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第6話

それからしばらくして、雅美がアッカムイのところに行く日がやってきた。 午前中に行くというので俺もその日は夜勤にしてもらい、一緒に付き添う事にしていた。 「繋、会えるのは最初だけだからね。次期頭領としてちゃんと挨拶してくるんだよ」 「あぁ、分かったよ」 家とは反対方向の少し離れた山の中。 そこまで車で行けるところまで行ってからチロに道案内をしてもらうと、別れ際にそう言われてしまう。 ずっと付き添える訳じゃないのか。 しきたりなんだろうけど、ものすごく寂しい気持ちになる。 ふたりの子供なのに。 「繋さん、そんな顔しないで下さい」 「あ、ごめん……」 「……オレも、繋さんが一緒にいてくれたらいいのにって思ってます……」 俺の気持ちを察してくれたのか、雅美がそう言って手を握ってくれる。 休みの時だけしてくれる結婚指輪。 少しだけ頬を赤らめているその手のあたたかさに、愛おしさが募った。 「やだ〜、すっごくラブラブなところ見せつけられちゃったぁ〜」 その時、木の上から声が聞こえた。 チロみたいな、男なのか女なのか判別しにくい声。 「しかもぼくの好みのタイプ〜!!キレイな顔してこのカラダ、たまんなぁ〜い!!」 「わぁっ!?」 俺にめがけて飛び込んできた灰色の髪をした雅美より小柄な人(多分)は、その華奢な腕で俺をギュッと抱き締め胸にすがりつく。 「うんうん、胸板厚くていいわぁ♡ホント好み過ぎる〜!!」 「あ、あの、あなたは……」 鼻に抜ける香りは、妖怪のそれに近い。 人のカタチはしてるけど、短い髪の間から丸いカタチの耳があって、人ではなさそうだった。 「あぁ、初めまして!!ぼく、アッカムイだよ!!きみが次期頭領の道籠繋くんだよね?しばらく見ないうちにこんなに立派に育っちゃってすっごく嬉しい!!ぼくね、きみたち三兄弟の中できみがダントツでタイプだったんだよね〜♡♡♡」 「は、はぁ……」 胸に顔をすりすりしながら話すアッカムイ。 雅美がすごく険しい顔で俺を見ていて、俺はどうしていいか分からなくなっていた。 「後継者のお嫁さんがオトコなんて何百年ぶりかなぁ。でも良かった、オンナだったら殺してたかも」 と、笑顔でとんでもない事を言い出した後、アッカムイは俺から離れて雅美の方に向かって歩いていく。 「そんな怖い顔しないでよ。奥さんはきみなんだからさぁ」 「すんません、こんな顔なんで」 「またまたぁ、繋くんの前でめちゃくちゃえっちな顔して誘ってるんでしょ?じゃなかったらココに赤ちゃんいるワケないじゃん」 「ちょっ……いきなり何するんすか!!」 不機嫌そうな雅美に対して、アッカムイは笑顔のまま着ていたコートを脱がせて白いロングスリーブのシャツを捲る。 日に日に濃くなり広がっていっているお腹に描かれた模様。 それを舐める姿はどこか不思議な色気があった。

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