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第5話
「ただいま」
翌日。
俺は仕事の後で本屋に行って育児雑誌や赤ちゃんの名前の辞典、初めてお産をする人の為の本を買って帰宅した。
「おかえり……なさい……」
沢山買うつもりはなくて厳選したつもりだったけど、名前の辞典とお産の本は結構分厚くて、それを見た雅美は驚いた顔をする。
「名前、『魁』って入れなきゃいけないってチロ先輩言ってましたけど……」
「あ、そっか……」
リビングでチロの子供たちと積み木で遊んでいた雅美だったけど、俺が本を見せるとその手を止めて傍に来てくれた。
「こういうの、よく買えましたね」
「えっ?どうして?必要かなって思ったから……」
育児雑誌をぱらぱらとめくりながら話す雅美。
そう突っ込まれて、そういえば本屋の女性の店員さんが驚いた顔をして俺を見ていたかもしれないと思ったりして。
けど、俺は周りの事よりも今は雅美と子供の事で頭がいっぱいだった。
「……ありがとうございます。色々考えてくれて」
「俺たちの子供なんだから当然の事だよ」
「繋さん……」
俺が笑顔を返すと、雅美はその頬を赤らめる。
「けーいー!!けいもあそぼー!!」
「はやくー!!!」
そこに、チロの子供たちがやって来て俺の腕を引っ張る。
「ははは、分かったよ、着替えてくるからちょっとだけ待ってろ」
「もーはやくしてね!」
「まさみ、けいがくるまでつづきやろ!!」
「あ、あぁ……」
チロとルシフェルさんのふたりの子供たち。
妖怪だけど成長が遅めらしく、もう俺たちくらいになっててもいいはずなのに幼稚園くらいの可愛い女の子たちだ。
一緒に暮らしているからか俺たちにすごく懐いていて、最近は雅美にバスケを教えてもらいはじめていた。
部屋で着替えを済ませると、俺は3人が待つリビングに戻っていた。
子供たちと遊び、食事を済ませると俺たちは食器を片付けて部屋に戻った。
雅美の妊娠が分かってから、チロやルシフェルさんが気にかけてくれて家事を手伝ってくれて、その代わり雅美がチロの子供たちの相手をする機会が増えた。
けれど雅美的には家事よりもそちらの方が難しいと俺に話していたりする。
「……けど、これから子育てするんだから難しいなんて思ったらダメっすよね……」
「ダメって事はないんじゃないかな。俺もいるし」
「繋さんは仕事でいない時があるじゃないっすか。そういう時にオレ、ちゃんと相手できるのかなって思って……」
「…………」
ナーバスになっているのは、妊娠しているからなんだろうか。
不安そうにしている雅美を、俺は抱き締めていた。
「そういう時が来たら、いつでも電話して。俺、必ず帰ってくるから。君ひとりに負担をかけるような事は絶対したくない」
「繋さん……」
俺の背中に伸ばしてくれる腕。
「弱音吐いてすんません。自分でもよく分からないくらい不安になって……」
「大丈夫だよ、雅美。俺たちふたりの子供なんだ、一緒に頑張っていこう」
その髪を撫でて言うと、雅美は笑顔を見せてくれた。
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