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数日後、わたしに初めて王太子妃としての役目を果たす機会が与えられることになった。そのことにわたしは大いに喜んだものの、なぜかウィラクリフ殿下は少しだけ悲しそうな顔をされる。
「殿下?」
声をかけると珍しく困ったような顔をされた。
(もしかして、わたしが表に出ることを心配されているのだろうか)
そのことを申し訳なく思うと同時に、ようやく務めを果たせると思ったのにという不満のような気持ちがわいてくる。
「もしかしてダンスのことを心配されているのでしょうか?」
わたしが務めを果たすのは隣国の王太子を歓迎するパーティだ。そこでは当然ダンスを踊ることになる。それを心配しているのだと考えた。
「殿下の心配はごもっともだと思います。ですが、リードベル教授にも問題ないとおっしゃっていただきました。直接王太子殿下とお話しすることはないと思いますが、両国の歴史も先方の文化も一通り頭に入っています。あの、失敗はしないと思うんです」
「ルナの努力と勤勉さを疑ったことはないよ。きみはどの国の王侯貴族の前に出ても、文句のつけようがない立派なわたしの伴侶だ」
殿下に褒めていただくだけで頬がカッと熱くなる。わたしはほかの誰でもなくウィラクリフ殿下に認めていただくことがなにより嬉しかった。
「頑張ります……!」
「そうではなくてね。あぁ、なんと言ったものかな」
「殿下……?」
困り果てたような顔に、わたしまで困ってしまった。そんな顔をさせてしまうほど、わたしが人前に出るのはよくないことなのだろうか。
たしかに男の伴侶というのはいろいろあるだろうけれど、隣国では貴族や王族が男性同士で婚姻を結ぶことは一般的だと聞いている。それなら奇異な目で見られることはないだろう。それでも駄目だとおっしゃるのなら従うしかない。
「あぁ、そんな悲しそうな顔をしないで。ルナは決して悪くない。必要以上に心配してしまうのは、わたしの悪い癖なんだ」
「殿下……?」
「いや、いつまでもこういうことではいけないな」
ベッドの上で向かい合っていた殿下が苦笑のような笑みを浮かべた。
「せっかくルナがやる気になっているのだから、一緒に参加することにしよう。となれば、とびっきりの衣装を選ばなくてはね」
殿下の顔が晴れやかなものに変わった。それにホッとしつつ、初めての王太子妃としての役目だと考えるといまから緊張してしまう。
「まだ緊張するには早いよ? そうだね、衣装は少し色味の明るいものにしようか。そう、ここのように赤い色がいいかもしれない」
「……っ、殿下、」
夜着のボタンを外され、胸をスルリと撫でられておかしな声が出そうになった。本当は手で隠したいけれど、膝の上で両手をグッと握りしめて我慢する。
(これだけで胸が尖ってしまうなんて)
そうじゃない。触れられる前から胸は尖っていた。それが恥ずかしくて目を閉じながら下を向く。
いつの間にかわたしの胸は殿下に触れられる前からツンと尖るようになってしまった。あまりに恥ずかしくて最初は両手で隠していたけれど、殿下が「わたしを待ってくれているようで嬉しいよ」とおっしゃってからは隠すのを我慢している。
「横髪も随分と長くなった。そうだね、片方だけ編むのも似合いそうだ」
下を向いたことで頬を覆っていた髪の毛を、右側だけ耳に優しくかけられた。そうして露わになった耳たぶを殿下の口にパクリと食べられる。チュッと吸われ、カリッと優しく噛まれるだけで……恥ずかしいほど不浄の場所が大きくなってしまった。
「ルナ、わたしの愛しいルナ……」
気がつけば夜着を脱がされていた。うつ伏せになるよう促されたかと思えば、殿下の手と唇が素肌を優しく撫でる。
「わたしのルナ」
吐息のような声で名前を呼ばれ声が漏れた。熱い舌でうなじを舐められるたびに全身がビクビクと震える。うなじから背骨、腰へと口づけられるだけで力が抜けそうになった。
上半身を支える腕は震えっぱなしで腰もわずかに揺れ動いていた。まだ口づけられただけだというのに歓喜の震えが止まらない。そうして殿下のものを受け入れるときには、はしたない声を我慢することさえできなくなっていた。
「はぅっ! んく、ぅっ! んんっ、ん、ぁ、ぁあ……っ」
「随分と奥まで入るようになったね。あぁ、先が吸いついてきて、これでは長くはもたないな」
「あぁっ。そこは、だめ……! でん、か……っ」
「ルナ、殿下じゃないだろう?」
背中に殿下が覆い被さるのがわかった。「ほら」という声と一緒に殿下の熱くて硬いものがググッと内臓を押し上げる。
それはとても苦しいはずなのに、いつの間にかお腹の内側が震えるほど感じるようになっていた。腰がガクガクと震え、太もももブルブル震えて崩れ落ちそうになる。
「あ、あ――――! あぁっ、そこは、ぃや……っ。んぅ、ぁ、ぁ、あ、あ……!」
「ほら、ルナ、呼んで?」
「ぅ、ふぁ……っ。殿下、ぅ、ウィル、さまぁ……!」
「……っ、あぁ、蜜のような声で呼ばれると、どうにも堪えきれなくなる」
ズゥンと奥深くを開かれ、頭の奥がチカチカとし始める。腰を押しつけられ、たまらず上半身がカクンと崩れ落ちてしまった。
「きみとハルトが婚約すると聞いたとき、すべてを失ったような気持ちになった。さすがのわたしも国外にいては、うまく事を進められないからね。あのときはただの愚かな弟に育ったのかと嘆きもしたが、いまはハルトが思うとおりの弟のままでよかったと思っている」
「ふぁ、ぁ、あ――――!」
「我が妃候補たちも思ったとおりに動いてくれた。中でもベアータ殿は一番の功績者だから、そのままハルトの隣をあげることにしたんだ」
「ひぁ、ぁ、ふぁ、ぁ、ん――――っ! ぁ、やだ、いっしょに、さわった、ら、ぁ……っ」
「大急ぎできみを囲う仕上げを進めたけれど、すべて間に合って本当によかった。あぁ、中もトロトロに蕩けて、こちらもぐっしょり濡れて……さぁ、どちらで先にいきたい?」
「やぁ! 一緒は、いや、ひっ、ひぅ、ふぁ、ぁ、あ!」
「じゃあ、両方いこうか。ほら、奥でわたしのをしっかり飲み込んで」
「や、あ……! ウィルさ、いく、いって、しま、から、ぁ、ああ――――!」
「ん……っ、ふ、」
殿下の言葉はうまく聞き取ることができないのに、体の奥のドクンという鼓動ははっきりと聞こえた。
(あぁ、殿下が……、ウィル様がわたしの中に……)
それだけで下腹部にぎゅううっと力が入り、もっとと強請るようにウィル様の腰に尻を押しつけてしまう。
ウィル様のまだ硬いものが中を満遍なく擦るように動きながら、手はわたしの不浄のものを擦り続けていた。クチュクチュと音がするから、きっと今夜もウィル様の手をぐっしょりと濡らすほど出してしまったに違いない。
(早く、拭き取らなくては)
そう思うのは、このままではウィル様がわたしの出したそれを口にしてしまわれるからだ。そんなものをと毎回思うのだけれど、いつも直後は脱力しているせいか止めることができないでいた。
「今夜のルナも甘いね」
あぁ、今夜もやはり口にされたのだ。あまりのことに恥ずかしく思いながら、なんとか口を開く。
「そのような、ものを、口にしては、」
「ルナの全部はわたしのものだからね。体が慣れてきたようだし、あと一回できるかな」
「殿下、」
「ルナ、違うだろう?」
「……ウィルさま、」
「そう、殿下なんてよそよそしい呼び方はやめよう。あぁほら、そんなに怯えないで、無茶なことはしないから。ただもう一度、ルナの中を味わいたいだけなんだ」
とろりと蕩けるような緑眼でそんなことを言われては、わたしに否とは言えない。
(それに、本当はわたしだって……)
浅ましく恥ずかしい思いに全身が熱くなる。
それから二度、殿下を体内に迎え入れた。最後はほとんど記憶がなかったけれど、翌日の昼前にはベッドから出ることができた。殿下がおっしゃったとおり無茶なことをされなかったから……かもしれない。
王太子宮の中でしか踊る機会のなかったダンスを、ついに大勢の前で披露するときがきた。これまで王城で開かれるパーティにも顔見せ程度しか参加してこなかったわたしにとって、王太子妃として初の大きな務めになる。
今回のパーティはエルラーン王太子殿下の来訪を祝うものだ。エルラーン王太子殿下は隣接する国の中でもっとも大きな国土を持つ国の王太子殿下で、ウィラクリフ殿下との親交も長いと聞いている。
そのエルラーン殿下が十年振りに国賓としていらっしゃることになり、三日三晩に渡って盛大なパーティが開かれることになった。そこに主要な王族が出席するのは当然だというのに、ウィラクリフ殿下はわたしを参加させるのを渋っていらっしゃった。
それでも最終的には「一緒に参加しよう」と言ってくださった。この日のためにとダンスだけでなく両国の歴史について再度学び直し、準備万端整えた。
(大丈夫。殿下に恥をかかせてしまうようなことにはならない)
何度もそう思い、自分に言い聞かせる。
やや緊張しながら立っていると会場がザワッとするのがわかった。あちこちから「王太子殿下だ」という囁き声がする。
(いらっしゃった)
エルラーン王太子殿下は、やや濃い肌色に黒髪をした精悍な顔立ちの方だった。はじめは緊張していたものの、話しているうちに少しだけ緊張が解れる。というのも気さくな性格の方で、どことなくウィラクリフ殿下に似ていらっしゃるような気がしたからだ。
「たしかにこれだけの美女ならば、あのときウィル殿が慌てふためいていたのもわかるな」
エルラーン殿下なりに褒めてくださったのだろうか。それでも訂正したほうがよいだろうと思い「美女ではございませんが」と口にする。
「あぁ、これは失礼した。あまりに美しいゆえの言葉のあやだ。許してほしい」
「いえ、あの……」
手を取られ、手袋の上から甲に口づけられる。咄嗟にどう反応してよいのかわからず戸惑った。
こういう行為はご令嬢方がされることであって、いくらウィラクリフ殿下の伴侶になったとはいえ男のわたしが受けるものではないような気がする。どう返事をしたものか困っていると、口づけられた手をウィラクリフ殿下が優しく引き寄せてくださった。
「これだからエルラーン殿には会わせたくなかったんだ。そうやってすぐに色目を使う」
「おっと、それは随分な言いぐさだな。そんなことを言われるような振る舞いをした覚えはないぞ?」
「嘘はいけない。あちこちの国に恋人がいるだろう? それも男女問わず」
「それは事実だが不誠実なことはしていないぞ? 皆平等に愛しているだけだ」
「愛している」という言葉にドキッとした。エルラーン殿下の国では男女問わず愛を口にするのが日常なのだと学んだけれど、どうやら本当だったらしい。
「しかし、想像していたよりもずっと美しくていらっしゃるな。このような佳人には、いままでお目にかかったことがない。幼い頃に一目惚れしたというウィル殿のお気持ち、十分に理解できる」
「ルナの美しさは容姿だけではない。勤勉で努力家で、なにより慎み深い」
「なるほど、昼は淑女で夜は娼婦というやつか。世の男たちの理想だな」
「夜の話はしていないだろう。まったくおまえという男は……」
いままで聞いたことがなかったくだけた口調に、隣に立つ殿下を見上げた。苦笑にも見える表情は楽しげで、それだけエルラーン殿下と仲が良いことが窺い知れる。
「何にせよ、貴殿が無事に王太子妃となられて安堵していたのだ。これで弟などに持っていかれでもしていたら、それこそこの国は大変なことになっていただろうからな。あのときのウィル殿ときたら、眠れる獅子が目覚めたのかとわたしでさえ肝を冷やした。いやはや本当によかった」
眠れる獅子とは、ウィラクリフ殿下のことだろうか。そのような例えられ方を聞いたのは初めてだった。こんなに穏やかで優しく民からも愛されている殿下が、獰猛だと言われる獅子のようだったとはどういうことだろう。
「エルラーン殿、余計なことを口にしては身を滅ぼしかねないよ?」
「おっと、これは失言だったな、ウィラクリフ殿下」
両手を上げながらエルラーン殿下が笑っていらっしゃる。お二人の様子から気心が知れた仲だとはわかったけれど、いまは少し違う雰囲気がする。どちらの目も笑っていらっしゃらないように見えるのは気のせいだろうか。
「さて、せっかくウィル殿の掌中の珠を前にしているのだから、一曲お相手願えると嬉しいのだが」
これはダンスのお誘いに違いない。受けてもよいのかわからず「殿下」と隣を見上げる。
「うん、行っておいで。あぁでも、もし不埒なことをされそうになったら思い切り足を踏んでやるんだよ?」
「それは怖いな。ははは、そう睨むな。さすがに友の伴侶に手を出したりはしない。さぁ、こちらへ」
「はい。あの、よろしくお願いします」
ウィラクリフ殿下とは踊ったことがあるけれど、ほかの方とは初めてで緊張してしまう。しかもお相手は隣国の王太子殿下だ。それに大勢の目もある。
覚悟を決めていたのに、わたしはみっともないほどガチガチに緊張してしまっていた。頬を引きつらせるわたしにエルラーン殿下はにこりと微笑み、「大丈夫、ただわたしについてくればいい」とおっしゃってくださる。
(大丈夫、このために練習してきたんじゃないか)
覚悟を決めエルラーン殿下の手を取った。そうして小さく呼吸を整える。
はじめは緊張していたせいか足がもつれそうになった。そのたびにエルラーン殿下がさり気なく動いてくださり何とか持ちこたえる。そうしてすぐに練習どおりに動けるようになった。
言葉どおりエルラーン殿下は終始リードしてくださった。その動きは優美で、促されるまま動くだけでわたしまでダンスが上手になった気がする。無事に一曲が終わり、ホッと胸を撫で下ろした。足を踏むことはなく、躓 くようなこともなかった。これならウィラクリフ殿下の伴侶として恥ずかしくない姿だったに違いない。
少しの達成感を味わいながらエルラーン殿下を見上げお礼を告げようとしたとき、スパイスのような香りが急に強くなったような気がした。ハッとしたときにはエルラーン殿下の顔がすぐ近くにあり、驚きのあまり体をすくませてしまう。そんなわたしを「フッ」とお笑いになったエルラーン殿下の口が、わたしの耳元に近づいた。
「貴殿はまさにウィル殿の掌中の珠、我が国で言えばドラゴンの宝珠そのものだ。くれぐれも御身、ご自愛なされよ。それがこの国の、ひいては我が国を含めた近隣諸国の平和と安寧に繋がる」
「え……?」
「エルニース殿のダンスの腕前、なかなかのものだ。さすがウィル殿の伴侶でいらっしゃる」
「あの、」
エルラーン殿下の顔が遠のくのと同時にスパイスのような香りも薄れた。言葉の意味を確かめようとエルラーン殿下を見上げたけれど、大きな声でダンスを褒められ慌ててお辞儀をする。そんなわたしの背中に温かな手が触れた。
「我が伴侶とのダンスは天にも昇る心地だろう?」
「たしかにウィル殿が自慢するだけのことはあった。さすが大国の王太子妃だ」
エルラーン殿下の声に、周囲の貴族たちがざわついた。
(そのような大きな声で……)
隣国の王太子殿下に褒めていただけるほどの実力でないことは自分が一番よくわかっている。そもそも女性側の動きを男の自分がしているのだから、端から見れば滑稽にしか見えないだろう。大勢の貴族がそう思っているだろうこともわかっていた。
それを大袈裟に褒めていただいては、あまりにも恐れ多い。
「これでエルニース殿の株も上がったな」
「エルラーン殿下が機嫌よく褒めたのだから、貴族たちはますます目の色を変えるだろうね」
「ふむ、そもそも最初から目の色を変えていたように見えたが? それならわたしが口を出す必要はなかっただろうに」
「足元を固めておきたかったんだよ。それに愚かな妄想を抱く輩は早々に潰しておきたいからね」
「なるほど、あぶり出しに使われたということか」
「王太子妃としての箔を付けてもらっただけだ」
「ははは、ウィル殿は変わらんな。まぁ、多少なりと役に立ったのならいい。これで貸し借りはなしだ」
「おや、この程度のこと借りだとは思っていないよ? もちろん貴国にもっとも長く滞在したことも、我が親友殿と呼ぶことも貸しだとは考えていない」
「これだからウィル殿は油断ならないというのだ。エルニース殿、ウィル殿に抱き潰されぬよう気をつけられよ。うなじにそのような色気をつけたままでは、野獣どもの妄想の餌食にされてしまうぞ?」
(うなじ……?)
そっとうなじを指で触り、何のことだろうと考えハッとした。
(もしかして、昨夜の)
昨夜、いつもより念入りに何度も首のあたりに口づけられた記憶がある。そのときチクッとした痛みを感じたけれど、あのときに印を付けられたに違いない。口づけで印が付くというのは入浴のときキルトに指摘されて知ったことで、「それだけ愛されているってことですよー」というキルトの声を思い出し全身がカッと熱くなった。
(印というのは、そういう行為をした証じゃないか……!)
それを他人に知られるのはあまりに恥ずかしいことだ。伴侶だから行為に至るのは普通だとしても、わざわざ他人に知られたいとは思わない。しかも隣国の王太子殿下に知られてしまった。羞恥のあまり顔から火が出そうになり、慌てて顔を伏せる。
「我が伴侶をからかうのはやめてくれないかな」
「なんだ、やっぱり自慢したかったんじゃないか」
わたしはこんなにも恥ずかしく思っているのに、お二人はなぜか楽しそうに笑っていらっしゃる。その様子に、こういう話題はもしや普通のことなのだろうかと思った。社交界では言外に下世話なことを口にすることがあると聞いていたけれど、これもそういう言葉遊びの一種なのか……わたしには、さっぱりわからない。
「さて、わたしは美しい姫君たちともう少し踊ることにしようか」
「ほどほどに頼むよ」
「ウィル殿に迷惑はかけないさ。そうだ。エルニース殿、残り二日間のパーティでもお相手していただけるだろうか」
「あの、」
「ルナが嫌でなければ、お相手して差し上げるといい」
「そんな、嫌などと恐れ多いことです。あの、わたしでよければ謹んでお受けいたします」
「よかった。これで二日間の楽しみが増えるというものだ」
満面の笑みを浮かべたエルラーン殿下は、その後も主要な貴族のご令嬢方と存分にダンスを楽しまれたそうだ。わたしはというと慣れない緊張もあり、ウィラクリフ殿下に促されて早めに退席させてもらった。
緊張と羞恥とでぐったりしていたわたしだけれど、結局この日の夜も殿下を受け入れ、うなじに新しい印を付けられることになった。翌日の夜も同じような状態で、二日間ともエルラーン殿下にうなじの痕を指摘されてしまった。
(なんて恥ずかしいことを……)
全身がカッと熱くなるくらい恥ずかしい。それなのに、なぜかうれしいと感じている自分がいた。
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