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「でも、クラド様はかすが兄さんのことが……」 「義兄としては尊敬している、それ以外の恋慕はない」  はっきりと言葉にしてやると、はるひは安堵したかのようにもう一度俺の腕の中に体を預けてきた。 「可愛らしい色になったな」  赤い燃えるようなラフィオの花の色だった髪が、淡い春に咲く薄紅の花の色味に変わっている。 「ヒロの髪は、白なんです」  二度目に城を出ようとした理由を聞かれた際、はるひはそう言って兄を見た。  聡明そうな碧い双眸と、それからコリン=ボサから譲られた王の証である白銀の髪を持つ兄は、はるひの言葉に緩く頷く。  聖シルル王国での王位は、その髪色が現れた者が継ぐ。  この国の者ならば小さな子供だって知る話で、それは王の証でもあるが同時にコリン=ボサの血筋であるとも証明する。  狐の子ではなく俺の子だと一目でわかってしまうから…… 「……その節はご迷惑をおかけしました。あの人の野心さえなければ事態はこうも絡まりはしなかったでしょうに」  珍しく神妙な顔をすると、スティオンは綺麗な動きで謝罪を姿勢を取る。 「いえ……飛びついてしまったのはオレですし、スティオン様が間に入って下さったからクラド様達が駆けつけることができたので。……その、入浴液の話をされた時は怖かったですけれど」 「あははは、申し訳ない、クルオスからの密命だったんですよ?はるひ様がどうして子供の父親を偽っているのか、どうやってあの赤毛を手に入れたのか、そして手引きしたはずの人物が誰なのか、探れ ってね?」  雰囲気をがらりと変えて笑うスティオンに思わず詰め寄った。  胸倉を掴んでしまうと何かが転がり落ちそうだったのでぐっと堪えたが、気分的にはつるし上げたいほど腹立たしい。 「⁉どう言うことだ?兄上はいつから俺の子だって……」 「初見で気づかれたそうですよ?」  初見?では兄は俺の子と知っていてあの態度だったと言うことか?  視界の端にも入れたくないような、そんな態度を思い出すと心当たりもあると言うものだった。 「……やはり、弟に先に子ができたことを良くは思って  」 「単に拗ねていただけじゃないですか?かすが様ははるひ様とヒロ様にべったりでしたし」  国の頂点に立たれるお方がそんなはず…… と反論しようとしてやめた。  俺達のことは俺達自身よりもスティオンの方がよく見ているのは知っているからだ、代わりに「外で言うと不敬罪だからな?」と釘を刺すだけにする。 「忌憚ない言葉をかけてくれる貴重な友人にそんなことをするほど、うちの王様は狭量じゃないですよ?」  そう言う慢心が……と言い返そうとしたところで、ヒロの「あぁーっ」と言う泣き声に会話が中断された。服を着せられてあやされてはいたが、不機嫌そうに自らの指をこれでもかと吸っているのが見えた。

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