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が、今は西野寺家。それにまた兄のことばかり思い出して、無意識のうちに兄の名を口にしてしまったら、この敷地内にある小さな神社で行われた、身内だけの祭りの時、神社裏でされたように怒りをぶつけられてしまう。
けれども、結果的に碧衣が葵人のことを想っていることが分かったし、自覚せざるを得ないが、無理やりされるのが嬉しくてたまらなくなってしまう。
期待を、してしまう。
「葵人様? 急に赤くなってどうされました? あ、もしかして、月一のアレですか!?」
「ち、違いますっ! 大丈夫ですから!」
月一のアレというのは、18歳の誕生日から突如としてなった、"発情期"。
その時期が来ると誰かに意識を乗っ取られたかのように、求めてしまう、らしい。
らしいと言うのは、その間葵人は全く憶えてないからだ。
意識が取り戻した後は、腰痛が酷く、どっと疲れてしまう。と、束の間、今度は生理が来てしまう。
その期間はとてつもなく憂鬱な気分になるので、出来ることならば来て欲しくなかった。
それが桜屋敷家がしてしまった罪だと、否が応でも突きつけられてしまうから。
「そうですか……ですが、何かありましたら遠慮なく仰ってくださいね」と言う女中に苦笑しながらも礼を言った。
「では、気を取り直して」と段ボールから取り出した星を手に取って、
「星を飾りたいのですが、あれを飾った時の何とも言えない、気分が上がってしまうものですから、私よりも他の方にやって頂きたいと思うのが、正直なところなのですけど……」
「僕が飾っても良いでしょうか?」
「ええ、いいですけど……ええっ!」
突然の大声を上げるものだから、肩を大きく震わせ、目を見開いた。
「ダメですよ! 高いですし、それに葵人様はお着物ではありませんか! そのような格好でしてはなりません! しかも、碧衣様になんて言われるか……」
想像しているらしい、星を持ったまま青ざめ、身震いした。
女中が言わんとしていることは、葵人が一番に分かっていた。
あの時のように容易に星を飾れないし、何よりも怪我をしたら葵人だけが怒られるだけではない。下手をしたら、この目の前にいる女中が全責任を押し付けられ、解雇される可能性だってある。
それぐらいしてはならないことだと、頭では十分に分かっている。のだが、したくて堪らない気持ちが抑えきれない。
けれども、その気持ちをグッと堪えた。
「でしたら、代わりに飾ってください。僕は見ているだけで十分ですから」
「ですが……!」
「いいんです。だって、このような格好でははしたないでしょうし。きっと、僕の背では届かないかと思いますし」
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