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「無事に目が覚めて安心した、まだ本調子ではないだろうし、もうしばらくは休むことに専念するといい」  こちらに来たクラドの胸元を凝視しているのに気付いたのか、クラドは軽く腰を落としてその中身が見えるように布地を引いてくれる。  結わえられた髪が動いてクラドらしい匂いがさっと鼻先をくすぐるから、オレの胸はどきりと一つ大きく脈打ってしまって、慌てて身を引いて俯く。 「抱かせてやりたいが先程やっと寝付いてな」 「…………」  微かに聞こえる寝息は健やかそのもので、たった四日だけだと言うのにその寝顔はずいぶんと成長して見える。  ふっくらとした頬と、それから変わることのない三角耳は…… 「  きれいな 赤    」  ほ と胸を撫で下ろして、眩暈がするほどの脱力感に襲われて枕に沈み込む。 「きちんと沐浴もさせていたからな、汚れていると言うことはないだろう」 「え……?」 「お前がしていたように黄色い入浴液を入れて、あの石鹸で洗った。それでよかっただろうか?」  すやすやと規則正しかった寝息が乱れそうになって、クラドが慌ててその背を叩くのが見える。  その様があまりにも手慣れて見えて…… 「もしかして、クラド様がずっと?」  トントン と叩くリズムに合わせて、温かくなった胸の奥で心音が跳ねる。  祈るように見つめた視線の先で、クラドが少し照れ臭そうに頷いたことに鼻の奥がつん と痛んだ。 「ああ、ヒロはずっと俺が預かっていた」  頑なに呼んでいた赤ん坊ではなく、きちんと名を呼んでいるのを聞いて泣きそうになるくらい嬉しくて、涙を零さないように小さな声で「ありがとうございます」とお礼を言った。 「医者の指導を受けたが気に入らないことがあれば遠慮なく言ってくれていい、改善しよう」 「いえ……とても健康そうで……でも、黄色い汁も石鹸ももうなかったはずなのに」  赤い石鹸は王都で一部富裕層に人気だと聞いてはいたので手に入らないことはないけれど、黄色い液体の方は流通できるようなものではないのはよく知っている。だからこそ、クラドがそれらを使ってヒロを風呂に入れていたと言うのは考えても解けない謎だった。  クラドはオレの疑問に答える前に一瞬だけぎゅっと鼻に皺を寄せて、苦痛に近い不快感を示したが、すぐに表情を取り繕って厳めしい顔をオレに向ける。 「…………テリオドス領から入浴液と石鹸の献上品が届いた」  「え?」と間抜けな声が出たのは、一番低い可能性だからだ。 「!……じゃあ、それを使ってくださったんですね!」 「急に使うものを変えるのは良くないと医者が言っていたからな。ヒロのことがなかったら突き返していた」 「     っ」

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