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と、そこで山中が「ん?」と声を上げた。 「この青いやつは……碧衣ちゃんの分だな!」 「そうだよ。申し訳ないけど、こっちに持ってきてくれる?」 「お安い御用だ」 嬉々として山中が持ってきてくれた、石谷からもらった箱よりも小さいプレゼントを、「ありがとう」と言って受け取ったのを、「はい、碧衣君の」と言って渡した。 「何日か前から、妙にソワソワしていたのは、これだったのか」 「気づかれちゃってた?」 「まあな。葵人はすぐ顔が出るからな」 受け取ったプレゼントを顎に当てて、悪戯な笑みを見せる碧衣に、「……恥ずかしい」と言ってぬいぐるみに顔を埋めた。 化粧が付いてしまうと思ったが、この際気にしていられない。 「わー! 何これウケるー!!」 「お、これは。さすが、葵人だ。これは楽しみだ」 二人が嬉しそうな声を上げているのを聞き、そちらに振り返った。 山中には笑い袋を、石谷には共通趣味であるドラマ鑑賞で、誕生日にもらったお礼として、オススメのDVDをあげたのだ。 やっぱり、それらを選んで正解だったようだ。 二人の様子を見て、自分のことのように嬉しくなっていた。 「ありがとうな、葵人ちゃん!」 「どういたしまして」 「また手紙にでも感想を言い合おうな」 「うん、もちろんっ!」 兄に何も分からぬまま監禁された際に、携帯端末も取られたままで、その後、碧衣から「何かあったら連絡してくれ」と持たせてくれようとしたが、いつか分からない外に出ることがないからと、受け取らなかったために石谷とのやり取りは手紙になった。 けど、字を書くのが億劫でもなく、一日中兄の言いなりになっていたことで、自分のしたいことが分からなくなっていた葵人にとっては、したいと思えるきっかけが出来たので、一日の楽しみになっていた。 石谷に笑いかけた後、「碧衣君も開けてみて」と促した。 「いや、俺は後で」 「? そうなの?」 「そういうことなら、俺らは今度こそおさらばするわ」 「あ、それなら玄関まで送るよ!」 「あんなやつらいいだろ」 碧衣がそう言って、さらにきつく抱きしめられた後に、「そうだ、葵人」と石谷にも言われた。 「俺らは勝手に来たわけだから、帰りも勝手に帰らせてもらうから」 「でも……」 「じゃあな、葵人。また会えるのを楽しみにしてるわ」 「あ……」 唯一の自由であった手を上げたまま、そそくさと去っていく二人の姿を名残惜しそうに見送っていた。

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