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「ちょっ、ちょっと、碧衣君っ! 下ろして!」
「ダメだ」
「二人のことを置いて行っちゃ、ダメだよ!」
「お前のことを勝手に触るヤツがいるから、特にダメだ」
「だからって!」
「……だから嫌だって言ったんだ。アイツら彼女がいないからって、勝手にうちの親に約束なんかしやがって。アイツらはアイツらで過ごしていろよ」
ビクともしない、碧衣の腕の中で暴れていた最中、彼が独り言のように文句を言っていた。
何故、あの二人が来るのか知らなかった葵人はそんなことがあったのかと納得し、あの親ならば、そのようなことをするのも頷ける。
葵人も碧衣と二人きりで過ごしたいと思っていたので、あの二人が来た瞬間、少し残念とも思ってしまっていた。あの二人には大変申し訳ないが。
というよりも、そう思うのならば、女中が二人が来たことを告げた時、迎えに行くのではなく、部屋に行ってしまえば良かったのに。けど、なんだかんだ無下にしないのは、二人のことを、友人だと認めている部分があるからなのだろう。
やっぱり、素直じゃない。
と、いつの間にか葵人の部屋に来ていたらしい、片手で障子を開けた碧衣と共に入って行った。──と、その時。
「おお〜! ここが葵人ちゃんの部屋かぁ〜!!」
「碧衣ちゃんの部屋と同じぐらい、広い部屋だな……」
突然の二人以外の声に、葵人らはほぼ同時に後ろを振り向いた。
「山中君、石谷君」
「……テメーら、何勝手に部屋に入って来てんだよ」
「いいじゃーん! てか、俺ら客人よ? 二人でイチャイチャするのもいいけどさ、俺らのことをもてなしてくれよ〜」
「お前らは、親のところに行ってろよ。邪魔だ」
「まあまあ、碧衣ちゃん。ひとまず碧衣ちゃん達にもクリスマスプレゼント買ったからさ、それだけは貰ってくれないか? その後はどっかに行ってやるから」
碧衣と山中が言い争いになりそうなのを、石谷が割って入ってきたことにより、碧衣は口を閉じたが、代わりに義母の時と同じように言い足りないと言いたげに、盛大なため息を吐いた。
「……勝手にしろ」
機嫌悪そうに言いながら、奥へと行き、座った。
それでもなお、葵人は碧衣の腕の中であり、「……そろそろいい?」とおずおずと言ってみたものの、今度は返事をしない。
こうなると何言っても、言うことは聞いてくれないのだろう。
部屋の入口に立ち尽くしたままの二人の方へ振り返り、困ったような笑いを見せると、二人は顔を合わせて、小さく笑っていた。
「入るのか、入らないのか」
「ちょっと、碧衣君」
「いいよ、葵人ちゃん」
「入りますぅ〜」
窘めようとするのを、石谷に制され、二人は入って、葵人らの前に座った。
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