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 きょときょととした表情をして自分を撫でてくるラムスを見詰めた後、ヒロは「きゃあきゃあ」と可愛らしい声を上げ、嬉しそうに小さな手でラムスの指を握った。 「ちいさーい」 「ラムス!馴れ馴れしいぞ!」  そう言うとディアは少し垂れ気味の黒い瞳をきりっと吊り上げる。 「見てごらんよディア!お人形みたいだよ?うわぁ!こんな産まれたての赤ちゃん見るのは初めてかも」  ふふふ と満面の笑みを零すラムスのくるりと丸まった尻尾は、今にもパタパタと振りたそうに小刻みに動いているのが見える。  もう三か月になるから、産まれたて と言うのはちょっと当てはまらないのだけれど、嬉しそうにヒロを撫でてくれる姿が嬉しくて、思わずこちらも笑顔になった。 「かわいーい」 「今は職務中だぞ」  ディアにきつい口調で言われてさすがにまずいと思ったのか、ラムスは肩を落として向かいに座り直す。  狭い馬車内で何時間も無言と言うのも気詰まりだったから、さっきのように話しかけてくれる方がオレとしては楽なのだけれど、この二人にとってはオレは警護対象で監視対象なのだから、必要以上に馴れ合うのは良いことじゃないんだろう。  ちらり と外に視線を遣ると、まっすぐに前を向いたままのクラドの横顔が見える。  結局、あれからクラドが休んでいるところを見かけない。 「……皆さんは、休まれているんでしょうか?」 「ご心配なく、この調子で進むことができれば三日ほどで王都に着きますから、それくらいなら休まなくとも十分警護はできます」 「体 を  壊しませんか?」  無茶だ とオレでも思う。  けれど、この行動を取らせてしまったのはオレで……クラドは少しでもオレが逃げ出す機会を減らそうとして、こんな無茶なことを…… 「まぁこれくらいじゃなんともです!ゴトゥスはもっと過酷でしたし、そこでは  」 「ラムス!つまらない話をお聞かせするな」 「もーう!」  ちょっと唇を尖らせ、ラムスはまた優しい顔に戻ってオレの腕の中のヒロを見詰める。 「小さくて可愛い。閣下が私達を振り切って探しに行くわけですね。あ!でも、閣下一人は格好がつかないので、私達も連れ歩くようにはるひ様からも言ってくださいね!」 「気安いぞ!」 「だって!一人でどんどん行っちゃうから大変だったもの!はるひ様から言って貰えたら閣下もわかってくれそう」 「ラムス!そう言う所だろ!」  そう怒鳴られてもラムスはどこ吹く風と言ったように肩を竦めて見せるだけで、ディアの言葉を重く受け止めるような態度はとらない。

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