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「──お話の最中、申し訳ありません。山中様と石谷様がお見えになりました」
入ってきた女中の言葉により、碧衣は言い足りないと言いたげに舌打ちをした後、葵人を自身の方へ引き寄せたまま玄関の方へ向かおうとするのを、「あ、碧衣君……。ちょっと歩きづらいのだけど……」とおずおずと言って見るが、無言のまま、先ほど告げてきた女中の後を歩き続けるので、これ以上言っても仕方ないと思い、碧衣の足を踏まないように気をつけながら、そっと碧衣の胸辺りに顔を寄せた。
鼓動がいつもより早まっている。
恐らく、さっきの興奮が収まっていないのだろう。親と喧嘩なんてしなければいいのに。
けど、こんな考えもしてしまう。
もし、この早まっている鼓動が自分の姿を見てなっているのなら、と。
そうだったら、嬉しいし、あの素直ではない口から褒めてくれたら、もっと嬉しくなるのだが、いつ褒めてくれるだろうか。
と、玄関先が見えた瞬間、手首を掴まれ、碧衣の背後に追いやられてしまった。
「あ、お……──」
「「メリクリー!!」」
中に入っていたらしい、山中と石谷は、二人の姿が見えた瞬間、そう言って満面の笑みを見せてきた。
「あれ? どうして、葵人ちゃんは後ろに……?」
「それは……──」
「何でもいいだろ。いいからさっさと上がれ」
「ちぇ、せっかくクリスマスプレゼントを持ってきたのになー」
「クリスマスプレゼントっ!? ──あ」
「「あ」」
手が緩んでいたこともあり、咄嗟に前へと出てしまった。
二人は葵人のいつもとは全然違う格好に相当驚いているらしい、口を開いたまま固まっていた。
「……あ、えっと……これは、お義母さまが……」
「マジかっ!」
「……いや、可愛いな……」
二人に率直な感想を述べられ、嬉しいやら恥ずかしいやらで、むず痒い気持ちになり、再び碧衣の後ろに隠れようとした時、突然、山中がスカートを捲ろうとしていた。
──咄嗟に小さな悲鳴を上げ、両手で押さえたのと、碧衣と石谷がほぼ同時に頭を叩いた。
「ほんの出来心〜!! プレゼントあげるから許して〜!」
「山中君、僕は──っ!」
「──俺が、許せねーよ」
そこまで気にしてないと、思わず受け取ろうとした時、体が宙に浮かんだ。
それは、碧衣が葵人を抱き上げたからだと、横抱きにされ、さっさと奥に引っこもうとした時に、遅れて気づいた。
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