりとした粘液を、後孔に塗される。 「やっ、なにっ……」 「叶愛のここを塗らして、とろとろにするものだよ。変な薬は入ってないから心配しないで」  そう言いながら、ぬるぬるとそれを塗りつける。  そこを使うのだから慣らすには触れないわけにはいかないとわかっているが、そんな箇所に触れられることに抵抗を感じずにはいられない。  ぎゅっと眉を寄せむずかるように身動げば、クリスにキスをされた。後孔から意識を逸らせるように叶愛の舌を甘噛みし、ちゅぱりと吸い上げる。  強張っていた叶愛の体から力が抜けていく。そのタイミングを見計らったように、ぬぷりと後孔に指を挿入された。 「あっ、ひぅんっ……」  指一本でも違和感は大きく、けれど今度は乳首にしゃぶりつかれ、すぐにそちらに気を取られる。 「あっあんっ、ひゃっ、あぅんっ」  小さな突起を舐めてしゃぶられ、甘い快楽に背中を仰け反らせる。その間に後孔に粘液を継ぎ足され、とろとろに濡れた叶愛の中は指を咥え込むことに馴染まされていた。  いつの間にか奥まで埋め込まれていた指が、中でくいっと曲げられる。指の腹で内壁の一部を押された瞬間、叶愛は甲高い嬌声を上げていた。 「きゃぁんんっ」  びくびくっと爪先を浮かせて大袈裟な反応を見せる叶愛に、クリスはうっそりと唇に弧を描く。  叶愛は目を丸くして、全身を駆け抜けた快感に混乱する。 「あっ、な、なにっ……!?」 「怖がらなくても大丈夫だよ。ここが、叶愛が気持ちよくなれる場所なんだ」 「んっ、ひっ、ひぅっ」  やわやわと内部を優しく摩られる。それだけで堪らなく気持ちよくて、勝手に腰が浮いてしまう。  前立腺の存在を叶愛は知っていた。けれどそこから得られる快感がどれほどのものかなんて知らなかったし、この先一生知りたくもなかった。  けれどクリスは、探り当てた叶愛の敏感な箇所をしつこく嬲りはじめる。にちゅにちゅと粘液の濡れた音を立てながら、ぐりぐりと内壁の膨らみを擦り上げる。 「やっひぁんっ、ひっあっ、そこ、ばっかり、擦っちゃ、あっあっやあぁっ」 「ふふ。気持ちよさそうだね、叶愛。おちんちんもまた勃ってきた」  クリスの指摘通り、叶愛のペニスは再び頭を擡げ蜜を漏らしていた。 「こっちでも気持ちよくなろうか」 「んひっひあぁっ」  中を刺激しながら、クリスはもう片方の手でペニスを擦りはじめる。  両方から与えられる強い快感に、叶愛は涙を流して身をくねらせた。 「んゃぁあっあっひんっ、待っ、ああっ」 「気持ちいいね、叶愛。おちんちんからどんどん蜜が溢れてくる。そろそろイきそう?」 「あひっひっんんぁっ、い、くぅっ、いっ、あっあっあっあ~~~~~~っ」  ぎゅぎゅぅっと内部を締め付けながら、叶愛は達した。  最後の一滴まで吐き出させてから、クリスはペニスから手を離す。だが、後孔の指はそのまま中をぐちゅぐちゅと掻き回し続ける。 「はひんっんっひぁっ、いった、いったのにっ、中、擦られたらぁっ、気持ちぃの、終わらな、あっあっああぁんっ」  喘ぎ声を上げてよがる叶愛の下腹部に顔を寄せ、クリスはまた飛散した精液を舐めとる。そうしながらも指の動きは止めず、確実に中を解していった。  柔らかく濡れそぼった後孔に、二本目の指を埋め込まれる。今度は二本の指で前立腺を弄り回され、快楽に蹂躙される。  再びペニスが勃起して、そうなるとまたそこを扱かれ、射精して、中を擦られる刺激にまた勃起して、扱かれて射精する。それを何度も繰り返し、叶愛のペニスからはもうなにも出ないのに、中を延々刺激され続けた。気づけば指は三本に増やされていて、既にそれをスムーズに抜き差しできるほどに後孔は解れていた。  それなのに、いつまで経っても終わらせてくれない。  達っても達っても終わらず、快楽を与えられ続け、叶愛は顔をぐちゃぐちゃにして泣きじゃくる。 「やらっ、もうやらぁっ、あっあっ、僕の中、これ以上ぐちゅぐちゅにしないでぇっ」  叶愛の哀願に、クリスは蕩ける瞳で微笑んだ。双眸は慈愛に満ちているようで隠し切れない情欲を孕み、彼は叶愛を見つめながら怪しく唇を舐める。 「叶愛は痛いの嫌でしょう? はじめてなんだから、もっとちゃんとここを柔らかくしないと。私も、叶愛に痛い思いなんてしてほしくないからね」 「ひっうぅ……も、いいから、もう、痛くてもいい、我慢するからぁ……っ」  叶愛は知らなかった。快楽も与えられ続ければ拷問と変わらない。これ以上続けられたら本当に頭がおかしくなってしまいそうで、恐怖に駆られ目の前の男に縋りつく。そもそもの元凶である男に助けを求めるしか、逃れる術がないのだ。 「ダメだよ、叶愛。叶愛の体に傷がついたらどうするの」 「いい、もういいから、お願いぃ……っ」 「お願い?」 「ん、うんっ……」 「じゃあちゃんとお願いしてごらん? 私にどうしてほしいの?」 「ぅえっ……?」  叶愛は困惑した。  そんなこと言われても、わからない。どうすればこの状況から解放されるのか、なんと言えばこの男が助けてくれるのか。 「わ、わかんな……」 「しょうがないね。じゃあ、私が教えた通りに言うんだよ?」 「ん……」  こくんと頷けば、クリスは叶愛の耳元に口を近づけた。 「『クリスのおちんちん、叶愛の中にちょうだい』っておねだりして」 「っ……」 (言えるかそんな恥ずかしいセリフ──!!)  怒鳴り付けてやりたかったが、言わなければまたずっと中を指で掻き混ぜられ、それをいつまでもいつまでも続けられることになるのだろう。そんなことをされたら、叶愛は本当に狂ってしまうかもしれない。快楽で狂人にされるなんて嫌だ。そんなことになるくらいなら処刑された方がいい。  しかしもう選択は覆せない。狂人になりたくないなら、この変態の言うことを聞くしかないのだ。 「うぅ……っ」 「叶愛?」  叶愛は恥辱に顔を真っ赤にして、震える唇を開いた。 「くっ……りす、の……おち……んち……叶愛の、中に……ちょ、だぃ……っ」  掠れた、弱々しい声で、それでもどうにかその言葉を口にする。  クリスは満面の笑みに愉悦を滲ませ、叶愛の唇を指で撫でた。 「ああ、叶愛……。真っ赤になってぷるぷるしてるのがとっても可愛らしいから、それで許してあげるよ」 「うっ……ぅっ……」  襲いかかる羞恥に、叶愛はぐすぐすと泣いた。 「じゃあ、叶愛のお願いを叶えてあげようね」 「んあぁんっ」  にゅぽんっと、後孔から指を抜かれた。長い時間三本も指を埋め込まれていたそこは、ひくりと口を開け、いやらしく粘液を滴らせる。  両脚を大きく広げ抱えられ、自身の脚の間の向こうにそびえ立つクリスの男根が見えた。クリスはお風呂に入ったときからずっと全裸だったけど、叶愛は彼の下半身を見ないようにしていたのだ。だから、そこをまともに見たのは今がはじめてだ。 「ひっ……」  その大きさに、思わず息を呑む。叶愛のものとは比べものにならないくらい、長くて太い。亀頭は大きくカサが開き、王子様フェイスに似合わないえげつないフォルムだった。  あんなものを入れられるのかと思うと恐怖に竦む。けれど、あのまま快楽の攻め苦を与えられ続けるくらいなら、痛みに耐える方がましだ。  叶愛は覚悟を決め、じっとそのときを待った。  綻んだ後孔に、肉塊が押し付けられる。 「ふ、はっ、あっあああっ」  ぬぶぬぶぬぶ……っと、肉棒が隘路を押し広げながら埋め込まれていく。  胎内を内側から圧迫される衝撃に目を見開くが、想像していた引き裂かれるような痛みはない。それどころか、亀頭が前立腺を抉るように押し潰した瞬間、叶愛は強烈な快感に絶頂を迎えていた。 「んひああぁ……!?」  痛みどころか、中を楔で貫かれ体は確かに快楽を得ていた。漸く解放されたと思ったのに、叶愛は再び終わりのない淫楽に翻弄されることになる。 「ひっはっあっんあぁっ、あっ、ひぃんっ」 「ああ、叶愛の中、熱くてどろどろに蕩けて、とても気持ちいいよ」 「んゃっあっあっひあぁっ」 「ふふっ……ここ、私のこれで引っ掻く度にイッちゃうね?」 「ひはあぁんっ」  剛直が浅い抜き差しを繰り返す度、前立腺を雁の部分でごりっごりっと擦られ、叶愛は悲鳴を上げて絶頂を繰り返す。 「んゃああっ、なんれっ、ぉちんち、もういけないのにぃっ、ずっといって、あっんっんっ、いってるっ、いくの止まんないぃっ」 「はあっ……可愛い、叶愛……」  熱を帯びた瞳で叶愛を見下ろし、クリスは艶っぽく息を吐く。  彼の視線と声にまで感じて、叶愛は全身を痙攣させる。  ぎゅうぎゅうときつく締め付ける肉筒の中を、クリスは何度もしつこく同じ箇所を亀頭で抉った。 「やっ、やあぁっ、もうそこ、擦らないでぇっ」 「ここ嫌なの?」 「やっ、やぁっなのっ、ひっあっあっあんっ」 「そっか。じゃあ、もっと奥を擦ってあげるね」 「はっくっ、ひうぅっ、んっんああぁっ」  剛直が、更に奥へと押し込まれる。  お腹が苦しいはずなのに、奥まで埋め込まれると満たされたような快感に胎内がきゅんと疼いた。  内壁が蠢き、クリスが息を詰める。 「っは……すごい、叶愛の中……私のものをどんどん飲み込んでいって……っ」 「ひはっあっあっ、はひぃんっんっんんっ」 「はじめてなのに奥までいっぱいにされて、そんな気持ちよさそうな顔をして……」 「あっひぁんっ、んぁっあっあっああぁっ」 「美味しそうに男のものを咥え込んで、何度もイッて……なんていやらしくて可愛いんだ、叶愛……っ」 「ああっあっ、ひっひあっあっ、あっあぁんっ」  クリスは叶愛の両脚を抱え直し、腰を揺すって内部を突き上げた。  もう叶愛は、揺さぶられるまま声を上げることしかできない。ずちゅっずちゅっと律動を繰り返す剛直に肉壁を擦られ、内奥を貫かれる快感にひたすら溺れるだけだった。  だらしなく開いた唇に、クリスの唇が重なる。唇を食まれ、溢れる唾液を啜られ、口腔内を差し込まれた舌で掻き回された。舌を擦り合わされる感覚に、ぞくぞくと背中が震える。  中を擦る動きはゆっくりになり、ずるーっとギリギリまで引き抜かれて、そしてまたずぶずぶずぶっと奥まで捩じ込まれ、それを繰り返される。引き抜かれる快感で達って、剛直を押し戻される快感でも達って、断続的に絶頂へ上り詰め、脳髄が溶けてしまうのではないかと思うほどぐずぐずにされ、叶愛は泣きながらクリスに縋った。 「やらぁっ、も、やめてぇっ、いくのやらっ、これ以上きもちぃのしないでぇっ」 「そう? 私はもっともっと叶愛を愛したいんだけど」 「ひゃあっ、やなのっ、もういじめないで、許して、お願いぃっ」 「心外だなぁ。いじめてなんかいないよ、叶愛をいっぱい甘やかしてこんなに可愛がってあげてるのに」 「あひぃんっ、あっあっ、おく、ぐりぐりらめぇっ」  更に奥までめり込んできた亀頭が、ごりゅごりゅとそこを捏ね回す。  狭まった隘路のその奧は入ってはいけない場所だ。叶愛はそう感じた。それなのに、このままではその入ってはいけない場所まで犯されてしまうのではないかと怯えた。  叶愛はぎゅうっとクリスにしがみつく。 「ひっやっやあぁっ、くりす、くりすぅっ、おねが、ああぁっ、もう終わってぇっ」 「ふふ、そんな可愛いことされると余計に止まらなくなりそうだけど、叶愛のお願いは聞いてあげなきゃね」 「あっひぅっ、おねが、くりすっ、おねがいぃっ」 「じゃあ、『クリスの精液、叶愛の中にびゅーびゅーして』って言ってごらん?」  叶愛はもう羞恥に躊躇う余裕もなかった。意味を理解することもできないまま、彼の言葉を繰り返す。 「くりすのせーえき、とあのなかぁっ、あっあっ、びゅーびゅーしてぇっ」 「ああ、可愛い、可愛いよ、叶愛。すぐに注いであげるからね……っ」 「はひっひっあっあっあっあっ」  激しい抽挿に、叶愛の中はぐちょぐちょに撹拌される。  再び深く唇を重ねられ、貪るように口づけられた。強く舌を吸われ、叶愛はくぐもった喘ぎ声を漏らしながら必死にクリスの背中に掴まった。そうしなければ自分がどこかへ飛んでいってしまいそうで怖かった。 「んんっ、ふっ、うっ、んひっ、うぅんんんっ」  ごちゅっと一際強く奧を抉られ、上がった悲鳴はキスに飲み込まれた。  クリスがぐっと喉を震わせ、それから胎内にどぷどぷっと熱い体液を注がれるのを感じた。  きゅうきゅうと蠢動する肉筒で扱くように腰を揺すり、クリスは一滴残らず叶愛の中に精を吐き出す。  キスで唇を塞がれた叶愛は、ふーっふーっと鼻呼吸で酸素を取り込む。  ゆっくりと唇が離れた。それから、埋め込まれた陰茎をずるりと引き抜かれる。  ぽかりと開いた後孔から白濁とした粘液がだらりと零れ落ち、シーツに染みを作った。  脚を下ろされても、閉じることもできないまま叶愛はしどけなくベッドの上に転がっていた。指一本動かすことすら億劫だった。 「お疲れ様、可愛かったよ、叶愛」  顔も体も体液で汚れまくった叶愛を見下ろし、クリスは満足げに唇に笑みを乗せる。  やはり顔は王子様のように綺麗だ。顔だけは、王子として完璧に整っている。 「疲れただろう、もう眠っていいよ」  いや、顔だけじゃなく、声もいい。叶愛は前世の自分の美声の方が好きだからクリスの声にときめいたりはしないけれど、甘く響く彼の声は耳に心地よい。 「おやすみ、叶愛」  その声に導かれるように、叶愛は眠りに落ちていった。  

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