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第4話
雅美の妊娠は御両親だけでなく松若家も喜んでくれてお祝いの品まで送られてきた。
週末には一族と妖怪、そしてカムイたちも集まって祝福してくれたんだけど、俺は雅美がその事で負担を感じていないか心配になった。
「負担?全然ですけど。むしろこうなるまで子供の事でしつこく騒いでいた松若の家が手のひら返して喜んでいるのがバカみたいだなって思ったんで」
「そ、そうなんだ……」
たまに昔の冷たい顔をされると、それもまた綺麗だなって見蕩れてしまう。
「繋さん」
「ん?」
「これからの事…チロ先輩に教えてもらった事とか色々話したいんすけどいいすか?」
「もちろん」
雅美に無理はさせられない。
俺はソファに雅美を座らせておいて冷蔵庫に入っていた麦茶をコップに入れて運んだ。
「妊娠期間は普通の人と一緒みたいです。病院の代わりにアッカムイという神様のところに毎月1回は行くように言われました。場所はチロ先輩に聞けば分かると思います。あと、お産もそこでオレひとりでする事になるそうです」
「えっ、そうなんだ……」
立ち会い出産するつもりでいたのに。
俺、ちょっとショックだった。
「ふふっ、繋さんの事だからオレの傍にいたいって思ったんすね。嬉しいっす」
そんな俺に、雅美は俺だけに見せてくれる可愛い笑顔で応えてくれた。
「オレも繋さんが隣にいてくれたら……って思いましたけど、アッカムイ以外はダメだってチロ先輩が言ってました」
「そうなんだ……」
それがしきたりなんだと俺は察知した。
あんまり好きじゃないけど、ここで生きていく上でしきたりは守らなきゃいけない。
だから俺はそれ以上は何も言わなかったけど、俺も何か出来る事があるはずだと思ってしきたりを破らずに雅美と子供の為に行動していこうって心に誓った。
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