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「でさ、さっき言ってたプレゼントなんだけど」 山中がそう言いながら差し出してきた物を見て、葵人は首を傾げた。 それは、赤いリボンで巻かれた、上部分が黒く、下は灰色の魚のぬいぐるみであった。 「これ、シャケだよね……? なんで?」 受け取りながらも、やはり意味が分からず、首を傾げたままでいると、「さっすがー、葵人ちゃん! これがシャケだとよく分かった! 俺には分からなかった!」と褒めてくれた後、「これはな、優とプレゼントを買いに行った時の話なんだが……」と言って、話し始めた。 石谷と共に葵人らのクリスマスプレゼントは何にしようかと話している時。 「チキンの代わりにシャケを食え〜!」 突如として聞こえた「シャケ」の単語に反応して、二人は振り向いた。 そこには妙にリアルな生足二足歩行のシャケの着ぐるみが、ぬいぐるみ販売をしていたのだ。 何故、シャケなのか甚だ疑問だったのだが、案外可愛く、葵人が好きそうだと思い、買ってきたのだという。 「コイツのセンス、どうかしていると思ったんだが」 「可愛い……」 「俺は、もうちょっと他にある──えっ?」 「葵人?」 「分かっているな! さすが俺!」 何を言っていると言わんばかりの声と、自画自賛している声はよそに、葵人は腕の中にいるシャケのぬいぐるみに釘づけだった。 リアルよりのデフォルメされたそのぬいぐるみは、よく見れば可愛いし、肌触りもいい。 その肌触りを確かめようと、ぎゅうっと抱きしめた時だった。 パラパラと軽い音を立てて、畳に落ちていった。 「何の音……」 「ん? 何、このつぶつぶ。このぬいぐるみから出てきたん?」 「多分……」 山中に問われ、ぬいぐるみを再度見やると、しっぽの付け根辺りに、ちょうど山中が持っているオレンジ色のビーズが入るサイズの穴があった。 ということは。 「ってことはこれ、イクラってこと?」 「なる、ほど……?」 代わりに摘んでいた石谷がそう答えたが、納得してないと言うような言い方になっていた。 恐らく、突然のことに放心状態のままになっているのかと思われる。 そんな二人を傍目に、「美味そうだな、これ!」と言って山中は口に入れたのだ。 「おま……っ!」 「固いわ、これ……」 「……食う前に分かるだろ……」 見ていたらしい碧衣が、思わず呆れた声を上げたのを、葵人と石谷は驚いて振り返ると、眉を潜めてペっぺする山中の姿を見ていた。 「ふふ、素敵なプレゼントをありがとう」 「いいってことよ!」 笑いが耐えきれないと言ったような声で礼を言うと、とてもいい笑顔で指を立てて答えてくれた。

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