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碧衣とは特に会話もなく、山中と石谷を中心に盛り上がっているのを、傍から見ては笑っていた。
その時、さらに碧衣が機嫌悪そうにしていると思いつつも。
食べ終え、立ち上がろうとした時、待っていたかのように葵人のことを抱き上げ、去ろうとしていた。
さっきで、どうしてそうしようとしているのかは分かっていたものの、やはり、自分で歩きたいと思った。
それに、今回は両親の前で堂々とやっていて恥ずかしい。
さっきも碧衣はそう思ったから、扉の前で下ろしたのだろうが、それよりも色々としたものだから、どうでもよくなっているのかもしれない。
それと、これが彼なりの葵人を独占したい欲が現れていて、嬉しく思う自分もいるので、彼の好きにさせようと思い、身を委ねた。
いつもよりゆっくりと歩く振動と、規則正しく打つ鼓動を聞いていると、眠気が襲ってきた。
結局のところ、義母の作る料理が美味しく、満腹になるまで食べてしまったから、余計に。
何気なく自身の胸辺りに手を置いた時、ハッと目が覚めた。
「あっ! シャケのぬいぐるみ持ってくるの、忘れてた!」
「持ってきてるぜ」
背後からそう聞こえ、碧衣が立ち止まったのと同時に、山中が手に持っていたシャケのぬいぐるみを葵人の前に差し出した。
「山中君、持ってきてくれてたの?」
「置いていくだなんてひどいー!」
ぬいぐるみを上下に揺らして、高い声でそうアテレコしてきたのを、目をぱちくりしたのも一瞬で、くすりと笑った。
「うん、ごめんね。せっかくの山中君からのプレゼントを置いてきちゃって」
「許すわ!」
「ふふ、ありがとう」
山中から受け取って、そのぬいぐるみの頭を撫でていると、上から「で、話は終わったのか」といういかにも不機嫌な声が降りかかった。
「ちょっと、碧衣君っ」
「葵人ちゃんのことを独り占めしたいのは分かるけどさ、まだ俺の方はあげてないんだわ。もう少し時間をくれないか?」
「そ、そうだよ。僕も二人にあげてないから、まだ待って。ね?」
山中の後に、ようやく言えたと思いながら、ムスッとしたその頬に、そっと宥めるように手で撫でると、「……仕方ねーな」と嫌そうに答えた。
そのことに一応ホッとしたのも束の間、「早くしろよな」と踵を返し、葵人の部屋へと入り、続いて二人が入り、障子が閉まる音がしたのを背後で聞いた後、さっきのように碧衣の膝上に葵人が座る形になった。
「じゃあ、俺から葵人ちゃんに」
石谷がそう言って、脇に置いていた小包みをこちらに差し出され、葵人は「ありがとう」と言って、受け取った。
この中で一番手が小さいであろう葵人でも、両手で持てるぐらいのサイズの小包みに、何なのか予想出来ず、「開けていい?」と断りを入れ、丁寧に包みを剥がしていった。
そうして、触り心地良い黒い箱の蓋を取ってみると。
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