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第4話

 数日後のある朝。ベッドから起き上がった叶愛のもとにクリスが持ってきたのは可愛いレースのあしらわれたメイド服だった。  それを見て叶愛は思い切り眉を顰める。 「…………なにそれ」 「叶愛の今日の服だよ」  クリスの爽やかな笑顔が朝日を浴びて輝いている。 「それを僕に着ろって言うの?」 「うん」  クリスの瞳はキラキラして、ワクワクと期待を滲ませて叶愛を見つめてくる。  叶愛は死んだ魚のような目でクリスとメイド服を交互に見やった。  今まで着るものは全て彼に任せていたが、女物の衣服を用意されたことはなかった。ちょっと可愛らしくはあったが普通に男物の服ばかりだったので、まさかこんな趣味があるとは知らなかった。 「こんなの僕に着せて楽しいわけ?」 「もちろんだよ! 叶愛はなにを着てもなにも着てなくても可愛いけど、リボンとフリルで着飾った叶愛もそれは愛らしく私の心を癒して昂らせてくれること間違いなしだよ。叶愛の愛らしさが一層際立って、そんな叶愛が傍にいて目の保養となってくれたらとっても仕事が捗ると思うんだ。だから今日は一日私のメイドになってほしいんだよ」 「なに言ってんの?」  引くほどの勢いで熱弁され、叶愛は呆れた視線をクリスに向ける。  だがしかし、クリスとの約束がある。  前世では女物とか男物とか関係なく、自分に似合うのならどんな服でも着ていた。叶愛にとって自分を美しく見せることが最も重要だったから。なので、スカートを穿くことに抵抗はない。  叶愛は深く溜め息を吐き出した。 「まあいいや。それ着ればいいんでしょ」 「いいの?」 「別にいいよ。それくらいなら」  クリスはぱあぁ……とわかりやすく顔面に喜色を浮かべた。そして、いそいそと叶愛の着替えをはじめる。  叶愛は大人しくメイド服を着せられていた。  スカートは短く、エプロンにはふんだんにフリルがあしらわれ、見た目は完全にコスプレ用のメイド服だが、生地はしっかりとしていて安物には見えなかった。  こんな可愛いメイド服も、前世の叶愛だったら完璧に着こなすことができただろう。世界一メイド服の似合う美少年になれたかもしれない。  だがしかし、今の叶愛がこんな格好をしても全く似合わない。見なくてもわかる。絶対に似合わないと。そんな珍妙な自分の姿を見れば落ち込むだけなので、叶愛は一切鏡を見なかった。 (メイド服を着ようなんて思ったことなかったけど、着てみてもよかったかも。絶対似合ってたし)  前世の自分がメイド服を着ている姿を思い描き自画自賛している間に、クリスの手によってガーターベルトでストッキングを留められ、女性物のショーツを穿かされていた。 「よし、終わったよ」  クリスの言葉で叶愛の意識は現実に引き戻された。  彼は頬を赤く染め、息を乱し、うっとりと叶愛を見つめていた。瞬きもせず、ガン見している。 「ああ、可愛い、なんて可愛いメイドさんなんだ……! こんな格好でちょこちょこ動き回る叶愛の姿を想像しただけで興奮するよ! 全く仕事が手につかなくなりそうだ。なんて罪作りなメイドなんだ……!」 「いやさっき、仕事が捗るって言ってたし……」 「今日一日、叶愛は私専用メイドだからね! 早速仕事してもらうよ」 「ええー」  叶愛はクリスの小脇に抱えられ、部屋を連れ出された。  連れていかれた先は、クリスが使っている執務室だ。彼はいつもここで書類仕事をしているらしい。  やたら大きくて頑丈で高級そうな机に向かい、クリスはサラサラと書類にペンを走らせている。走らせながらも視線はチラチラと何度も叶愛の方に向けられている。あれでは気が散って、全く仕事に集中できていないのではないだろうか。  はたきのような物を渡された叶愛は、執務室内の掃除を頼まれていた。しかし既に掃除の必要などないほどピカピカで埃一つ落ちていない。なので叶愛ははたきを使ってただ掃除をする振りをしていた。  クリスの変態趣味に付き合うのは楽しくもなんともないが、これくらいなら許容範囲だ。視姦するような視線も甘んじて受け入れる。  完全に形だけの掃除をしながら、叶愛はふと気づいた。  本棚に隙間なく並べられた本。その背表紙に書かれている文字が読めることに。見たこともない文字のはずなのに、読むことができる。  叶愛ははたきの柄をエプロンの紐に挟んだ。両手をあけて本を一冊取り出し、開いて中を見てみた。やはり読むことができる。書いてある内容が難しいので意味はよくわからないが、読むことはできている。 (そういえば、今まで全然気にしてなかったけど、普通に会話もできてる……)  この世界に転生して、脳もこの世界の仕様に変化したのだろうか。だから言葉も話せるし、文字を読むことも可能なのかもしれない。  そんなことを考えながら、ペラペラと本のページをめくる。  すると、町の地図のようなものが描かれているのが目に入った。  それを見て、叶愛は思った。  この世界はどれくらいの広さなのだろう。  よく考えれば、叶愛はこの国のことしか知らない。他にも国があるかもしれないというそんな当たり前のことに、今思い当たった。  この国が他国よりも飛び抜けて顔面偏差値が高いだけで、平凡で溢れる国がこの世界にも存在しているのではないか。  その可能性に気付き、叶愛の胸は希望に震えた。  もしそんな国があるのなら、そこへ行けば叶愛が笑いものになることはない。  叶愛は本を棚に戻し、クリスに近寄った。 「ねー、クリス。世界地図とかないの?」 「どうして?」 「え、見たいから?」 「なんの為に?」 「え、えーっと……ほら、色々勉強したいし?」 「そんな必要ないよ」  クリスは穏やかな笑みを浮かべてはいるが、叶愛の要求を受け入れてくれる気配はまるでない。  叶愛はムッと頬を膨らませた。 「僕は王子様に嫁ぐんでしょ? 僕が無知だったら、クリスが恥をかくことになるんだからね」 「そんなことを恥だとは私は思わないよ」 「もー、なんだよ。別に地図くらい見たっていいじゃん。悪いことじゃないんだしっ」 「そうだね。どんな知識を身に付けても、叶愛が私から絶対に離れたりしないと誓うならね」  叶愛は内心ギクリとした。  もし平凡モブ顔が珍しくない国があるのなら、変態王子なんかと結婚せず叶愛はそこで暮らしたい。  そんな考えを抱いていることがバレてしまったのかと焦る。 「誓うもなにも、僕はクリスと結婚するしかないじゃん。王子を殴った大罪人なんだし」 「そうかな」 「そうだよ。お金だって持ってないし、一人じゃ生きていけないよ」 「ふぅん」  心の中を見透かすようなクリスの流し目から叶愛は顔を背けた。 「もういいよ。地図見せてくれないなら、掃除に戻るから」 「待って、叶愛」  離れようとした叶愛を、クリスが手を掴んで引き止める。 「な、なに……」  チラリと視線を向けると、クリスの穏やかな瞳の奥にギラギラとした情欲が滲んでいるのが見えた。 「ひっ……」 「可愛い叶愛のメイド姿を見てたら、悪戯したくて我慢できなくなってきちゃった」 「きちゃった、じゃない! 仕事しなよ!」 「こんな可愛い叶愛を放って仕事なんてできないよ。叶愛を可愛がらずにいるままじゃ、それこそ仕事に集中できない……!」 「真剣な顔でアホみたいなこと言うなぁ!」  じたばた暴れる叶愛をひょいと抱え上げ、クリスはザッと書類を適当に片付けて机の上に座らせる。 「ああ、メイド姿の叶愛が、私の机にちょこんと座って……!」 「興奮するなよ!」  はあはあっと息を荒げるクリスを怒鳴るが、スイッチの入った彼にはもうなにを言っても無駄だ。  クリスはガバリと叶愛の脚に顔を埋める。短いスカートからはみ出した太股に、彼の熱い息がかかる。 「ひゃっ……!? ば、ばかっ、変なとこに顔埋めるな!」 「……叶愛の匂い……っ」 「やだばかばかばかっ、匂い嗅ぐなよ!」  太股に埋められていたクリスの顔は股間へと移動し、スカートの上からはすはすされて叶愛は羞恥に悶えた。 「やだってば、ばかぁ! こんなところで、なに考えてるんだよ……!」 「だって叶愛がこんな格好で誘惑するから」 「してないし! あんたが着せたんだろ!」  叶愛の股間に顔を埋めながら、クリスは太股を撫で回す。  ストッキングに覆われていない素肌に直接触られて、ぞくぞくっとした感覚が這い上がる。落ち着かなくて叶愛は必死に身を捩るけれど、がっちり押さえられて逃げられない。クリスの鼻が布越しにぺニスに擦れて変な気持ちになってくる。 「ぁっ、やだってばぁ……っ。恥ずかしいこと、しないでっ」 「もうたくさん恥ずかしいことしてるのに? 嫌なの?」  クリスは股間から顔を上げ、叶愛の太股に顎を乗っけて首を傾げる。  確かにクリスとはほぼ毎日体を重ねている。今さらなにを恥ずかしがってるのかと不思議そうに尋ねられても、叶愛はクリスとは違い恥じらいがあるので恥ずかしいものはいつまで経っても恥ずかしいのだ。それに、こういうことをするのはいつも夜、ベッドの上でだけだった。陽の光が射し込む時間帯のこんな場所でなんて、恥ずかしいに決まっている。 「い、嫌だよ……。こんなところで、恥ずかしいことしないで……」 「ほんとに嫌?」 「っ……」 「絶対に嫌? 私に触られたくない?」  クリスの瞳がまっすぐに叶愛を見上げてくる。  死ぬほど嫌かと訊かれれば、そんなことはない。絶対に受け入れられない、というわけではないのが事実だ。  クリスはそれをわかっていて、敢えて叶愛に確認しているのだろう。  叶愛は早まったのだろうか。あんな条件を飲んでしまったのは間違いだったのかもしれない。  しかし、もう取り消すことはできない。やっぱりなかったことにしてなんて言えば、待っているのは世にも恐ろしい結婚式だ。 「叶愛が本当に、心から嫌だって言うならやめるよ?」 「っ、っ、ぃ、や、じゃ、ない……」 「ほんと?」  叶愛はぎゅっと目を瞑り、小さく頷いた。 「可愛いね、叶愛。顔が真っ赤だよ」 「っ、だから、恥ずかしいんだってば……っ」 「叶愛の恥ずかしがってる顔、すごく可愛い。だから、もっと見たいな」  目に焼きつきるように叶愛を凝視しながら、クリスはうっとりと微笑する。エプロンの紐に挟まっていたはたきを抜いて机の端に置き、彼は言った。 「ね、スカート自分で捲って」 「そっ、そんなの……っ」 「できない?」 「っだ、だって、こんなとこで……」 「大丈夫だよ、人払いしてるから」 「で、で、でも、なんか急用とかで、誰か来るかもしれないし……っ」 「鍵はかけてあるから、いきなりドアを開けられることはないよ。防音は完璧だから、外に声が漏れる心配もないからね」  逃げ道を塞がれ、叶愛はきつくスカートを握り締める。  クリスの背後にある大きな窓から陽が射し込み、部屋の中は明るい。窓の外は開けていて、建物もなにもなく、誰かに覗かれることはないだろう。 「私しか見ていないし、他の誰にも見せたりしないよ。恥ずかしがり屋の叶愛が恥ずかしくて堪らないっていうその顔、もっと私に見せて」  艶を孕んだ瞳で叶愛を見つめ、熱を帯びた声音で言ってくる。 (っこの、変態悪趣味王子が……!!)  叶愛はギリッと歯を噛み締める。  悔しいのに、恥ずかしいのに、体はどうしてかぞくんっと震えて、下半身がじんじんと熱を持つ。本当に嫌なら嫌だと突っぱねればいいのに、叶愛は恥辱に耳まで赤く染めながら、そろそろとスカートを持ち上げていく。  見なくても、クリスの視線がねっとりと絡み付くのを感じた。  彼は感嘆の溜め息を零す。 「可愛い、叶愛……」  叶愛は絶対今の自分が可愛いなんて思えない。けれど叶愛を見つめるクリスの表情は恍惚としていて、彼が本気でそう思っているのがわかった。  誰も彼も叶愛を見下し、侮辱するような視線を向けてくるのに。  前世で叶愛は誰からも愛された。可愛がられ、たくさんの好意を向けられてきた。  けれど今はクリスだけだ。彼だけが、愛情の籠った瞳で叶愛を見つめてくる。  変態だけど、叶愛を慈しむ気持ちは本物なのだろう。  クリスの瞳を見つめ返していると、胸がドキドキと高鳴った。  彼の吐息が下肢を擽り、叶愛は内腿を擦り合わせる。  そのときになって、漸く自分が女性物の下着を穿いていることに気づいてギョッとした。 「なっ、なんだよこのパンツ!?」 「え、今更? 着替えるとき、私の手で穿かせただろう?」  穿いているということは、そういうことなのだろう。着替えは任せっきりで他のことを考えていたので全く気付かなかった。 「穿いてて気付かなかったの?」 「だ、だって……」  ちょっと布が小さくて、ちょっと収まりが悪いな、くらいにしか感じていなかった。 「へ、変なもの穿かせないでよっ」 「変じゃない、似合ってるよ」 「嬉しくないから!」 「このレースの奥に叶愛の可愛いおちんちんがあるのかと思うと、すごく興奮する……」 「変なこと言うなってばぁっ」  はあっ……と熱い息を吐き、クリスは股間に顔を近づける。  息がかかるだけで、びくびくっと肩が震えた。  クリスの手が叶愛の両膝を持ち上げ、脚を広げる。  机の上でM字に開脚させられ、自分のはしたないポーズに叶愛は更に激しい羞恥に見舞われた。 「あれ。叶愛のおちんちん、少し大きくなってる?」 「んなっ、なってない……!」 「そうかなぁ。パンツが膨らんでるように見えるけど」 「ちが、違うからっ、もっ、そこで話さないでよ……っ」 「ふふ、どうして? あ、やっぱり、どんどん大きくなってるね?」 「なってな、んひぁっ……!?」  ぺろり、と下着越しにぺニスを舐められ、叶愛の口から甲高い声が漏れた。 「叶愛のおちんちん、小さい下着の中でびくびくしてるね。可愛い」 「ひあっあぁんっ、やっ、舐めちゃ、あっあぁっ」  下着の上からねっとりとぺニスを舐め上げられ、叶愛は甘い声を上げて身悶えた。  下着はクリスの唾液と叶愛の先走りで濡れていく。布がぺニスに張り付き、叶愛はいやいやとかぶりを振った。 「んゃっあっあんっ、濡れちゃ、からぁっ」 「脱がせてほしい?」 「やだぁっ、あっ、ひぁんっ」 「やなの? でも叶愛のおちんちんこのままじゃ苦しいでしょ?」 「はっあっ、ふぁっんんっ」  はむはむと裏筋を下着ごと食まれ、先端ももぐもぐとクリスの口の中で遊ばれる。  気持ちよくて、でももどかしくて、叶愛は無意識に腰を揺らした。 「ほら、叶愛も直接舐めてほしいでしょ?」 「やぁんっあっあっあっ」 「いつもみたいに、いーっぱいぺろぺろしてあげるよ? 根本から先端まで、ぬるーって舐めて、ちゅっちゅって吸い上げて」 「ひぁっんっあっあっひんっ」 「括れのところは、舌でぐりぐりーってしてあげる。そうしたら、叶愛のおちんちんのお口がぱくぱくして、そこからとろとろの蜜がどんどん溢れてきて」 「やっあっあんっあんっ」 「私の口に叶愛のおちんちんずるーって奥まで咥えて、蜜を啜るようにちゅぅーって吸い上げたら、叶愛すぐにイッちゃうよね」 「ひっあっ、~~~~~~っ!」  されたときのことをまざまざと思い出して、一気に快感が背筋を駆け上がり、叶愛は射精していた。  呆然と肩で息をする叶愛を見て、クリスも僅かに目を見開く。 「叶愛、イッちゃったの? 下着の上から少し舐めただけなのに?」 「あっ……う……」  羞恥に全身が火照り、瞳に涙が滲む。言い訳もできず、叶愛はぱくぱくと口を開閉した。  そんな叶愛を見て、クリスの双眸に嗜虐の色が浮かぶ。 「私におちんちん舐めてしゃぶられるの想像しただけでイッたの? 叶愛はほんとにエッチで可愛いんだから」 「ち、ち、が、ぁ……うぅ……」 「可愛いけど、お仕置きしなきゃね」 「ふぇっ……?」 「叶愛のミルク飲みたかったのに、下着の中に出しちゃうなんて」 「だ、だって……」 「ご主人様の許可なしにイッちゃういやらしいメイドにはお仕置きしなくちゃ」  王子のくせに、そういうプレイ知識をどこで仕入れているのだろう。そんな疑問が頭を過ったが、そんなことを気にしている暇もなくクリスに体勢を変えさせられる。  机の上で四つん這いにされて、叶愛は終わらない羞恥プレイに泣きそうになった。 「ちょ、ちょっと、やだよこんな格好……っ」  ベッドの上でだって恥ずかしいのに、こんな明るい部屋の高級そうな机の上でなんて。しかも叶愛の正面にはドアがある。鍵はかけてあると言っていたが、緊急事態で蹴破られる可能性もあるのではないか。  もがくけれど、クリスにしっかりと押さえつけられて逃げられない。 「クリスっ、恥ずかしいってば……!」 「ダーメ。これはお仕置きなんだから。わざと叶愛が恥ずかしがることしてるんだよ」 「もっ、ほんと趣味悪っ……」 「暴れないの。そうやってお尻ふりふりしてるのも可愛いけどね」 「ぅぐっ……」  そんなつもりはなかったのに、クリスからはそんな風に見えているのか。そんなことを言われたら、もう身動きもとれなくなる。  ピタリと動きを止めれば、クリスは褒めるように叶愛のお尻を撫でた。 「ふふ。そう、いい子だね。そのままじっとしてて」 「うぅっ……」  スカートを捲られるのがわかって、叶愛は恥ずかしさに思わずぎゅっと目を瞑った。  ゆっくりと、下着が下ろされる。 「あーあ。下着が叶愛のお漏らしでぐちょぐちょになっちゃったね」 「ひっ……ぅ……っ」  恐らくわざと、クリスは卑猥な言葉で叶愛の羞恥を煽ってくる。 「あは……とろーって糸引いて、やらしい。おちんちんもぬるぬる……お尻の方まで濡れちゃって」 「ひぁあっ……!?」  ぬるんっと濡れた感触が会陰部に触れ、叶愛は目を瞠る。ぴちゃぴちゃと音を立てて這うそれがクリスの舌だと気付き愕然とする。そのまま後孔の上にまで粘膜が触れ、叶愛は咄嗟に声を上げた。 「だめ! だめ、だめだめ! それはだめ!!」  叶愛は必死に抵抗した。体を捻って腕を伸ばし、手で後孔を隠す。  叶愛の本気の拒絶を察し、クリスは顔を離した。 「ダメなの?」 「だめに決まってる! そんな汚いとこ、絶対だめ!」  本当は触られるのだって抵抗があるのだ。舐められるなんて耐えられない。  声を大にして拒否する叶愛に、クリスは不思議そうに首を傾げる。 「汚くなんてないのに。ピンク色できゅって締まってて、期待するようにひくひくって可愛く口を開けて、とっても美味しそうなのに」 「ばかじゃないの! 変なこと言わないで! とにかくだめ! 絶対だめ!」 「わかったよ。叶愛が本当に嫌なら、今は我慢するね」 「今だろうといつだろうとだめだから!」 「はいはい。じゃあいつもの塗るから、手、どけて」  軽くあしらわれ、叶愛は渋々元の体勢に戻った。  後孔に、ぬるっとした粘液を塗られる。いつも使っている潤滑剤だろう。何故それがここにあるのか。最初からこういうことをするつもりだったのか。 (仕事しろよ、変態王子!)  心の中で罵倒する。  そんな叶愛の心の内など知りもせず、クリスはぬるぬると熱心に粘液を塗りつけている。 「叶愛のここ、物欲しそうにぱくぱくしてきたね」 「してな、ぁああっ」 「してるよ、ほら、ちょっと指入れただけで嬉しそうに締め付けて、もっともっとって奥まで飲み込もうとしてくる」 「ちが、あっあっんっ」  否定の言葉を吐きながら、叶愛の後ろはきゅんきゅんとクリスの指に絡み付く。中が勝手に期待して、快感を待ちわびるように蠢いている。自分から快楽を貪ろうと無意識に腰を揺らしそうになり、叶愛はそれを懸命にこらえた。  こんな明るい時間にこんな場所で、はしたない真似などしたくない。叶愛はクリスに逆らえなくて、仕方なく彼に付き合ってるだけなのだ。 「あんっ、あっあぁっ」 「ここ、弄られるの大好きだよね。叶愛の気持ちいいところ」 「んぁっ、やっんんっ」  クリスの指が、前立腺を優しく撫でる。ぐりぐりと押し潰される強い刺激に慣れたそこは、優しい愛撫に焦れったさを感じた。もっと強く擦ってほしくて、自ら腰を振ってしまいそうになる。 「やっ、やだぁっ、あっんっんっ」 「嫌じゃないよね? 気持ちいいでしょ?」 「んっひっ、やあぁっあぁんっ」 「どうしたの、叶愛? いつも気持ちいい気持ちいいって泣いて悦ぶのに」 「やっ、ばかぁっ、いじわる、んっんっんひっ」 「もう、またそんなこと言って。意地悪なんてしてないよ。こんなに優しく可愛がってるのに。おちんちんだってまた大きくなってきたよ」  緩い快感にも、叶愛のぺニスは頭を擡げたらりと先走りを漏らしていた。  指の腹が前立腺を軽く触れるくらいの強さで摩る。そんな刺激では物足りない。それは叶愛に淫楽を教え込んだクリスが一番よくわかっているのに。  クリスがねだらせようとしているのはわかっている。彼の思い通りになるのは悔しくて、自分からねだるなんて恥ずかしくて嫌なのに、叶愛の体は我慢がきかない。耐えきれず、叶愛は口を開いた。 「やぁっあっ、もっと……っ」 「うん?」 「もっ、と……強く、擦って……っ」  クリスが嬉しそうに笑うのが気配でわかった。 「強く? こう?」 「んひぁっあっあぁっ」 「これくらい?」 「あっあっ、もっとぉっ、ぐりぐりってしてぇっ」  羞恥は快楽に塗り潰されていき、叶愛は刺激を求めて浅ましく懇願する。 「ぐりぐり? こんな感じ?」 「あはぁあんっあっあっ、ひあぁっ」 「気持ちいい、叶愛?」 「ひっあっあぁっ、きもち、いいっ、あっあんっ」 「じゃあもっとしてあげるね」 「んああぁっあっあぁんっ、ひっひぅっ」  ぐぷんっと二本目の指を埋め込まれ、膨らみを挟んでぐりゅぐりゅと捏ねられる。 「んひっ、ひっあっいっいくぅっ、いっあっあ~~~~っ」  中を刺激され、叶愛は全身を痙攣させながら絶頂を迎えた。ぺニスから吐き出された精液はクリスの手に受け止められる。 「叶愛はここですぐイッちゃうようになったね」 「んっひっ、ひっ、いった、のにっ、ぐりぐり、やめぇっ」 「やめてほしくなんかないでしょ? イッて敏感になってるここ、いっぱい擦られるの好きだもんね?」 「ひあぁっあっ、いくっいくっ、また、あっあっあっああああぁっ」  叶愛のぺニスから、再び精が噴き出す。  クリスは掌で受け止めた叶愛の体液を舐めとりながら、内壁を刺激し続けた。  粘液でぐちゅぐちゅにされた肉筒に長い指を根本まで挿入され掻き回され、叶愛は何度も絶頂を繰り返す。 「んゃあっあっ、らめっ、んんっ、くりす、くりすぅっ」 「どうしたの、叶愛?」 「おねが、あぁっ、も、入れてぇっ」 「素直におねだりできていい子だね、叶愛」  快感でまともに頭の働かなくなった叶愛は、恥も忘れクリスに懇願する。  そう叶愛に覚え込ませたクリスは、満足げに褒めながら後孔から指を抜いた。膝の辺りに絡まっていた叶愛の下着をクリスが脱がせる。 「こっちにおいで、叶愛」  クリスに体を持ち上げられ、叶愛は椅子に座る彼の膝を向かい合う形で跨ぐような体勢にされた。 「汚れないように、スカート持ってて」  クリスにスカートの裾を握らされ、持ち上げる。ショーツは脱がされ、精液で汚れたぺニスは剥き出しで、ガーターベルトと吊るされたストッキングだけを身につけた下半身が露になった。  その猥りがわしい姿を、クリスはギラギラと情欲に濡れる瞳で見つめる。  熱を帯びた視線に、叶愛は感じ入ったようにぶるりと震えた。 「や、だぁっ、早く……っ」 「っああ、ごめんね、叶愛があんまり可愛いから見惚れちゃって」  クリスは下衣を寛げ陰茎を取り出す。  固く張り詰めたそれが、綻んだ後孔に押し当てられた。 「ほら、ゆっくり腰を下ろしてごらん」 「んっあっあっひっ、ああぁっ」  肉壁を擦り上げながら、楔が奥へと埋め込まれていく。亀頭がずりゅんっと前立腺を押し潰し、その刺激に叶愛はまた達した。  ガクガク震える叶愛はクリスに縋る。 「やっあっあぁっ、も、むりぃっ、くりす、クリスが入れてぇっ」 「うーん、私は叶愛の可愛いおっぱい弄ってあげたいから、入れるのは叶愛がして?」  そう言いながら、クリスは叶愛の胸元を開ける。 「あっやぁっ、胸いい、しなくていいからぁっ」 「ウソはダメだよ。触る前からこんなにぷっくり膨らんで、触ってっておねだりしてるのに」  クリスの指が乳輪をくるりと撫でる。  焦れったい刺激に、叶愛は無意識に胸を突き出した。  クリスは笑みを深め、そうっと先端に指を乗せる。 「乳首くりくりされるの好きでしょう? してほしいよね?」 「やぁんっんっ」 「こねこね押し潰されるのも、指で挟んでツンて尖った先っぽを爪の先でカリカリしたり指でピンピンって弾かれるのも好きだよね?」 「あうっんっあっやっ」 「乳首弄られると、叶愛のおちんちんからいっぱい蜜が溢れてきて、お尻の中が悦ぶみたいにびくびくって震えるもんね」 「んやぁあっ」 「叶愛、乳首弄ってほしいよね?」 「っ……してぇっ」 「よしよし。じゃあ、叶愛が自分でお尻に私のおちんちん奥まで入れられるよね?」 「うっ、うぅーっ」  叶愛は涙目になりながら、小さく首肯した。 「いい子、いい子。乳首、たくさん弄ってあげるね」 「んぁっあっあんっ、あっんっ」  両方の乳首をくにくにと捏ね回され、叶愛は快感に背中を仰け反らせる。  だらしなく開けっぱなしにして甘く喘ぐ叶愛の唇を、クリスが美味しそうと言わんばかりの顔つきで舐めた。 「こーら、気持ちよくなってるだけじゃなくて、ちゃんと腰を落として」 「ふっ、ううぅっ、んっああぁんっ」  叶愛は懸命に剛直を飲み込もうとするけれど、内壁が少し擦れるだけでも気持ちよくて、胸の突起を摘まんでこりこりと捩られるのも気持ちよくて、悶えることしかできなくなる。 「ふぁっあっひっひうぅっ」 「叶愛、ほら、頑張って」  叶愛の唇をねぶりながら、クリスは先を促してくる。  ぷるぷると内腿を痙攣させながら、叶愛は必死に腰を下ろそうとした。けれど、やはりうまくできない。焦燥感に、じわりと涙が込み上げる。 「んっひっ、ひっあっあっあうっ、やっ、もう、やあぁっ」 「叶愛?」 「やっ、やだぁっ、くりすぅっ、クリスがしてっ、クリスが入れてよぉっ」  叶愛は遂に泣き出して、クリスに懇願した。  すんすんと泣きながら縋りついてくる叶愛を、クリスは愉悦に満ちた笑みを浮かべて見つめる。 「お願いぃっ、くりすぅっ」 「しょうがないなぁ。可愛いから、許してあげる」 「んっんっ、くりすぅっ」 「ほら、入れてあげる、よっ」 「んひああぁっ」  ずんっと下から腰を突き上げられ、剛直を一気に奥まで埋め込まれた。ごちゅんっと、亀頭が最奥の窄まりに突き当たる。  叶愛は目を見開き、爪先をぎゅうっと丸めて絶頂を迎えた。もう射精しているのかしていないのか、叶愛自身わからなくなっていた。 「んっひぁっあっあっああぁっ」 「はっ……気持ちいい、叶愛?」 「ひっあっあっ、きもち、いいっ、あっあんっんっあっあっあっ」 「私も気持ちいいよ。叶愛の中、とろとろなのにすごくきつくて、私のものをぎゅうぎゅうって締め付けて」 「はひぃんんっ」 「乳首をきゅうってする度に、うねって、すごく、気持ちいい……っ」 「んひぁっあっ、いくっいくぅっ、んぁっ、また、いっ、あっあああぁっ」 「中をいっぱい擦られると、叶愛はすぐイきっぱなしになっちゃうね」 「あっあぁっ、おく、ずんずんってぇっ、あっあっひああぁっ」  叶愛は喉を反らせて嬌声を上げる。  気付けばここがどこかも忘れ、快楽に溺れていた。  ずちゅっずちゅっと肉壁を擦りながら内奥を突き上げられ、快感が絶え間なく全身を駆け抜ける。堪らなく気持ちよくて、もう気持ちいいということしかわからなくなる。 「ひあっあっ、いくっ、あっんっん~~~~っ」 「はあっ、すごい、締め付け……っ」  叶愛が達するたびに肉筒が搾り上げるように男根に絡み付き、クリスは僅かに顔を歪め息を乱した。 「叶愛、私もイッていい? 叶愛の中に出していい?」 「んっ、ひっあっ、してっ、なかぁっ、あっあっひんっ」  クリスは叶愛の腰を両手で掴み、激しく腰を突き上げた。  容赦なく胎内を抉り貫かれ、叶愛はガクガクと揺さぶられるまま甲高い嬌声を上げ続ける。 「ひはぁっあっあっあっあっ」 「出る、出すよ、叶愛、叶愛……っ」  叶愛の腰を強く引き下ろし、最奥に僅かに亀頭がめり込む。その瞬間、クリスは射精した。  腹の奥深くに体液を注がれ、叶愛はびくびくと戦慄いた。  呆けたように精液を受け入れる叶愛の唇に、クリスの唇が重なる。優しく啄まれ、叶愛はとろりと瞳を蕩かせた。 「気持ちよかったね、叶愛」 「ん……」  甘い囁きに、叶愛はうっとりと頷く。 「もう一回しようか」 「ん……うん?」  言葉の意味を理解する前に無意識に頷きそうになったが、寸でのところで我に返る。 「ばっ、ばかっ、もう終わり!」 「ええー」 「『ええー』じゃない! 仕事しろよ!」 「休憩も大事だよ?」 「こんなの休憩じゃない! もう、いいから早く抜いてよっ……っあ、やだ、おっきくしないでっ」 「そんなこと言われても、可愛い叶愛を見てたら勝手に大きくなるんだもん」 「『だもん』じゃな、あっ、僕のせいにしないで、あっあっ、やってばぁ……っ」 「ほんとに嫌? 叶愛の中、私のおちんちん離したくないってきゅんきゅんしてるよ?」 「してないっ、あんっ、動かさないで、あっあっ、ズルいっ、ぐちゅぐちゅしないでぇっ」 「私の精液で、叶愛の中どろどろになってるね。少し動かしただけで、すごい音……」 「ばか、やだぁっ、ひあっあぁんっ」  叶愛の抵抗など快楽で簡単に捩じ伏せられ、執務室にはペンの走る音ではなく甘い喘ぎ声が響き続けた。

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