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VACATION 第7話

 翌朝、ダイニングには中村の作った朝食を、居残り給食のごとくもそもそと食べ続ける秀明の姿があった。 「あの…辛かったら無理して全部食べなくてもいいからね?」  安易に大丈夫かと訊けば地雷を踏んでしまいそうで、中村はテーブルの秀明と石田をやや遠巻きに、グレープフルーツを絞る。 「あ、すいませんわざわざ…なんか、二日酔いで」  憔悴した表情で恐縮しながらグラスを受け取る秀明だが、その気だるさが酒のせいばかりでないことを中村も亜弓も知ってしまっている。  昨夜の情事を気取られていることを知ってか知らずか、秀明の隣に座る石田がさりげない仕種で秀明の髪を撫でた。 「大丈夫か? …ごめんな」  囁くように宥める石田に微笑んだ視線で頷き返す秀明の壮絶な色気に、二人はもう目も当てられない。 (なんか…石田がめちゃくちゃ男前に見えるんですけどっ…) (見てない、僕は見てないよ、あんな淳は知らないっ) (あの二人があんな甘くなるなんて想像してました?) (しないよぉ…なんなの佐野くんのあの犯罪的な色っぽさは…)  こそこそと交わす二人をよそに、いよいよ具合の悪そうな秀明の肩を抱いて石田が立ち上がる。 「すいません、やっぱこいつしんどいみたいなんで、上でもう少し休ませてもらっていいですか」  その紳士然とした態度に亜弓はなぜか自分が気恥ずかしくなりながら、どうぞどうぞと階段を勧めた。 「出発はお昼過ぎにするから、それまで休んでおいで」  中村の気遣いをありがたく受けながら、二人は階段を上がっていく。その半ばで、とりあえずシャワー浴びよな、という優しい石田の声が漏れ聞こえて、中村と亜弓は満腹感に顔を見合わせる。 「なんか……石田かっこよすぎ」  二人が部屋に入ったのを確認して、亜弓は疲労のあまりに思わずシンクに突っ伏した。 「あの二人、最初は佐野くんの方が上だったはずだよねぇ?」 「でした。いつの間に逆転したんだろ…」 「臨機応変なんじゃない? いいなぁ、楽しそう」  羨ましそうな発言をした中村を、亜弓はちらりと横目で見上げる。 「……うちは無理ですよ」  げっそりと呟く亜弓に、中村は笑う。 「それは誰も期待してないから心配しないで」  そもそもそれは体格差を考えても亜弓の体力的に不可能だと、期待されていないことを確認して亜弓は安堵の息をついた。その亜弓が、二人きりになったダイニングの椅子を引いたきり、ふと何やら考え込む。 「…でも、俺も石田相手だったら可能だったかな」 「えっ!?」  そんなことを呟いた亜弓に、中村はギョッとしたように過剰な反応を返す。  それをさらりとかわして、冗談ですよ、と笑った亜弓は、少し背伸びをして自分から中村のくちびるにキスをした。 <END>

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