17 / 25
17
と、そこで山中が「ん?」と声を上げた。
「この青いやつは……碧衣ちゃんの分だな!」
「そうだよ。申し訳ないけど、こっちに持ってきてくれる?」
「お安い御用だ」
嬉々として山中が持ってきてくれた、石谷からもらった箱よりも小さいプレゼントを、「ありがとう」と言って受け取ったのを、「はい、碧衣君の」と言って渡した。
「何日か前から、妙にソワソワしていたのは、これだったのか」
「気づかれちゃってた?」
「まあな。葵人はすぐ顔が出るからな」
受け取ったプレゼントを顎に当てて、悪戯な笑みを見せる碧衣に、「……恥ずかしい」と言ってぬいぐるみに顔を埋めた。
化粧が付いてしまうと思ったが、この際気にしていられない。
「わー! 何これウケるー!!」
「お、これは。さすが、葵人だ。これは楽しみだ」
二人が嬉しそうな声を上げているのを聞き、そちらに振り返った。
山中には笑い袋を、石谷には共通趣味であるドラマ鑑賞で、誕生日にもらったお礼として、オススメのDVDをあげたのだ。
やっぱり、それらを選んで正解だったようだ。
二人の様子を見て、自分のことのように嬉しくなっていた。
「ありがとうな、葵人ちゃん!」
「どういたしまして」
「また手紙にでも感想を言い合おうな」
「うん、もちろんっ!」
兄に何も分からぬまま監禁された際に、携帯端末も取られたままで、その後、碧衣から「何かあったら連絡してくれ」と持たせてくれようとしたが、いつか分からない外に出ることがないからと、受け取らなかったために石谷とのやり取りは手紙になった。
けど、字を書くのが億劫でもなく、一日中兄の言いなりになっていたことで、自分のしたいことが分からなくなっていた葵人にとっては、したいと思えるきっかけが出来たので、一日の楽しみになっていた。
石谷に笑いかけた後、「碧衣君も開けてみて」と促した。
「いや、俺は後で」
「? そうなの?」
「そういうことなら、俺らは今度こそおさらばするわ」
「あ、それなら玄関まで送るよ!」
「あんなやつらいいだろ」
碧衣がそう言って、さらにきつく抱きしめられた後に、「そうだ、葵人」と石谷にも言われた。
「俺らは勝手に来たわけだから、帰りも勝手に帰らせてもらうから」
「でも……」
「じゃあな、葵人。また会えるのを楽しみにしてるわ」
「あ……」
唯一の自由であった手を上げたまま、そそくさと去っていく二人の姿を名残惜しそうに見送っていた。
ともだちにシェアしよう!