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 国を挙げての戦力投入によって辛うじて魔人を倒しはしたが、巫女と大勢の人々が亡くなった。  特に王都を奇襲された際に王族に連なる者は特に執拗に襲われ、留守を守っていた女子供が尽く虐殺される事態となったと聞く。  その事件の後に神が遣わしたのが男巫女だったために王家が娶ることができず、王の嘆願を聞き入れて神が男巫女の腹に自ら宿ることで以後、男でも孕めるようにした と言うのはさすがに眉唾かとも思うが、このシルル王国の頭に聖を付けるに至った出来事でもあると言われると、そう言うものかと思ってしまう。  つまりこの国の王族は受肉した神の血を引いている と言うわけだ。  そして、代々の王はその血が濃く現れた白い獣人が担うことになっている。 「森で遭遇した魔人ですが、火薬により焼き払い削れる部分は削りましたが……回収した遺体が消えました。他に仲間が とも考えましたが、袋が内側から破れておりましたので、その状態で息があり、かつ騎士の目を盗んで逃げるほどの力が残っていたと思われます」 「対処が不十分だったと言うことは?」  エルの言葉に思わずキッときつい視線を投げてしまった。 「アレの処分の仕方は十分過ぎるほど理解している」  魔人を刺した際の、粘度の高い水分の入った砂袋を思わせるような、ざりざりと脳の裏を引っ掻くような感触は幾ら振り払っても振り払っても、ふとした拍子に掌に蘇ってくる。 「確認の取れないことに裂く時間はない。ただしミロクと先代巫女に警備を増やせ」 「はい」 「それから各地の警備に連絡を。そこまでして弱っていないと言うことはないだろう、力を取り戻す前に見つけ出して討て。ただし箝口令を、飽く迄もゴトゥス山脈の残党及び各地に未だ残る瘴気の討伐と言う名目でだ」 「承知いたしました」  それから と兄が眉間の皺を指で押さえたタイミングで小さなノック音が響く。  一瞬三人で目を見合わせたが、すぐにエルが「どうぞ」と声をかけた。  静々と礼儀に則って扉を開けて入って来たのはディアだ、と言うことは赤ん坊がこちらに着いたのだろう。 「失礼いたします。太陽のごとき王にごあいさ  」 「口上はいりません、要件を言いなさい」  エルにそう言われてしまうと、慣れない人間は悪気はなくとも委縮してしまうのは目に見えている。  それも可哀想だ と、助け船を出すと言うわけではないが間に入って続きを促す。 「ディア、赤ん坊が着いたんだろう?」 「はい、先程到着いたしました」 「それで赤ん坊は?」 「ラムスがただいまスティオン医師に診ていただくために医局へと連れて  」 「怪我でもしたのかっ⁉」  王宮医の名を聞いて飛び上がると、俺よりもディアの方が驚いたようで垂れた耳を更に垂らして肩を竦めてしまった。 「いえっヒロ様はお元気です!ただ、まだ産まれたばかりですし、健康状態のチェックと世話の仕方を指導していただこうと思いまして」 「そ、そうか  」

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