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「あらあら、うふふ。そうなの?」
「あ、はい……なので、朝もそんなに食べていなかったので、お腹が空いてしまいまして……」
「嬉しいことだけど、朝もきちんと食べないとダメだわ。前よりも顔色が良くなったとはいえ、具合が悪くなってしまうかもしれないもの。私、そんな葵人ちゃんを見るのは嫌だわ」
「はい、気をつけます……」
背後から「いぇーい! 食い物ー!」「おい、こら、待てっ!」と駆け出していく山中を、追いかけている石谷を傍目に、葵人は怒られたかのようにしょんぼりしていた。
たしかにここに来たよりかは、自分でも分かるぐらい肉付きが良くなったし、顔色も良くなった。それは義母が作ってくれる美味しい料理のおかげなのだろう。ついつい手が伸びてしまう料理を食べられるのは、ものすごく嬉しいが、未だに外に出ることが怖いのもあり、体がふっくらしていることも気づいてしまう。
周りには料理が楽しみで、とは言ったが、本音はそろそろ運動しないとダメだと思い、少しでも食事を抜いているところであった。
この屋敷もなかなかに広いので、中で歩くことにしようと思っていたところだった。
「ほら」と下げていた頭を両手で包み込むように頬に添えられ、上げさせられる。
その際に、「おい」と怒っているような碧衣の声がしたが、聞いていないのか、義母はこちらに笑みを向けたままだった。
「そんな顔をしていては、せっかくのパーティが楽しくなくなっちゃうわ。ほら、山中君のことを見て」
促され、義母の背後のテーブルに目を向けると、「うひゃあ〜! 何だし、この豪華な料理は! なぁ、優。食べてもいいか?」と言いながら手を出そうとするのを、「まだダメに決まっているだろ」と素早く手を叩いているところだった。
いつもらしい二人の、コントのような言動に思わず吹き出してしまった。
「葵人……?」
「ふふ。やっぱり、面白いでしょう? どんな時でも面白くさせる山中君、天才的よね」
「ええ、本当に」
こうして話している間でも食べようとしているのを全力で止めにいっている石谷が大変そうだと思い、「さぁ、食べましょう」と席を案内する義母の後を、さらに自分の方へ引き寄せてくる碧衣と共に歩いていき、それぞれ座った。
後にやってきた義父が上座に座ったことにより、シャンメリーを持った葵人達は「メリークリスマス!」と言って、グラスを当て合った。
ちなみに持っていたシャケのぬいぐるみは、気を利かせてくれた女中が葵人の隣に椅子を持ってきてくれて、そこに置かせてもらっている。
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